防災対策として井戸が見直されているそうです。以下、11月10日付河北新報の記事です。
大規模な断水が続いた東日本大震災を教訓に、東北で生活用水の供給源として井戸が見直されている。地震の揺れに強く、停電で電動ポンプが止まっても手作業でくみ上げられるタイプも多い。備えの一環として新設する人が増えているほか、災害応急用井戸の登録制度を設け、住民に積極的な活用を呼び掛ける自治体がある。
東日本大震災の際、仙台市内の断水は最大で23万戸に及び、ほぼ全域で復旧したのは18日後のことでした。断水した地域には、個人所有の井戸が106基あったそうですが、そのうち58基では所有者以外の地域住民の方たちにも利用されたといいます。震災当時の井戸の利用について、同じく11月10日付河北新報に次のように書いてあります。
青葉区上愛子の町内会長阿達孝治さん(83)も自宅の登録井戸を共助に生かした。震災発生翌日、電気の復旧で電動ポンプが動き始めると、井戸水を2リットル入りペットボトル300本に詰め、軽トラックで近所に配った。
あちこちで感謝され、200本以上がなくなった。自宅に来れば水が手に入ることを伝えると、近隣地区の住民も訪れて水をくんでいった。
(中略)
阿達さんは「町内会の非常用発電機を使えば、停電でも水をくみ上げられる。井戸は断水時に非常に有効だと再認識した」と語る。
東北を訪れた際に、被災された方々と話をする機会がありました。その方たちの話では「一番なくて困ったものは水。何よりも水」ということでした。今日は井戸について調べてみます。
井戸の種類
井戸には竪井戸(たていど)と横井戸があります。横井戸は地面に対して水平方向に掘られている井戸でイランにあるカナートなどが代表的です。井戸というより、地下用水路といった方がイメージがつきやすいかもしれません。山麓の水源地から数十キロメートル離れた集落まで水を供給しています。
一般的に井戸と聞いてイメージするのが、地面に対して垂直方向に掘る竪井戸です。日本にあるほとんどの井戸は竪井戸です。
竪井戸は、浅井戸と深井戸に分けることができます(※)。
大地には、岩盤や粘土質など水を通さない(通しづらい)不透水層と呼ばれる層と、水を通し易い層があります。地下水は不透水層の上に存在します。地下水の層(帯水層)は1層だけとは限らず、何層かに分かれていることもあります。
浅井戸とは地表から最初に現れる不透水層(第一不透水層)より浅い場所にある帯水層から水を汲み上げる井戸のことで、深井戸とは第一不透水層より深い場所にある帯水層から汲み上げる井戸のことです。
浅井戸は比較的、低コストで容易に掘ることできる反面、汚染物質などが流入しやすく、飲料水には適しません。深井戸はコストがかかりますが、その多くが地表の影響を受けづらく良質な水であると言われています。一般家庭の井戸は、ほとんどが浅井戸です。
(※)その他にも分類方法があります。
井戸の掘り方の分類はいくつかあるようですが、直径約1~3mほどの穴を人の手で掘っていく「堀井戸」と呼ばれる方法と、鋼管などを打ち込んだり、ボーリングマシンで掘る「掘抜井戸」に分けることができるようです。現在作られる井戸は、掘抜井戸がほとんどです。
防災としての井戸
井戸を掘る費用は、地域や地層、工法、後処理、井戸に求める水質・水量などで大きく変わってくるようで一概には言えないようです。
水がでるかどうかは場所にもよります。掘れば絶対に出るというわけではありませんが、地域によってはかなり高い確率で出る場所もあるようです。
井戸の掘削は、決して安いものではありませんが、災害時の保険という観点から、災害対策の一つとして検討する価値があるのではないでしょうか。
仙台市、名古屋市、横浜市など、地域によっては一般家庭にある井戸を「災害応急用井戸」として登録してもらい、災害時にはトイレ、清掃などの目的で近所の方も利用できるようにしているそうです。
参考WEBサイト
Text:sKenji
最終更新:
Rinoue125R
震災後、人力で井戸を掘る記事をあちこちで見かけました。手押しポンプの井戸は深さ7メートル以内らしいので、近所にあれば機械掘りを検討する前にDIYで掘ってみるのもいいかもです。調べてみるといろいろ道具も販売されています。
sKenji
情報ありがとうございます。DIYで掘るのもいいですね。安く井戸を掘ることができる上に自分で掘った井戸だと思うとうれしいですよね。個人でも、「打ち抜き井戸」という方法で掘られている方もいます。人力で掘っていく場合は、穴の壁が崩れないように補強しながら掘り進めることが大切みたいですね!