丸川環境大臣が事故原発を視察(2015.11.18)

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東京電力の「写真・動画集」に、「丸川環境大臣の視察写真」が掲載された。撮影・掲載の日時は11月18日。

構内現場視察の様子 (1)
構内現場視察の様子 (1)

photo.tepco.co.jp

構内現場視察の様子 (2)
構内現場視察の様子 (2)

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構内現場視察の様子 (3)
構内現場視察の様子 (3)

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所員へ向けた激励
所員へ向けた激励

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引用した写真のクレジット:「丸川環境大臣の視察写真」掲載日2015年11月18日 撮影日:2015年11月18日 撮影:東京電力株式会社 掲載カテゴリー 状況取り組み その他

発表された写真から読み取れること

今回の視察についてのリリースはないので、写真から読み取れることを記載する。

1枚目の写真は背景に6号機と思われる写真が写っており、かつ斜面の上から視察しているように見えるので、免震重要棟の東側から1号機方向を視察している可能性が考えれる。また東京電力の廣瀬直己社長アテンドしていることも分かる。マスクに付けられたピンク色のフィルターは、汚染度が高い場所で使われるものなので、視察したエリアの放射能濃度が依然として高いことが見て取れる。(今年1月に行われた數土文夫東京電力会長の視察の際には、高台のタンクエリアでも全面マスク着用だったが、今回は半面マスクに防護メガネという装備だったので、線量は高いながらも低下しているということかもしれない)

2枚目の写真が撮影された場所の特定は難しいが、視察には丸川珠代環境大臣のほか井上信治環境副大臣が参加したことが分かる。丸川大臣が事故原発を視察するのは初めてとのことだが、井上大臣は通算6回目と自身のホームページに記していた。

3枚目の写真は丸川大臣に説明する廣瀬社長。場所は不明ながら、事故後の対応を紹介する写真が展示されている。おそらく屋内なのにマスクが着用されている点は要チェック。

4枚目、右は井上副大臣、中央丸川大臣、左の人物は不明(福島民報によると白石徹環境大臣政務官が同行している)。

丸川大臣のマスク姿がネットで大拡散したわけ

全面マスクではないものの、半面を覆うマスクにタイベックの防護服という物々しい大臣の姿はネットで大きな反響を呼んだ。それは、かつてテレビ局のアナウンサーだった頃から話題にされやすいキャラクターだったことや、大臣の重装備うんぬんではなく(これまでにも多くの政治家が、タイベックにマスク姿で福島第一原発を視察している。その中には事故以降の歴代首相や、経済産業大臣当時の小渕優子議員、自民党政調会長の稲田朋美議員、キャロライン・ケネディ米国駐日大使など女性も含まれる)、視察の後に会見で述べた次の言葉によるところが大きいだろう。

「風評被害の払拭というのが福島の復興に欠かせないわけですが、その上でも、汚染水対策とそして廃炉作業というのが、安心に確実に進んでいくことが極めて重要だと思いました」(テレビ朝日のニュース映像から書き起こし)

ネットの反応の多くは、大臣が語った「風評被害」という言葉に対して、「その重装備では逆効果」というスタンスからのツッコミだった。たしかに映像と言葉の落差は大きい。たとえ、安全性が確認されているというおにぎりを大臣が食べるパフォーマンスをテレビのニュースで流したところで、「原発敷地内では重装備でなければならないのが現実なんだろ」と、却って事故原発に対する懸念が増幅されてしまう。

理性的に考えれば、原発事故から4年8カ月以上が経過し、事故原発の危険度が事故当時に比べて低下しているのは明らかだろう。半減期が短めのセシウム134は時間経過とともに大きく減少しているし、原子炉の温度も低いレベルで安定している。それでも、大臣の防護服姿にセンシティブに反応する人が少なくないのは、「政府や東京電力の説明がまったく足りていない」という深刻な現実が存在することを物語っている。

キーワードは「風評被害」に他ならない。これは明白だ。

大臣が事故原発を視察した際に防護服姿だったのは、そこが危険な場所だからだ。風評ではない現実として、放射能リスクが極めて高い場所は現にある。建屋内には人間が入っていけないエリアもある。

しかし、原発から離れた場所では、原発事故が発生しても避難することなく、ずっと人々が暮らし続けている市や町や村がある。原発30キロ圏外、福島県の隣県、さらに関東地方や東北地方…。避難などまったく考えることなく、事故前と変わらぬ暮らしが続けられている土地も広がっている。原発からの距離が離れることでリスクが減少するのは、大雑把にいって間違いではない。

