地図に残ることより大きな仕事

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ラグビー競技場の建設現場を一望できる展望台は、工事が進展したせいか移設されていた。移されたのは、建設工事の現場事務所の敷地内。そこへの道は道路工事で通行止めになっている。

せっかくの展望台だ、なんとか見に行けないものかと工事現場のガードマンに聞いてみた。数カ月前、ヤグラに登るとよく見えるよと教えてくれたガードマンだった。今日も彼はこともなげにこう言った。

現場事務所までは入っていいから、行って事務所の人にお願いしてみな、と。そして「兄ちゃん、前にも来たよな」と付け加えた。

泥だらけの足下を気にしながら現場事務所のプレハブの二階に上がり、展望台に登りたいとお願いすると、若い現場監督が「はい、どうぞ」。ニコニコ笑顔で歓迎してくれた。「パイプがむき出しだから気をつけて登って下さいね」

ヤグラを登る。以前はバックスタンド側だったが、移設された現在の場所は、ゴールポストから反対側のゴールポストを見通せる位置。前よりはるかに好位置だった。

グラウンドやスタンドの工事の進展状況がよくわかる。

そして、前にヤグラに登ったときと違って、たくさんの働く人たちの姿が一望できる。こんなにたくさんの人が働いていたのを改めて知った。

重機から飛び降りて、施工具合を確認している人、オペレーターに指示している人、型枠を作っている人、測量している人、作業手順をあれこれ考えている現場監督…

みんな寒さに耐えながら動いている。彼らの動きのひとつひとつのその先に、釜石で開催されるワールドカップがある。

ヤグラからは現場事務所に掲げられた「地図に残る仕事」というゼネコンのスローガンが見える。ヤグラにもその言葉が大きく貼り出されている。

地図に残る仕事というのは、仕事のデカさをアピールするキャッチフレーズだろう。もう20年くらい使われているが、けだし名コピーである。

しかし、ここにはもっと大きなものがある。地図に残るよりももっと大きなものが。

ワールドカップのレギュレーションに合わせるために増設される仮設スタンドは、大会後には撤去される。だから地図に残る部分は少し小さくなるだろう。せっかく被災地での開催なのに、組まれた試合は2試合だけ。大会中、全日本がこのグラウンドでプレイすることもない。それもちょっと残念なことだ。

それでも、ここには大きなものがある。ここで働く人たちの表情が、ぐっと力を込めた腕や腰が、形のないものを形にして行く指先がそれを知っている。

ヤグラを案内してくれたガードマンや、ニコニコ迎えてくれた現場事務所の人たちの笑顔がその大きさを示している。

釜石の復興のシンボルを築く
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