最初に放映されてから49年。半世紀前の作品なのだから、古典と呼んでもいいくらいなのに驚くほど今日的なのがウルトラセブン第八話「狙われた街」。
ウルトラセブンに変身する前のモロボシ・ダン(しかも、ウルトラ警備隊のユニフォームではなく私服)が、宇宙人とちゃぶ台を挟んで対面する超有名なシーンの台詞をご紹介。
メトロン星人
ようこそウルトラセブン。我々は君が来るのを待っていたのだ。
モロボシ・ダン
なに!
メトロン星人
歓迎するぞ。まあなんならアンヌ隊員も呼んだらどうだ。
(ダン、ちゃぶ台の前に座る)
モロボシ・ダン
君たちの計画はすべて暴露された。おとなしく降伏しろ。
メトロン星人
はっはっはっは、我々の実験は十分成功したのさ。
モロボシ・ダン
実験?
メトロン星人
そうだ。赤い結晶体が人類の頭脳を狂わせるのに十分効力があることが分かったのだ。教えてやろう。我々は人類が互いにルールを守り、信頼し合って生きていることに目を付けたのだ。地球を壊滅させるのに暴力をふるう必要はない。人間同士の信頼感をなくすればいい。人間たちは互いに敵視し、傷つけ合い、やがて自滅していく。どうだ、いい考えだろう。
ウルトラセブン第八話「狙われた街」1967
メトロン星人のサイケデリックなまでの色とスタイル、実相寺昭雄監督によるインパクト抜群の演出に目を奪われがちだが、宇宙人との物語を通して描かれているのは人類のいまある状況に他ならない。そしてこのドラマが放映された半世紀前にも、やはり今日的なテーマだったはず…
そう考えると、ド派手なメトロン星人が深い闇からの使者のようにも思えてくる。
そして、エンディングのナレーションがまた効いているのだ。
人間同士の信頼感を利用するとは、恐るべき宇宙人です。でも、ご安心ください。このお話は遠い遠い未来の物語なのです。えっなぜですって? 我々人類はいま、宇宙人に狙われるほどお互いを信頼してはいません。
ウルトラセブン第八話「狙われた街」1967
初回の放映の後にも繰り返し再放送が行われたから、子供の頃にウルトラシリーズを見て育った人は少なくないだろう。戦争を体験した制作者たちが作品に込めたメッセージは、ウルトラシリーズが好きだった人たちの中に必ず届いているはずだ。
いつの間にか私たちは訳知り顔の大人として振る舞ってはいないだろうか——。半世紀前の物語が、こころの深いところに向かって囁きかけてくる。
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