【シリーズ・この人に聞く!第4回】キャンプディレクター 寺尾のぞみさんが語る「Make a differenceで培う力」

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ゴールデンウィークが終わると、次は夏休みの計画をたてるご家族も多いのではないでしょうか?アメリカでは「夏休み=サマーキャンプ」は子どもたちの文化として根付いています。ニューヨークを拠点に東京と往復して活動を展開する寺尾のぞみさん。ミステリオをどんな思いで始め、毎夏日本で開催するサマーキャンプでは何を会得できるのでしょうか。ミステリオをスタートした2001年は、奇しくもNYテロがあった年。その時の貴重な体験を振り返り、語っていただきました。NYと日本の両国を深く知る寺尾のぞみさん独自の視点から今の子どもたちに何が必要かを聞いてみました。

寺尾 のぞみ(てらお のぞみ)

ミステリオディレクター(総責任者)
東京生まれ。ニューヨーク・マンハッタン在住。高校3年の1年間、アメリカ・シカゴへ留学。大学卒業後は、アメリカ大使館商務省、フジテレビ制作部、伊藤忠商事アメリカの社長秘書などを経て、ニューヨークに本社を置くモルガンスタンレー証券会社にてエグゼクティブディレクターとして約20年近く勤務、2005年6月退社。幼少のころからアメリカにあこがれ、その夢がかないアメリカで生活し、仕事を続ける傍ら、90年代後半から“今の自分にできることは何か”と問いかけを始める。“身の回りの小さなことから何かをはじめよう”とMake A Difference をモットーに2001年夏、ミステリオをスタート。日本人としてのアイデンティティーを忘れずに地球人になるためには何ができるか、20年近くにわたる海外生活から学んだ多くのことをもとに、ミステリオでは次の時代を担う子供たちや様々なバックグランドを持つ大人たちと一緒に考える場を提供し続ける。自分で考え、感じ、行動しながら、自分が打ち込めることが見つけられる環境を、そして自分の人生を思い切り楽しみながら、自分の力で生き抜ける強さを持つことをミステリオは目標としている。アメリカキャンプ協会メンバー。

 ミステリオ公式サイトはこちら
www.msterio.jp  

今は大人や親が過剰に何でも子どもにやってあげ過ぎで、見守れなくなっている。

――寺尾さんの旦那さんはアメリカ人で、日常会話は英語ですね。

私はね、幼少の頃からなぜかアメリカ人に憧れていて(笑)。英語を話すようになるための努力として、小学校から英会話を習い始め、中学生まで続けていました。習い事は他に、4才からピアノを習い始め20才まで続けていました。

――英語もピアノも今も人気の習い事ですよね。寺尾さんが2つの習い事をするようになったキッカケは?

私の祖父はアマチュアですが「ピアニストになりたい」と夢をもっていたくらいプロ級の腕。3才のお誕生日にピアノをプレゼントされ、それをキッカケに習い始めました。英語は5才から「大きくなったら外国に住みたい」という夢がありましてね。とにかくなぜか英語とか異文化に興味がありました。小学校がミッションスクールだったので、イギリス人の英語の先生との会話の授業がありました。それが何よりも楽しみだったんですね。学校だけの勉強では満足できず、親に英会話を習わせてほしいと3年生頃から英会話を習っていました。

――やはり興味をもった時期に、好きなことを丁寧に続けるのが上達の秘訣なのでしょうね。寺尾さんは、どんな子どもでしたか?

ピアノを弾くことや、歌うことが大好きでした。小さい頃から何をやるのも一番のろかったので、 「お姫様」というあだ名があったくらい(笑)。ひとのことは全く構わない、とにかく集中するとそれに没頭してしまう子でした。友達を誘っては家に呼んで、皆で劇を作ったり、合唱の指揮をしたり。ひとをまとめる役割も大好きでした。のろまなわりには行動的でしたね。

――NYの子どもたちの習い事事情は、やはり日本のように色々選択肢があるのでしょうか?

