三島由紀夫『潮騒』の舞台・神島。「恋人の聖地」という異名を持つ島を巡る。この神島は、地図で見ると島全体の外周をぐるっと一本道が続いている。そこを歩いていくと、『潮騒』の舞台としておなじみの光景、景勝地に出くわすことになっているらしい。
大きく見どころは4つ。
1.八代神社、2.神島灯台、3.監的哨、4.カルスト地形だ。
八代神社
まずは八代神社へ向かう。道中は息切れするほど高い階段を登ることになったが、登った先に見える景色は格別なものがあった。三島由紀夫も小説『潮騒』内で、「もつとも美しい場所」として描いているだけに、そこからの景色の見ごたえは抜群だった。(詳しくはこちら)
境内を潜り抜けると静かなたたずまいの質素な神社がある。しかし、一見造りは質素なのだが、そこにアワビの貝殻が飾られているからつい目を奪われる。ここ は夫婦や恋人で訪れ、お互いの愛を誓ってアワビの貝殻を奉納する文化があるそうで、時折、カップル向けにそういったツアーも開催されているらしいのだ。他 人のメッセージを読むのはマナー違反だと思ったが、きっとそこには素敵なメッセージが込められているに違いない。
神島灯台
八代神社を抜けて神島灯台へ。八代神社を登るまででそこそこ体力を消耗したが、以降は海の見える景色が続き、わりと快適に歩くことができた。この灯台は神 島のシンボル的存在で、どどんと「恋人の聖地」なんて看板が付いている。が、その出で立ちはどうも甘美な響きとはすこし違うように思える。この夏の暑さの せいか、日差しを受けつつもどっしりとそびえ立つ鉄筋コンクリート造りのその灯台にたくましさすら覚えた。
灯台からの眺めも良く、2人でぼーっと過ごすのも良いかも知れない。さらに、近くにはありがたいことにカメラを置く台が設置されているではないか。ちょうどいい高さの台で「ツーショットフォトスタンド」なんて書いてある。余計なお世話である。そうして僕はセルフタイマーモードをONにした。
監的哨
さらに歩くと監的哨が見えてくる。かつて陸軍が、この場所から訓練の試射砲の着弾を確認したそうだが、戦時下には男たちが集った場所も、「恋人の聖地」に かかれば、ただの純愛の舞台でしかない。ここは新治と初江のイチャイチャが繰り広げられた場所である。そんな純愛の舞台すら老朽化には抗えないようで、今 は安全の保証が無いという理由で立ち入り禁止である。たしかに、この建物で恋人とイチャイチャするのは結構な勇気が必要だと思う。
ただ、景色はすごく良い。登ってみたい衝動に駆られるも、ぐっと我慢する。一人でこんなところに登り、万が一、監的哨が崩壊でもしようものなら、とりあえずとてもカッコ悪い。それだけはなんとしても避けたかった僕は、大人しく写真だけ撮って監的哨をあとにした。
カルスト地形(神島中学校)
監的哨を超えたあたりからは、木陰に入り坂も下り気味になっていた。歩き始めて2時間少し。島の外周を歩いているため、どこからでも海が見えて心地よいのが嬉しい。それでもさすがに疲れてきたころ、急に視界が広がった。たくさんの石灰岩が目立つ。空や海の濃い色とは対照的に、白く綺麗に見える石灰岩。これらをカルスト地形と言うらしい。このカルスト地形を眺めながら芝生に腰かける。吹き抜ける風が気持ちよかった。
そんなカルスト地形の目の前、赤みがかった遊歩道から分岐する道を進めば、いきなりどこにでもあるような学校があるから驚きだ。夏休みだが、部活動だろうか。開いた窓から吹奏楽の音漏れが聞こえてくる。その演奏に加え、ドラム、さらには歌声まで聞こえてきた。全校生徒は7人だと聞いたが、何人かの役割を はっきりと聞き分けることができる。どこにでもあるような、放課後の中学校の光景だ。島の非日常感と学校の日常感が混ざり合い、なんとも不思議な気分にな る。なんだかじーんとしてしまった。
そして集落へ戻る。
中学校を抜けると、しばらく無機質な道路が続き、集落へと続く。なんだかんだで結構な上り下りを繰り返した。改めて、この島の広さを実感する。
はぁ、はぁはぁー。
ゆっくり歩いて3時間弱でようやく島内を1周した。そうして抱いた印象はただひとつ。
島を訪れる恋人たちも、島で暮らす子供たちも、とにかく体力があるなぁ~~~。
いや、僕が軟弱なだけなのか。
「もう一度、身体を鍛えなきゃな・・・」
僕は密かにそう誓った。
神島
「恋人の聖地」として有名な神島!しかし健脚向けだと思われる。
まだまだ「島記事」あります。
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