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「学び」という付加価値
では、改めて離島留学をすることのメリットってなんでしょうか。ただ遊んで「気分転換になった!」では旅行で十分です。最初にも述べたように、「学び」という付加価値があります。今回はこの「学び」についてフォーカスしたいと思います。
久高島(沖縄県・島尻郡知念村)「久高島留学」の場合
久高島は、沖縄本島・知念村の港から定期船で15分の距離にある、人口約200名の小さな島です。こちらは久高島留学センターが留学のサポート役となり、全国からの子供たちを受け入れています。
2001年に第1期生として中学生14名が訪れました。久高島留学センターのホームページによると、この2001年を皮切りに、毎年、小学校高学年~中学生まで15名程度が留学しています。島内にある留学センターに住み込み、久高小・中学校へ通いつつ、様々な活動に取り組むようです。活動内容も原則的に「留学生の話し合いで決める」とあり、海では漁、カヌー、釣り、陸では畑で野菜作り、その他沖縄の芸能を学ぶとありました。
* 応募に際しての留意点
・一年間継続することが第一条件です。
・学校の各行事(運動会、学習発表会、各部活動等)は都会の大きな学校とは全く取り組みが違います。全生徒が必死になって協力し合って行います。学校のそれらの行事や地域の活動に留学センターも協同で取り組んでいます。とても大変ですが、その分、何倍も充実した時間が過ごせると思います。ですから、のんびりゆっくり楽しく過ごしたい、という人には向いていないかも知れません。
(引用:久米島留学センターより)
以上を参照しても分かる通り、大人のサポートがあるものの、決して甘くない環境であると伺えるでしょう。自分たちで協力して考え、取り組まなくてはならないようです。 活動内容には、漁や野菜作りなど、島の大人が仕事として取り組むものもあり、人並みにテレビを見たりゲームをしたりと過ごす時間はありません。もしくは人並みに、高度な進学校に対応した塾に通ったりすることもできないでしょう。
しかし、島という非日常空間で日々を過ごすことにより、「厳しいけれど、忙しいけれど、楽しく、充実した時を過ごし、大きな成長を得る」(引用:同)ことができます。
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離島留学のメリット
久高島のものを紹介しました。他の島でも島ごとの特性こそ違うものの、同様の取り組みが見られます。離島留学制度の魅力を感じていただけたでしょうか。以上を踏まえ、離島留学のメリットを僕なりの見解でピックアップしてみます。
・生産力の向上
・生命力の向上
・癒しを知る
・可能性を知る
・就活にも役立つ!?
中には極端な意見もありますが、割りと大マジでこのように考えます。ひとつずつ見ていきましょう。
生命力の向上
一番はこれに尽きます。僕自身も島に住みこんで働いた経験がありますが、生命力は格段に上がりました。最悪、お金を稼げなくとも死なない自信があります。何せ、畑を耕す、魚は捕まえる・・・のように、食べるものを自分で獲得するという原始的な方法を学べましたから。まして留学だと、調理から片づけはもちろん、家事、掃除も行います。こういうことができない大人、意外と多いそうです。飛躍した話になりますが、今の日本は、仕事を失う、もしくは正職に就けないだけで、人によっては絶望する世の中です。全てを失ったと感じてホームレスになる人もいれば、極まって自殺する人も絶えません。生命力の乏しい人は、仕事を奪われたとき、何もできない可能性もあるのです。そんななか、生きるための「学び」がどれだけの意味を成すか想像してほしいと思います。
生産力の向上
生命力の向上は生産力の向上にもつながります。何故なら基本的に島には「生きるための最低限のもの」しかありません。無いものは作る、もしくは何らかの手段で仕入れなければなりません。欲しいものは自分の知恵と周囲の協力を活かさなくてはならないのです。野菜を作るにしても、効率的に耕すには、虫喰いを防ぐには、必要分を育てるには・・・と、都度検討と工夫が必要になります。買って済むものでさえ、容易には手に入りません。時には仲間でシェアしたり、交渉が必要になることもあるでしょう。
癒しを知る
とは言え、人間社会の中で暮らしていると、時に悩んだり、疲れたり、やる気がなくなることもあるはずです。そんな時、例えば、我々が癒しを求める時、山や海に囲まれたくて旅行したり、美味しいものをたらふく食べたり、人に甘えたりしますよね。島には全て揃っています。「ストレスフルな環境で日々を過ごすことで鬱になる」なんて話も珍しくはありません。今の日本を「自殺するほど仕事(求人)がないのに、過労死するほど仕事(量)がある」なんて言う人もいます。そんな方々でも、自分を癒す方法を知っていれば、未来が違ってくるように思います。
可能性の提案
ここまでお話すれば想像に難くないと思いますが、非日常体験から感じる可能性は無限大です。何より島という狭いコミュニティが素晴らしい。僕がかつてとある島で出会った知人の話です。島で暮らしながら特産品の通販サイトを運営しています。旅行客が多いシーズンにはインストラクターとして素潜りも教えています。家に帰れば自家栽培の野菜で料理を作るそうです。当時、「大学を卒業して、サラリーマンになる」それが当然だと考えていた僕にとって、この出会いは頭を殴られたような衝撃でした。島人気質とでも言うのでしょうか、島民も、そして全国から訪れる観光客も、どこか頭の柔軟な人が多い印象です。色々な出会いや可能性に触れるチャンスがきっとあるはずです。
就活に役立つ!?
ゲセワな話ですが、僕個人はここにも手ごたえを感じています。僕も大学生のころは「就職塾」と呼ばれるものに通ったり、就職カウンセラーの方とたくさん話しましたが、とにかくよく聞いたのは「就活は(自分の)エピソード勝負」だということ。ニッチ体験が詰まっている島は、独自のエピソード構築にはもってこいだと思います。僕も、島暮らしをしていたころのエピソードが、毎度ウケていたのを覚えています。「人と違う話で面白い」という評価も頂きました。周囲の趣味が「読書」「旅行」と並ぶ中で、「タコ捕り」とか言っていたからでしょうか。もちろん、それだけで有利になることはありませんが、インパクトは大きかったようで、アピールするチャンスは他の就活性より格段に多かったと思います。
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いかがでしょうか。離島留学制度の利点と学びをテーマに述べてみました。個人的な主観もありますが、非日常体験から得られるものが多いことは断言しておきます。
現在よく見かける離島留学制度は小・中学生対象のものが多いです。でも、それこそ進路選択を控えた高校生や大学生に向けた制度であっても良いのではないでしょうか。大げさかもしれませんが、生き方が変わります。
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