はい、もちろんです、NYは特にお受験もありますし、習い事をたくさんさせているお家はたくさんあります。お母様たちはその送り迎えにぐったりつかれてしまう、なんてことは年中のこと。どちらかといえばスポーツ系の習い事が多いですね。

――今の子どもたちに不足していると思うことは何でしょうか?また、日本の子どもたちにどんなことを期待していますか。

自分で考えて、自分で行動すること。最後までやりぬく力。人がやってくれるから自分は別にしなくてもいいという人任せなところ。創造性。これは大人がそうだから、子どもに影響してしまうのだと思います。今の子どもたちが悪いのではなく、大人の私たちの中にこうした意識がどんどん薄れてきている、残念なこと。子どもを大切にすることは、全部大人がやってあげることではないと思います。ガイダンスはするけれど、見守る大切さ、忍耐力をもって最後までやらせることが「責任感を持てる人間」をつくることになるのです。今は大人や親が過剰に何でもやってあげ過ぎる、見放すのではなく見守れなくなっている世の中、『もっと大人がんばれ!』といいたい。なんといっても日本は世界第2の国、まだまだ世界に力を発揮できる力をたくさんもっているのに、なぜか元気がない。だから自分をもっと信じられるような環境をつくりたい。人と目と目を見てきちんとコミュニケーションできる子どもになってほしい。元気に遊べる子どもになってほしい。

緑あふれる安全な環境の中、子どもたちは遊びを通して毎日新しい発見をしていきます。

――ミステリオでは毎年日本でサマーキャンプをされていますが、他とはどう違うキャンプなのですか。

ミステリオはひまわりみたいに元気に自分の花を咲かせられるところ。 自分らしくいられるところ。 大切に思ってくれる友達にたくさん会えるところです。2001年に誕生したサマーキャンプミステリオは 小学校から高校生を対象にしたアメリカ式のインターナショナルサマーキャンプです。緑あふれる安全な環境の中、子どもたちは遊びを通して毎日新しい発見をしていきます。学校や普段の生活では体験できないたくさんの経験を通して、自分をもっと好きになれるように、自分をもっと信じられるように、新しい発見がたくさんできます。安全を第一に考えるミステリオでは 大学生から70才代までの経験豊かなスタッフたちが、しっかりとお子さま一人ひとりの心と行動を見守ります。

――遊びは具体的にはどんなことをするのですか。

期間中は、英語を日常生活に自然に取り入れながら、午前中は各種スポーツ(テニス、ゴルフ、水泳、乗馬、ダンス他)午後はアート、演劇、音楽、創作書道などから 自分の好きなアクテイビテイー(クラス)を選択することができます。アクテイビテイーを担当するのは、子どもたちの個性が引き出される瞬間をたくさん見守ってきた世界各国から集まったベテラン講師陣たち。同じ目線で対話しあうことを繰り返すうちに、子どもたちが自然と本当の自分に気づいていく9日間です。(※今夏のみ会場の都合により8日間)

――なるほどプログラムの豊富さと濃さ(笑)は、日本のキャンプではなかなか見られませんよね。英語が全然できない子でも参加させても大丈夫でしょうか?

20年以上にわたる私の海外生活から学んだ多くのことをもとに、ミステリオは誕生いたしました。子どもたちが成長する過程の中で、大人も子どももお互いに尊敬(RESPECT)し合いながら、自分で決めたことは最後までやり通す責任感 (RESPONSIBILITY) 、何でもやってみようという勇気 (COURAGE) が大切だと思います。サマーキャンプでの生活を通して、それぞれが持つ個性が引き出され、本当の自分を見つけられる場がミステリオだと思います。だから、英語がしゃべれなくても「話そう」とすることがあれば心配ありません。単語を覚えることよりも、伝えようとする力が大切なのです。

