前回の旅行レポート
ホーチミンで統一会堂などの観光スポットを見た後、ベトナム中部の街・ホイアンへ向かうために寝台列車に乗る。
ダナンからホイアンへ
ホーチミンから乗った寝台列車をホイアン近くのダナン駅で降りる。ダナンはホイアンの北西、約25kmに位置する大都市である。ここでバスに乗り換えてホイアンへ行くつもりであった。
列車を降りてダナンの駅を出ると、待ち構えていたタクシードライバーに取り囲まれ、
「どこへ行くんだ?タクシーに乗らないか」と次から次へと声をかけられる。まるで獲物を狩るような勢いだった。
「ホイアンだけどバスで行くよ」と答えていると、
「バス停までは距離があるから。乗り場までタクシーで行った方がいいぞ」と言う。しかし、バス停までの距離はタクシーの運転手によってまちまちで、4kmという者もいれば10kmという者もいる。
ガイドブックによればバス停までは2kmほど。歩こうかと思っていると、20代後半から30代前半くらいだろうか、西洋人の女性バックパッカーが「ホイアンまでタクシーをシェアしない?」と声をかけてきた。
彼女に値段を聞いてみると15万ドン(※約900円。ドンはベトナムの通貨)くらいだろうと言う。ホイアンまではバスで1時間ほどの距離である。本当にその値段で行けるのだろうかと思い、近くにいたタクシーの運転手に聞いてみると15ドルという答えが返ってきた。
バスならば1ドル以下でホイアンまで行ける。「路線バスで行くよ」と女性に伝えた。彼女は前夜に乗った寝台列車で十分に寝ることができずに疲れているとのことで、もう少しタクシーを探してみると言った。
バス停まで歩くことにしたものの、ガイドブックに記載されている場所よりも近くに停留所があるように思えた。そこで近くにいたベトナム人の男性に尋ねてみると、
「駅前から伸びる道路を歩いて最初の交差点にあるよ」という答えが返ってきた。
考えていた以上の近さに聞き間違いではないだろうかとも思いつつ、とりあえず彼の言う場所へ行ってみることにした。
タクシーのシェアを持ち掛けてきた女性はどうしただろうかと思い、あたりを見回してみると彼女は駅の入口で若い西洋人カップルと話をしていた。なんだか少し困っているようにも見える。
彼女の所へ行ってみるとホイアンまでのタクシー運賃の相場や別の行き方を尋ねていた。しかし、西洋人のカップルもホイアン行について詳しいことは知らないようである。彼女たちの話が一区切りついたタイミングで、
「聞いた話によると、駅の近くにバス停があるらしいよ」と言うと、彼女の表情は明るくなり、ホイアンまでバスで一緒に行くことになった。
ホイアン到着。そして旧市街へ
彼女は米国人で名前を「テイラー」と言った。互いに自己紹介を終えると、バスが停まるという交差点を目指した。
日差しが強くて身体が溶けてしまいそうな熱さのなか、話をしながら歩くことおよそ5分。小さなバス停の標識が見えた。おそらくホイアン行の停留所だろうと思い、近くにいた地元の人に尋ねてみるとそうだと言う。テイラーに
「思ったより簡単に見つかったね」と言うと彼女は
「ホイアンに着くまでは喜べないわ」と軽く笑いながら言った。
停留所の脇にある木陰で10分ほど待っていると1台のバスがやってきた。目の前に停車したバスに乗り込み、ホイアン行きか尋ねてみるとどうやら間違いないようである。
テイラーの顔を見ると彼女は微笑み「まだわからないわ」といったようなことを言った。
バス乗車後、彼女の顔に疲労が見てとれたのであまり話かけないようにして、外の景色を眺めていた。
ホイアンには1時間ほどで着いた。しかし、たどり着いたはいいが現在位置がわからない。目指す場所は古い町並みが残る旧市街なのだが、どうみてもその場所でないことはあきらかだった。
下車して、テイラーとここはどのあたりだろうかと話をしていると、彼女は同じバスに乗っていた若い西洋人の男性を見つけて声をかけた。
彼は私たちが乗車した後、バスがダナンの市内を周っている際にベトナム人の彼女と一緒に乗ってきたのだった。仲睦まじそうにしていたので、話しかけるのは野暮だと思い声をかけるのを控えていた。
彼に旧市街エリアまでの道を尋ると知っており、これから向かうとのことだったので4人で行くことになった。
歩きながら自己紹介をする。彼はフランス人で半年ほどダナンに住んでおり、彼女の方はダナンの学生という話であった。
ホイアンには度々二人で観光に来ているらしく街に詳しかった。歩いていると、この路地の先に1杯3,000ドン(日本円で約18円)の格安地ビールの店があるだの、このあたりに安宿が多いなどといったことを教えくれる。
20分ほど歩くと旧市街エリアに着いた。最初に泊まるところを探そうと考えていたのだが、フランス人の彼が美味しいバインミー(※ベトナムのサンドイッチ)屋があるというので、4人で食べに行くことになった。
店は旧市街のなかの一軒である。バインミー以外にもフォーなどを提供する地元の食堂で、2階の小さなテラスからは古い町並みが見える。
その窓際の特等席に4人で陣取るとバインミーを食べ、マンゴーのスムージーのようなドリンクを飲んで話をしていた。
あまりにも暑く、そしてあまりにものどかな店の雰囲気に、会話も自然とスローテンポになりまったりとしている。
1時間近くベトナムやホイアンのことなどについて話をした後、テイラーも自分もまだその日泊まる宿が決まっていなかったのでそろそろ店を出ることにした。
4人で一緒に外に出ると、テイラーは旧市街エリアから10分ほどの所に綺麗な安宿があることを教えてくれた。一瞬、彼女がすすめる宿に一緒に行ってみようかと思ったのだが、ホイアンでは泊まってみたい宿があったのでここで別れることにした。
テイラーとは店の前で、若いカップルとは宿に向かう途中の交差点で、互いの安全と良い旅を願って別れた。
築200年の古民家の宿
泊まりたいと思っていた宿は旧市街エリア内にある築およそ200年の古民家で、宿泊料は1泊15ドル。旧市街という素晴らしいロケーションにある上に3部屋しかないというので満室も覚悟していたのだが、行ってみると宿泊者は誰もいなかった。
日本の長屋そっくりの歴史を感じさせる宿を見た瞬間、「絶対に泊まりたい!」と思ってしまったほど素敵な宿で、なぜ誰も泊まっていないのかが不思議でならなかった。
3部屋のうち格子の窓がある気に入った部屋を選ぶと、空いていたことを喜びながらチェックインを済ませた。
宿は70、80歳位のおばあちゃんが営んでいた。穏やかで物静かなために多くは語らないけれど、朝は部屋の前にある長椅子にバナナとお茶をそっと置いといてくれるなど、優しさが伝わってくる。ホイアンには2泊したのだが、滞在中、街歩きに疲れて一休憩しに宿に戻ってくると、静かに微笑んで迎えてくれる。それがまるで自分の家に帰ってきたかのような居心地の良さを作ってくれたのだった。
<【ベトナム旅行レポート】200年前の街並みが残る「ホイアン」 後編 ~Vol.5~ に続く>
※後編ではホイアンの街をご紹介!
ホイアン旧市街
Text & Photo:sKenji
最終更新: