夜泣き・寝ぐずり・早朝起き…。ママやパパが悩まされる赤ちゃんたちの睡眠トラブルの解決メソッドを紹介した新しい視点。日本人初の子どもの睡眠コンサルタント国際認定資格を取得した愛波さんは、NYで二児を育てる母として奮闘する今、初めての書籍に込めた思いを語って頂きました。
愛波 文(あいば あや)
乳幼児睡眠コンサルタント。日本人で初めて、子どもの睡眠コンサルタント国際認定資格を取得。APSCアジア/インド代表。IMPI日本代表。Sleeping Smart®代表。長男出産後、夜泣きや子育てに悩み、子どもの睡眠の科学睡眠の勉強をはじめ、アメリカで働きながら米国IMPI公認資格を日本人で初めて取得。現在は6歳と3歳の男児2人の子育てをしながら、子どもの睡眠に悩む保育者のコンサルティングや日本人向けに子どもの睡眠教育プログラムを提供。IMPIと提携し、日本語での妊婦と子どもの睡眠コンサルタント資格取得講座の講師も務めている。
完璧なママでないといけないと思っていた。
――今回、初の書籍刊行となりますが、本を執筆されたきっかけとは?
これまでコンサルテーションを終えるたびに「本を書いてほしい」と言われてきました。「いやいや私なんかに本は書けない」と思っていたのですが、昨春家族で来日した時、某出版社のインタビューを初めて受けて編集者の方にも「これを本にしたい」と言われ、他の出版社からも書籍化のお話しを頂いて、改めて出版することが現実的になりました。最終的に昨夏、講談社から刊行することになり執筆が始まりました。
――科学的な根拠のある新しい視点ですし、おしゃれなママとして話題性もあるから争奪戦でしたね!コンサルテーションの勉強はいつから?
日本のファッション誌には数回出たことがありますが、私は全然お洒落ではないです。NYではノーメイク、ヨガパンツにTシャツで子どもたちの送迎を車でバタバタとしています。
勉強を始めたのは長男が生後8か月頃から。寝てくれなくて悩んでいた時に、外人のママ友から「この本読んでみて!」と渡された一冊で目から鱗が落ちました。夜泣きって改善策があるの?という感じで。そこから興味をもって15冊位いっきに英文の専門書を読みました。小児科、精神科、睡眠の専門家それぞれが書いている本が、アメリカでは壁一面埋め尽くすくらいたくさんあります。
――アメリカは進んでいるのですね。具体的にはどんな説がありますか?
大切なのは、睡眠環境を整えること。昼寝をきちんとさせること。昼寝をさせると夜寝てくれなくなる…とそれまでは思っていて、なるべく起こしておこうとしました。でも赤ちゃんは疲れすぎると目覚めのホルモンでもあるコレチゾールというストレスホルモンが過剰分泌されてしまいハイパーになってしまう。元気だからもっと起きていられる、と親が思っていても、実は疲れすぎていてハイパーになっているから寝かしつけようとしてもうまくいかない。疲れすぎる前に寝かしつけをしないとぐっすり眠れないものなのです。そして親子ともに幸福度を高めること。赤ちゃんとのスキンシップ、ふれあいは眠りに大きく影響しています。
――お昼寝って必要なのですね。英文でスラスラ読める語学力があったからこそ気づきも多かったのでは。
たくさん読んだ中からそれぞれの良いと思われる説を自分なりにピックアップして毎日我が子に実践してみました。10か月頃になった頃、「大好きだよおやすみ」と言ってベビーベッドに置くだけで、一人で朝までぐっすり眠れるようになり、それまでの生活が大きく変わりました。その本と出合うまでは育児が辛くて楽しさを感じられず、本当は可愛いはずの息子が可愛いと思えなくなっていました。息子の睡眠改善後は余裕もでき、子どもの機嫌もよくなって癇癪を起こさなくなりました。おもしろくてもっと勉強したいと思って調べていたら資格取得ができることを知り、すぐ受講の手続きをwebでポチりました。でも勉強しているからといって家事を疎かにしていると思われたくなかったので、主人には黙って受講し、育児・家事ともに完璧にこなしていました。資格取得してから初めて「実はこういう勉強をして資格を取った」と伝えたらビックリしていましたね。
大人は眠りの90分前と90分後が肝心。
――オンラインで資格取得講師もされていますが生徒さんも皆、子育て真っ最中のお母さんですか?
はい、現在45名の生徒がいます。私は日本語で担当していますが、ヨーロッパやブラジルなど世界各国のママがオンラインで講座を受けています。妊婦と乳幼児の睡眠コンサルタント資格取得コースはウェブからログインして講義を受けることが可能です。資格取得には一部と二部があり、一部が14週間、1講義は60~90分。二部も14週間で、1講義が60分。二部では実際のケーススタディをみていきます。例えば8か月の夜泣きの激しい赤ちゃんに対して、ご家庭や育児方針に合わせた改善方法を提案していきます。
――育児中はとても助かる講義内容ですね。お母さんにどんな変化がみられますか?
皆、子どものためにと思っている人ばかりで偉いなぁと思います。私がコンサルテーションを行い、お子さんの睡眠改善がされた方が「こんなことができるんですね。それなら自分も勉強したい」と言ってくれて資格取得コースを受講してくださっている方が結構多くいらっしゃいます。皆、子どもの変化にビックリして、ママも変わるのがおもしろいですね。
――睡眠はすべてを司っていますね。大人の睡眠についても同じ原理ですか?