――サマーキャンプを通じ、参加した子どもたちがどんな風に変化するかを具体的に教えてください。

自分で選べるようになる。自分で考えられるようなる。決めたことは最後までできるようになる。好きなこと得意じゃないことがわかるようになる。やさしい気持ち、思いやり、尊敬の気持ちが生まれるようになる。ちょっと学校に行きたくない、と思い始めた中学生。お父さんが厳しすぎてお金はあるけれど愛情をかけてもらったことがあまりない小学生。何をやるにも自信がない、いつも失敗しちゃうとびくびくしていた小学生。こんなお子さんの成長が特に素晴らしい。

――そもそもミステリオの活動を始めたキッカケは何だったのでしょう。

キッカケはアメリカの友人が必ず、幼少の頃の思い出にサマーキャンプの話を持ち出すところから始まります。学校や家庭では感じられない、学べないことがたくさんあるこのキャンプにとても興味があって、ある夏休みを利用してアメリカ各地のキャンプを見てまわりました。すると大人でも、とにかく楽しいということがわかった。このコンセプトをなんとか日本に持ちこみたいと思い始めました。もともと子どもに関わることを最終的にしてゆきたいという夢があったのも事実。でも、どういう形でという具体例がなかった。思いも3年あたため、準備に2年。2001年に念願のミステリオ誕生となりました。

各分野のベテラン講師が世界各地から集まり子どもの指導にあたる
各分野のベテラン講師が世界各地から集まり子どもの指導にあたる

何ができるではなくて、何かをやってみる、やらせてほしいという気持ちと姿勢が大切。

――2001年のNYといえば、9月のテロ事件が思い起こされます。ちょうどサマーキャンプが終わってから間もなくの出来事でしょうか。その日、どこで何をしていてあの事件を知りましたか?

はじめの飛行機がWTC(世界貿易センター)につっこんだ時、私は健康を損ねており、診察を受けに病院を訪れていました。その後、病院を出て会社に向かいながら、絶対に何かが起きたような予感がして。街の様子は異様に平和だったのに、何となく変だったことも確か。会社につくと人々はすでにWTCから逃げている最中でしたが、ひとまず自分のオフィスにいき、窓から煙で見えなくなったWTCを皆が見つめている光景をみて、これは逃げなければと。家へ歩いて帰ったのですが、もうその時には街中はごった返し。あまりよく覚えていないほどの混乱状態でした。家からWTCを見ながらニュースをつけ、日本にいる母へ電話し「大丈夫無事よ」と伝えた途端に、WTCが倒れる瞬間を見て腰が抜けました。

――当サイトのブログ企画で、テロで旦那さんを亡くした杉山晴美さんにも参加してだいています。当事者でしか語れないことがたくさんあると思います。そこで感じたこと、やらなければと思ったことなどあれば教えてください。

ここで何かをしなければと近所にある赤十字に向かいました。すると私のように集まった人の渦、献血の列はすでに2時間待ち。体重制限があることを知らなかった私はそこに並びやっと私の番になると、軽すぎてだめだと断られ、それでも引き下がらなかった私に、隣の列にいけばボランテイアを探しているといわれ、またそこにいき、とても長い列に並びました。やっとの思いで順番がやってくるとフォームを渡され、「何ができますか?」と係に聞かれた瞬間、『いやだ。私にできることなんてないわ』と自信をなくしつつ、『日本語ができる』と答え、その場を去ろうとした時です。80才過ぎの腰もちょっと曲がって歩きつらそうな女性が『とにかく自分は石を拾うことぐらいはできるから使ってほしい』といっている姿を見たのです。『これだ!』と思いました。つまりね、「何ができるではなくて、とにかく何かをやってみる、やらせてほしいという気持ちとその姿勢が大切なことなんだ」と涙したことを覚えています。明日何が起るかわからない今の世界、今日という日をいかに精一杯送るか、できることはそれがたとえ小さなことでもたくさんある、とにかくなんでも惜しまずやるということの大切さを学びました。

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