原爆が投下される前の広島の町に、人々の平和な暮らしがあったのは間違いないでしょう。しかし平和に暮らす人々の生活の隅々に、戦争との関わりがあったことは忘れてはならないのです。ヒロシマ、ナガサキばかりでなく、第三の原爆が落とされたかもしれないコクラ、大空襲によって焼け野原になった東京、名古屋、大阪、神戸……。
いかなるものであれ大量殺戮を肯定的にとらえようという思いは毛頭ありません。しかし、私たちが「過ちは繰返さない」と誓う時の「過ち」とは、私たち国民が犯した過ちでもあるということを、注意深く考えていく必要があると思います。
原爆ドームへの道
原爆ドームは長い歴史の中で幾度も輝きの瞬間の舞台にもなってきました。ドイツ人捕虜のカール・ユーハイムが日本で初めてバウムクーヘンを焼いた瞬間もそうだったことでしょう。亡くなった少女の日記に感銘を受けた同世代の若者たちが保存運動を立ち上げた時もそう。海外からの訪問者を含め、多くの人々がこの場所を訪れ、「過ちを繰返えしてきた歴史」を思い、心に誓ってきたそれぞれの瞬間も間違いなくそうです。先月、アメリカのケリー国務長官が予定を変更して原爆ドームを訪れたこともそうでしょう。
今月27日、現職のアメリカ大統領バラク・オバマ氏がヒロシマを訪れる時間が、原爆ドームの、そしてヒロシマの新しい輝きとして付け加えられることを期待します。
アメリカ大統領が原爆ドームにやってくるまでの長い長い道のりが「ヒロシマからの道」に真っ直ぐにつながっていることを、平和をねがう人類の一員として信じたいと思います。
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