大人の場合、眠る90分前ぐらいに体温を上げて、体温が下がってくる頃に眠ると質の良い睡眠が取れます。そして、眠ってから最初の深い眠りの時に一番成長ホルモンが出たり、美容にもよかったりするため、最初の90分の一番深い睡眠の時間にきちんと寝ることが大切。お風呂に入れない時は足湯でも代わりになります。眠りの90分前と90分後のサイクルを私は毎日意識しています。睡眠負債を抱えると認知症や様々な体調の不良にもつながります。睡眠は生活の基盤なので、質の良い睡眠を取ってほしいです。私は子どもの睡眠に悩むママの相談を受けていますが、子どもが寝ていないと親も寝ていないわけですから、一緒にぐっすり眠れるようになることが大切です。
――書籍にするまで眠れない日々が続いたのでは?(笑)
両立するのがとにかく大変でした。仕事をしながら家事と育児とで時間がなくて。睡眠を取らないと自分がイライラしてしまうので時間は限られています。通常の仕事、生徒を育成する仕事、一般の方のコンサルテーション、育児と家事、本、メールや電話取材。でもある時から、家事はアウトソーシングするようにして、近所のママ友がご飯を作ってくれて、たくさんお世話になって執筆を進めました。そして子どもたちが大好きな主人に助けられました。今回も約2週間、単独来日できているのも主人のおかげです。子ども達の健康管理には、睡眠を取ることだけでなく栄養面も人一倍気を遣っています。
好きなことを真剣に極めてきた帰国子女。
――現在6歳と3歳の息子さんをNYで子育て中ですが、ご自身もNYでお育ちになった帰国子女ですね。
5歳から18歳までNYで育ちました。息子たちも日本語のほうが得意ですが、成長するにつれて英語が会話に紛れてきて、ルー大柴みたい(笑)。私はほとんどアメリカで過ごしているので日本に来ると電車さえ緊張します。慶應NY校で日本語は勉強して、大学は日本へ戻って慶應義塾大学へ進学。体育会テニス部でテニス漬けの日々でした。小さな頃はテニス選手になりたいと思って、かなり真剣に取り組んで、伊達公子さんや杉山愛さんなど当時活躍していた選手は憧れでした。9歳からトーナメント出場をして全米遠征も行っていました。14,5歳の頃、思春期でテニスを怠けたこともありましたが、高2の時テニスでちゃんと結果を残したくて再び真剣に取り組み、その甲斐あって高3時にニューヨーク州で3位になりました。
――プロ並みですね!お母様も遠征に立ち会いを?お二人姉妹でどんな習い事をされてきましたか?
2歳上の姉は何でもできる人で、テニスだけでなくサッカーもバスケもうまかったですが、私はオールラウンドではなくテニスだけ。送迎は母にしてもらっていたので感謝しています。アメリカはシーズンスポーツなので姉と一緒に習い事はなんでもしました。テニス、クラシックバレエ、ピアノ、ソフトボール、サッカー、ヴァイオリン…毎日忙しかったです。私はその中でもテニスが一番楽しくて、コーチが母に「この子は才能がある」と言っていて、真剣にやり始めたのが9歳。
――アメリカで自由に育ってこられたご自身のキャラクターを一言で表すと?
「一生懸命」です。私は子どもを出産するまですごく完璧主義で、家事も育児も仕事も全部完璧にしたいと思っていた。でも子育てを通じて自分自身がとても変わりました。完璧でなくていいとマインドリセットするのは努力が必要でした。育児は自分の思う通りにはなりません。完璧な育児なんて求めていたらパンクする…と思って「完璧でなくていい。自分がハッピーだと思えればそれでいい」と自分に言い聞かせ、そこから変わりました。だから部屋が散らかっていても全然気にならない(笑)。昔から仲の良い友達には「がんばりすぎないで」と言われます。
――小さい子を育てているうちは特に予定通りにはいかないし、目につくところが汚れていて当然ですよ!では最後に同じ子育て中のママにメッセージをお願いします。
私がテニスを通じて学んできたことは、子どもを褒めて育てると、その時伸びなくてもこれから伸びることを信じること。今より先をもっと見てあげてほしい。12歳の時、私は東海岸のテニス7位で、ナショナルチームの試合に出ていました。20位までは出場できますが、それ以下の子は出られない。その中で勝っても負けても「あなたの、ここの、このプレイがよかったよ!」と常に我が子を具体的に褒めているお母さんがいました。その時彼女は奇しくも選外でしたが、なんと14歳の時に東海岸で1位を取り、スカラシップでスタンフォード大学へ進学しました。今はテニス関係の仕事に就いています。お母さんはその子の力を信じていたのです。私にとってお手本にしたい親子の逸話です。
今はSNSなどで他人のキラキラ生活ばかり目にしがちですが、本当に大切なのはリアルな人との関係。そしてママたちには自分自身のことを好きでいてほしいと思います。そのためにも、やっぱりたっぷり眠って過ごしてほしいです。
編集後記
――ありがとうございました!あやちゃんご結婚される前から知っていますが、今回の書籍を通じて改めて人となりを知ることに。華奢でかわいい容姿とは裏腹に、ストイックに打ち込める姿勢は骨太。睡眠は生活の基盤で、食も教育もそれがあってこそ。大人も「眠り」について考えられる書籍を世に送りだしてくれたあやちゃんに感謝です。
2018年6月取材・文/マザール あべみちこ
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