しかしそれはあくまでも大雑把な話であって、原発事故後にはプルームと呼ばれる雲に乗って、半径30キロ圏のはるか遠くまで放射性物質が運ばれたことは今では常識だ。福島県内でも、隣県でも、千葉や東京など関東地方南部でも、30キロ圏の外周と変わらない線量が計測されている場所が少なくない。線量が極めて高いホットスポットも多数見つかっている。

にも関わらず、原発事故に関連する東京電力による補償や政府の対応は、原発周辺のあるエリアで区切られている。事故直後の避難に用いられた同心円での対応こそ改められたものの、北西方向への汚染拡大を考慮しただけのエリア分け対応であることは変わっていない。

さらに不安をかき立てるのは、避難指示解除準備区域と呼ばれる場所で、除染作業後の帰還が推し進められていることだ。「山林の除染はしなくても大丈夫なのか」「除染をしても住居の周辺では線量が再び上昇するのに」といった不安の声が上がっても十分な説明は行われない。

象徴的だったのは今年の7月の高木陽介経済産業副大臣(原子力災害現地対策本部長:衆議院議員/公明党幹事長代理)の発言だ。福島県楢葉町(原発が立地する大熊町の二つ隣の町。事故原発から南に約10数キロほど離れた地域)に対して、「避難指示を9月5日午前0時に解除する」と伝達した後の記者会見で、高木副大臣は「安心は心の問題だと思う」と言い放った。水道水の汚染を心配する住民が少なくないことを受けての発言だったという。

説明しないと言っているに等しい暴論だ。しかし、高木副大臣は内閣改造後も副大臣のままである。これでは政権が高木副大臣の発言を是としていると取られても仕方ない。

政府が指定したエリア、あるいは福島県以外の地域での被害についての説明も放置されたままだ。北関東や首都圏の汚染を懸念する人は少なくないが、線量や健康リスクについての詳細な調査や情報提供は行われないままだ。納得できる説明がなされないことは不安を招く。不安は疑念にも結びつきやすい。

「水道水の安全は心の問題だというけれど、発表されている数値よりも高いんじゃないかしら」「年間20ミリシーベルトという線量で本当に健康に暮らしていけるのだろうか」「行政や東電が発表する情報はどこまで信じていいのか」「事故原発の汚染水データはもしかしたら二重帳簿になっているのではないか」「事故原発でメルトダウンした燃料の一部が再臨界していたらどうしよう」

原子力災害が発生してしまった地域の、将来に向けての危険度は、一般人には判断が難しい。事故原発の中で今何が起きているのかを一般人が目の当たりにすることも不可能だろう。だからこそ信頼関係は欠かせない。丁寧な説明で信頼を醸成していくことが不可欠だ。

事故原発の周辺には危険な場所は確かに存在する。しかしある程度離れれば安全だと考えていい場所もある。原発事故後のリスクは、ある場所、あるいはある物(食品や建築材料など)については現に実害として存在し、そうでない場所や物については風評被害だという、当たり前のコンセンサスを取り戻す必要がある。

ぜんぶひっくるめて福島は危険というのはもちろん暴論だ。それと同じ理由で、原発周辺の一部エリア以外は安全だと言うのであれば、帰還を迫られる住民のみならず、国民が納得できるまで安全性について丁寧に説明しなければならないだろう。「風評」という言葉をエリア、あるいは対象物を指定することもせずに、まるで「国が安全と言っているのだから安全なのだ」と言わんばかりの対応では、「主役」である地域の人々や国民との間の信頼を取り戻す道は遠いと言わざるをえない。説明責任が国や自治体、そして事業者の側にあるのは言うまでもない。

それにしても、政治家の「食べる」パフォーマンスはいつまで続けられるのだろうか。1996年に発生したO157問題で、菅直人厚生大臣(当時)がカイワレ大根を食べるパフォーマンスを行って、さんざんバッシングされたのを遠い記憶の中に思い出す。

たとえ大臣が「食べて」も風評被害は払拭されない。むしろ副作用の方が大きいのではないか。安易なパフォーマンスでイメージに訴えるのではなく、丁寧な説明を積み重ねることで地元や国民との信頼を回復してほしいと願うばかりだ。

【まとめ】今日の東電プレスリリース「ここがポイント」
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