こころのつぶやき Vol.9 ~ウインドサーフィンと検見川の浜と放射線検出について~

sKenji

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ウインドサーフィンの魅力

趣味でウインドサーフィンをしている。

マリンスポーツにあまり関心がない人には、「サーフィン」と勘違いされることがたびたびあるのだけれども、「ウインドサーフィン」はヨットの帆のような「セイル」をサーフィンと同じような「ボード」に取り付けて乗るスポーツである。

サーフィンが「波」に乗るのに対して、ウインドサーフィンは基本的には「風」に乗る。ウインドサーファーはよく略して「ウインド」と呼ぶことが多い。

趣味としてウインドサーフィンを本格的に始めたのは7、8年程前のことだった。それまで、年に数日、体験程度でやったことはあったが、母校の先輩がウインドをやめる際に、道具をもらったことがきっかけで本格的に始めた。

ウインドを始めるとすぐにその魅力に取りつかれた。週末に風が吹けば季節を問わず一年を通して海へ行っていた。大雨はもちろんのこと雪が降る日のほか、クリスマスや大晦日、元旦なども風さえ吹けば海へ行っていた。

ウインドサーフィンの魅力は実際にやってみないとわからないかもしれない。海面を飛ぶように走る疾走感を一度を味わってしまうと、異常なほどに取りつかれてしまう。その様子はまるで依存症のようであり、1ケ月も風が吹かないとウインドに乗りたくてどうしようもなく禁断症状のようなものがでてくる。

最近になって少しはウインドへの熱はおさまってきたものの、それまでは週末が近づくと風の予報が気になって仕方がなかった。週末は基本的にウインドのために極力予定をいれないようにしていた。ときどき週末に別の用事で都内などへ遊びに行っても風が気になって仕方なく、街路樹など周りの木々につい視線がいってしまっていた。そして、樹木の枝が風でざわめきだすともう「心はここにあらず」状態であった。

このやっかいな症状はなにも私だけに限ったことではなく、まわりのウインドサーフィン仲間も同様であった。

ウインドサーフィンの仲間

ウインドサーフィンを終え、道具も片づけ終わるとウインド仲間と海辺で話すのが定番であった。仲間の一人に面倒見のいい方がいて、いつもお菓子やジュースを持ってきてくれ、みんなでそれらを両手に話をしていた。

話の内容は当然、ウインドサーフィンの話が中心であった。走っていて誰々に抜かれただの、風が不安定だったといった話もあれば、ボードやセイルなどの道具についての話もあった。誰かが新しいボードを買って持って来た日には、それを囲んで羨ましそうに見たり、触ったりしながら話が盛り上がる。ウインド終了後に1,2時間ほど話をしていて気づいたら辺りが真っ暗になっていたということも珍しくなかった。

台風の接近など強風が予想され、かつ急を要するような仕事がない場合には、何度か休みをもらって海へ行ったこともあった。するとそんな日は決まって誰かしらウインド仲間が同じようにゲレンデに来ており、「おまえもか!」という感じでお互いにニヤッと笑い、「仕事は?」と聞くのが挨拶がわりであった。休めなかった人も気になって仕方がないらしく、仕事を定時で終わらせて様子を見に来る仲間もいた。

とにかく、みんな異常なほどにのめり込んでいて、ウインドサーフィンがない人生などは考えられないようであった。

ウインド仲間がシェアをした新聞記事

ウインドサーフィンをしていたゲレンデは主に2か所あった。いずれでも東京湾で、一つは千葉市美浜区にある「検見川の浜」。もう一つは検見川の浜から海沿いを車で10分ほど南へ下った場所の「千葉港」である。風向きの関係で夏は検見川の浜、冬は千葉港で乗ることが多かった。

ウインドを始めてから5,6年間は千葉で乗っていたものの昨年、静岡県に引っ越してきた。静岡に来てから千葉のウインド仲間とは、年に1、2回ほど山梨県の本栖湖で落ち合ってキャンプをしながらウインドをするほかは、ときどきFacebookで近況などを見ていた。

先日、そのFacebookにウインド仲間のひとりが、東京湾の放射線量の状況について報じる新聞記事をシェアしていた。記事によると最も放射線量が高かったのは、花見川河口の海底土で1189Bq/kgとのことであった。花見川河口のすぐ東側の海岸には人工の砂浜ある。そこが「検見川の浜」であり、多くのウインドサーファーなどで賑わっている。

ウインドサーフィンゲレンデ・検見川の浜について

検見川の浜は都心部にあるにも関わらず、海沿いにはゆったりとしたサイクリングロードや美しい芝生が敷かれた開放的な公園があり、さながら都会のオアシスのような場所である。

特に気に入っていたのは夕暮れ時であった。浜からは東京タワーやスカイツリーのほか東京の高層ビル群が見えた。さらに天気がいい日には摩天楼の奥に富士山もはっきりと見ることができる。ウインドを終えた後の充実感に浸りながら暮れゆく東京の街を見るのが好きだった。完全に陽が落ちた後の宝石のような摩天楼はいくら見ていても飽きることがなかった。

「検見川の浜」は地元の方はもちろんのこと、ウインドサーファーにとってもかけがえのない場所である。局所的とはいえ、1189Bq/kgという数字が何を意味するのかは正直わからない。ひょっとしたら何かしら健康に影響があるかもしれないし、全くないかもしれない。しかし、いずれにしても休日の憩いの場所で不安を感じながらウインドをするのはどのような思いなのだろうか。今度、千葉のウインドサーフィン仲間に会った時にでも聞いてみたいと思う。

花見川河口

参考WEBサイト

 東京新聞:福島事故放出セシウム 東京湾河口 残る汚染:社会(TOKYO Web)
www.tokyo-np.co.jp  

Text:sKenji

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