箱根山噴火時の避難行動について

sKenji

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箱根・大涌谷。昨年の秋に撮影
箱根・大涌谷。昨年の秋に撮影

先月30日に噴火警戒レベルが3に引き上げられた神奈川県の箱根山。ごく小規模な水蒸気噴火があったとも言われています。箱根の火山について、その歴史や噴火の際の避難行動、大規模噴火の確率についてご紹介します。

箱根火山の歴史について

箱根町の公式WEBサイトによると、箱根火山が噴火し始めたのは今からおよそ50万年前のことでこの時に金時山など古期外輪山が作られ、約16万年ほど前からは浅間山と言った新規外輪山が作り始められたそうです。およそ3万年前からは箱根連山最高峰の神山中心とする中央火口丘(※大涌谷付近)が形作り始められたと考えられています。

大涌谷や芦ノ湖ができたのは約3000年前のことで、神山の北西斜面で水蒸気噴火が起こった際にできたのが大涌谷であり、この爆発が引き金で崩壊した大量の土砂が仙石原に流れ込んでできたのが、芦ノ湖と言われています。

 箱根町火山防災マップ 箱根火山の生い立ち|箱根町
www.town.hakone.kanagawa.jp  

噴火時にどのように行動すればいいのか

噴火に対しての備えとして、ハザードマップ(※)で確認する以外にも、先月19日(※噴火警戒レベルが3に引き上げられる前)に一般財団法人箱根町観光協会が公表している、観光従事者向けの噴火時の避難誘導マニュアル「万が一の備え」がひとつの参考になると思いますのでご紹介します。

※現在のハザードマップがいつ作られ、どのような規模の噴火を想定していたかについては後日、調べます。

 箱根町火山防災マップ 火山防災マップ全域図|箱根町
www.town.hakone.kanagawa.jp  
 「万が一の備え」(一般財団法人箱根町観光協会)
www.hakone.or.jp  

現在、箱根で想定されているのは大涌谷周辺での「小規模な水蒸気爆発」です。中央火口丘や大涌谷及び芦ノ湖が作られた際のような大きな噴火ではないので注意が必要です。

「万一の備え」によると、「小規模な水蒸気爆発」の際の避難行動は一次と二次に別れており、それぞれ次の通りです。

<一次避難>
噴火が発生した際は、まず最初に速やかに屋内に退避します。時間に余裕がある場合は鉄筋コンクリートなど、より堅牢な建物への避難を勧めています。なお屋内では落下してくる噴石に備えて1階に避難します。

噴石と共に恐ろしいのが、数百度にも達する熱風が時速100km以上で襲ってくる火砕流などですが、水蒸気爆発による火砕流は温度が100度以下と比較的低く、巻き込まれても助かる可能性はあるとのことです。

<二次避難>
噴火が収まって、視界も十分にあり道路が通行可能な場合に二次避難を開始します。ただし、渋滞に巻き込まれるなど新たな噴火に対しての危険性もあるので、原則として、箱根町の指示に従って避難を開始することになっています。

避難する際にはヘルメット、ゴーグル、マスクなどを着用するのが望ましいですが、無い場合は座布団やタオルなどで代用します。服装は手袋をするなど、手足を露出しない方がいいとのことです。

道路に降灰等の影響がない場合は自家用車や路線バスなどで避難しますが、道路に影響がある場合は自治体や警察、消防、自衛隊等の特殊車両やヘリコプターで避難します。

火山活動シナリオに見る、想定外の噴火の確率について

小規模な水蒸気爆発以外の発生確率はどの程度あるのか。1つの参考データとして、先月15日、第132回火山噴火予知連絡会に提出された資料があります。

 箱根火山の火山活動シナリオ
sakuya.ed.shizuoka.ac.jp  

資料には火山活動がない平常時と火山活動が開始されてからの火山活動シナリオが発生頻度や確率と共に書かれています。

それによると溶岩が半球状に冷えてできる溶岩ドーム(※溶岩ドームは火砕流などを引き起こします)ができる噴火の頻度は3000年に1度程度、プリニー式噴火と呼ばれる大きな噴火は4万年に1度くらいの割合で起こるそうです。

この発生頻度は、過去7万年間の間に発生したことがわかっている噴火を元に算出されています。溶岩ドームは3000年に一度(※過去4万年間で確認されている12回の平均値)となっていますが、前回、溶岩ドームを形成した噴火は下記の資料だと3300~3500年ほど前、水蒸気爆発の場合は700~850年ほど前に発生しています。

 火山別噴火履歴表示
gbank.gsj.jp  

火山噴火への警戒について

現在、日本には110もの活火山があります。近寄らないに越したことはないのかもしれませんが、人が住んでいる場所の近くにある火山も多い上に、噴火した際の影響範囲については確かなことはわかりません。

箱根を例にとっても、現在の避難指示エリアは大涌谷から半径およそ1kmですが、箱根山が形成され始めた数万年前の噴火では、西は富士川河口周辺から、東は横浜市戸塚区までの広い範囲に火砕流が及んだといいます。

同規模の噴火が起こる可能性は極めて低いと言われていますが絶対にないとは言い切ませんし、そこまで大規模ではなくても現在の想定以上の噴火が起こる可能性もあります。

警戒したらきりがなく、どこで線引きするのかは難しいものがあります。結局、火山の専門知識がない自分は、国や自治体が示すハザードマップを参考にせざるを得ないかと思います。

噴火警戒レベルや避難指示のエリアは、実際に住んでいる人や観光への影響もあるので引き上げが難しい一面もあるかと思いますが、安全寄りで行ってほしいと思います。

現在、噴火の際の避難誘導マニュアルについて、見直しの話もあります。今後も箱根の火山活動について注視していきたいと思います。

箱根

参考WEBサイト

 箱根町火山防災マップ|箱根町
www.town.hakone.kanagawa.jp  
 気象庁|知識・解説 火山
www.data.jma.go.jp  
 伊豆の大地の物語
sk01.ed.shizuoka.ac.jp  

Text & Photo:sKenji

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