柏崎刈羽原発、「安全」の焦点は福島原発

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東京電力が再稼働を目指す新潟県の柏崎刈羽原子力発電所は、柏崎市の中心部から10kmも離れていない。6・7号機から北東へ直線距離で2kmの場所には海水浴場もある。9kmほど離れた石浜海水浴場は、砂浜の先に磯があるのでシュノーケリングでも人気の場所だ。

2013年9月末、柏崎刈羽原発をめぐって大きな動きがあった。

9月25日(水曜日)午後
東京電力柏崎刈羽原子力発電所6・7号機の安全審査申請について、新潟県の泉田裕彦知事と東電の広瀬直己社長が新潟県庁で再会談。

9月26日(木曜日)午後
新潟県の泉田知事は、フィルター付きベントを実施する際の住民の安全対策について協議を続けることなどを条件に、安全審査申請を認めた。

9月27日(金曜日)午前
東京電力姉川尚史・常務取締役が原子力規制庁を訪れ、安全審査の申請書を提出した。

9月28日(土曜日)未明以降
日経新聞、朝日新聞、時事通信、共同通信、ロイター、ブルームバーグ、産経新聞などのメディアがWEB版で、東電の安全審査申請を受け、10月末に返済期限が迫っていた約800億円(報道によっては約770億円)の借り換えに応じる方針を固めたと伝えた。

 7月5日の前回の会談で物別れして以降、棚上げになっていた柏崎刈羽原発の安全審査が動き出した形となった。

焦点は原発事故後の「現状」と「将来の安全」

東京電力柏崎刈羽原子力発電所の所在地は新潟県柏崎市と刈羽郡刈羽村。5~7号機の主要施設は刈羽村に立地する。しかし、会談で主なテーマとなったのは、福島第一原発事故の検証と、将来起こりうる原発事故に対する具体的な安全策についてだった。

25日の会談を伝える各メディアのニュースが「泉田知事は態度保留。安全審査は難航か」といったストーリーでほぼ横並びだった中、NHKは「NEWS WEB」の記事で泉田知事と広瀬社長のやり取りについて解説した。

 新潟知事「安全対策面で十分納得できず」 NHKニュース
www3.nhk.or.jp  

26日午前4時17分にリリースされたこの記事は、「知事指摘した事故の検証と対応」との見出しを立てて、次のように伝えている。

まず、最初にメルトダウンした1号機への対応の遅れについてです。
事故が起きたおととし3月11日、東京電力は燃料の損傷がどう進むか、シミュレーションを行い、午後5時すぎに、あと1時間で燃料の一部が冷却水から露出すると予測していました。
しかし、その情報を生かせずに翌日まで外からの注水が遅れたことについて、廣瀬社長は、注水の必要性は全員が認識していたが現場の混乱のなか、情報を生かせなかった大きな反省だと答えていました。

新潟知事「安全対策面で十分納得できず」 NHKニュース

注水の必要性、つまり過酷事故=シビアアクシデントの危険を認識しながら、混乱の中、情報を生かすことができなかった。それを東電トップが認めたってことなんだ。

次に最も多くの放射性物質が放出されたとみられる2号機について、泉田知事は、なぜ格納容器が損傷して大量の放射性物質が放出されたのか問いました。
しかし、廣瀬社長は、まだ原因の特定が出来ておらず、考えられる原因に対応する対策を行っていくと答えるにとどまりました。

新潟知事「安全対策面で十分納得できず」 NHKニュース

いまだに事故原因が特定できないことを重ねて認めたってことなんだ。

さらに1号機のあとに事故が深刻化した3号機で、消防車で原子炉に入れた水が配管の途中にある抜け道から漏れ出し、冷却に失敗した可能性がある問題についてただしました。
廣瀬社長は、その可能性があることを認めた上で、柏崎刈羽原発では注水した水が抜け道に漏れ出さないような対策を取っていると説明しました。

新潟知事「安全対策面で十分納得できず」 NHKニュース

注水した水が抜け道に漏れないように具体的にどうするのか、
残念ながら記事からは不明。

泉田知事は、4号機は原子炉建屋が爆発したため、屋上から注水できたが、爆発のあと、建屋の放射線量が高く、中に入れず、そうした命の危険があったり緊急時の被ばく限度を超えるおそれがある場合、民間どうしの契約で対応できるのか問いました。
これに対して廣瀬社長は、法律的にも明確になっていない部分があり、東京電力だけで結論を出せる問題ではなく、国も含めて、危険な現場での作業をどのように行うのか、議論する必要があるという考えを示しました。

新潟知事「安全対策面で十分納得できず」 NHKニュース

シビアアクシデントが発生した際には初動体制が重要と、
原子力学会のパネルディスカッションで東電の人から聞いたけど、
どう動くのか、具体的なプランの立てようすらないのが現実なんだ。

福島と同じ沸騰水型の原発

原子力規制委員会には、現在6原発12基の審査を行っているが、そのすべてが加圧水型と呼ばれるタイプ。15万人以上が避難を余儀なくされるほどの過酷事故を起こした福島第一原発と同じ沸騰水型原発の安全審査は、新基準では初めてとなる。

審査を実施するマンパワーの問題だけでなく、構造がまったく異なる原発の審査であることがタイムスケジュールにどのような影響があるのか未知数だ。

東京電力は新潟県との申し合わせ通り、申請には下記2件の条件について明記しているという。

1 新潟県との安全協定に基づく協議後に修正申請を行うこと
2 今回申請のフィルタベント設備は地元避難計画との整合性を持たせ安全協定に基づく了解が得られない限り使用できない設備であること

 柏崎刈羽原子力発電所6,7号機における新規制基準への適合申請について|東京電力
www.tepco.co.jp  

安全申請を行ったからといって、再稼働が近いとは限らない状況だと思うのだが、報道によると東電と取引している金融機関=銀行団は、安全申請を受けて借金返済の事実上の繰り延べに動こうとしている。この対応は何を評価してのものなのだろうか。

補償を巡って原発災害の被災地で「企業としての東電」はすこぶる評判が悪い。
いわく、
傲慢だ。相手の言い分を何ひとつ聞かない。すべてを事務的に片付けようとする…
そんな東電を「何が何でも」と走らせているのが銀行団だという筋書きが最近の報道からは見えてくる。
期限が迫った借金を何とかしないと会社がつぶれてしまう。原発再稼働は会社存続の前提条件だ、と。

朝日新聞は東電への融資借り換えに応じる銀行団を、「メガバンク3行などの銀行団」と伝えた。メガバンクというと、反社会的勢力と知りながら230件、2億円超の融資を行っていたみずほフィナンシャルグループも含めるのが一般的なのだが…。2013年9月末。これまでオブラートに包まれて、おおぴらに語られることのなかった都合の悪いいろいろなことが、普通の人たちの前にあからさまになってきた。
綻びはどこまで広がっていくのだろうか。

●TEXT:井上良太(ライター)

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