東北の蔵王、神奈川県・箱根の大涌谷、そして鹿児島県・口永良部島。ここ最近火山活動を伝えるニュースが多い。火山というと御嶽山の噴火以降、負の部分ばかりが目についてきたが、恩恵について実感する機会があった。
それは先日のゴールデンウイーク、東京から南へ約360kmの場所にある火山の島、青ヶ島へ行ったときのことであった。同島ではキャンプをしていたのだが、野営場から徒歩2、3分のところに火山活動による地中の熱を利用した「地熱釜」と「地熱サウナ」があった。それがとてもエコ&便利で、火山の力がもたらす恵みを感じずにはいられないものであった。
地熱釜はコンクリートでできており、釜と地中とは金属製のパイプでつながっている。配管にはレバーがあり、開けると高温の水蒸気が釜に流れる仕組みである。このスチームで蒸すわけだが、お湯を沸騰させるといった手間はいらず、野菜や卵など熱を通したいものを釜に入れて蓋をするだけでいいから楽であった。ほとんど手を加えなくても美味しい温泉卵やフカフカの蒸しイモが簡単にできてしまう。大変ありがたい調理器具であった。
一日の疲れを取るのにもってこいだったのが地熱サウナで、熱い蒸気が充満した部屋にいると、自然が生み出す熱エネルギーの恵みを全身で体感することができる。
電気のない昔、青ヶ島ではこの地熱を調理や暖房などに利用していたという。
火山の恩恵を実感する一方で先月、活発化した火山活動の影響により、東北の蔵王にある1軒のホテルが廃業したというニュースを目にした。閉めた宿は仮に噴火しても影響を受ける可能性が低いとされていた場所にあったにも関わらず、宿泊客が減少して倒産に至ったという。
また、6月8日付の西日本新聞経済電子版によると、口永良部島から約13kmも離れた隣の屋久島でもホテルの宿泊キャンセルがでているそうである。
火山の噴火によりこれまで多くの方が犠牲になっている。また、予知は容易ではない上に発生した際の規模も予測通りになるとは限らない。危険性が指摘されている場所はもちろんのこと、たとえ安全とされているエリアにも近づかないに越したことはないという考え方も否定はできない。
とはいえ、世界の活火山の約10%があると言われる火山大国の日本では、火山災害のリスクがある場所は少なくない。しかも、そういう場所に限って素晴らしい自然景観や温泉などが多く、極度に警戒してこれらの魅力に触れないのは惜しいとも思う。
ここ最近、火山活動と聞くと危険性ばかりが気になっていたが、恩恵や魅力があることも忘れずに、火山とうまく付き合って活用していくことができればと思う。
参考WEBサイト
Text & Photo:sKenji
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