残念なことに「安全総決起大会」の開催に前後して労災事故が多発。人身災害についての臨時会見開催へ
1月20日(火曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている現状を考えます。
雨水処理タンクエリアで、タンク内に転落した元請社員が死亡
※1月19日午前9時10分頃、構内の雨水処理タンクエリアにおいて、雨水受けタンク設置工事を請け負った企業の社員(元請社員)が、タンク天板上部(約10m)から墜落したとの連絡が緊急時対策本部に入った。
その後、救急医療室にて医師の診察を受け、意識はあるものの、動けない状態であった。同日午前10時31分に入退域管理棟救急医療室から救急車にていわき市立総合磐城共立病院へ向かった。
負傷者は、当該タンク水張り試験後のタンク内面の検査をするため、当社社員1名および元請社員2名(うち1名は負傷者)の3名で、検査準備を実施していたが、タンク内部が暗かったことから、タンク内に明かりを取り込むため当該タンク上部へ上がり、タンク天板にあるマンホールの蓋を一人で開けようとした際に、マンホールの蓋とともにタンク内部へ墜落したものと推定。なお、負傷者は安全帯を装備していたが、使用状況については調査中。当該負傷者の身体に放射性物質の付着はない。(既出)
その後、同日午前11時43分に病院へ到着し医師による治療を行っていたが、1月20午前1時22分に死亡が確認された。
◆プレスリリースより
平成27年1月19日午前9時10分頃、当社福島第一原子力発電所構内雨水受けタンク設置工事において、当該タンク水張り試験後にタンク内面を検査するための準備作業を実施していた協力企業社員が、当該タンク天板(約10m)から誤って墜落しました。
当該協力企業社員を福島第一原子力発電所の入退域管理棟救急医療室に搬送後、同日午前10時31分、いわき市立総合磐城共立病院へ搬送し、医師による治療を行っておりましたが、1月20日午前1時22分、医師により死亡が確認されました。
なお、当該協力企業社員の身体に放射性物質の付着はありません。
亡くなられた方には心からご冥福をお祈り申し上げますとともに、ご遺族の皆さまには心からお悔やみ申し上げます。
当社といたしましては、今回の災害の発生原因について詳細に調査するとともに、再発防止に努めてまいります。
福島第一原子力発電所構内雨水受けタンク設置工事における当該タンク天板からの墜落による協力企業社員の死亡について|東京電力 平成27年1月20日
1.概要
発生日時:平成27年1月19日 9時6分頃
発生場所:雨水受けタンクNo.2(No.4地下貯水槽エリア東側)
発生状況:
建設中のJタンクエリア用雨水受けタンクNo.2の内面防水検査を行うため、当社社員1名及び当該タンクの設置工事を請け負った企業の社員(元請社員)2名でタンク側面下部にあるマンホールよりタンク内部に入ったが、タンク内が暗かったことからタンク天板部より太陽光を入れるため、元請社員1名(被災者)がタンク上部へ昇り、天板部にあるマンホールの蓋を動かしたところ、被災者がマンホールの蓋(重さ:約51kg)とともにタンク内へ転落(高さ:約10m)した。
時系列
<1/19>
9:06頃 災害発生
9:43 救急医療室(ER)へ到着(意識あり、汚染なし)
10:08 ドクターヘリ要請
※悪天候でヘリが飛行できないため救急車による搬送に変更
10:31 救急車にていわき市立総合磐城共立病院へ搬送開始
11:43 救急車がいわき市立総合磐城共立病院へ到着
<1/20>
1:22 元請社員(被災者)の死亡を確認
限られた報告内容からも数々の不備が見えてくる。
◆タンク内の検査を行うのに照明設備や懐中電灯を携行しなかったこと
いったい何をしにタンクまで行ったのか。まったく考えらない
(太陽高度が低い朝に、太陽光で検査を行おうとしたことは検査精度上も疑問)
◆高さ10メートルのタンク天板に一人で上がらせたこと
・当日の最低気温はマイナス4.0℃、事故発生時の9時00分~10分でも0.0℃(近隣の浪江での気象庁観測データ)で、氷によるスリップの危険があった
・重さ約51kgのマンホールの蓋(角形)を一人で取り外させた
・タンクに一人で上がらせたため安全帯の着用を確認できなかった
照明器具を使ってさえいれば、タンク上に上がることもなく、当然、事故も起きなかったはずだ。
また、転落事故との直接の関連は薄いが、タンクのような閉鎖空間に入る場合には、酸素濃度測定が不可欠である。高所作業での安全管理も含めて、もっとも初歩的な安全衛生講習でも学習しているはずのことがなぜ行われなかったのか。
このような軽率な安全管理によって人の命が失われたことは、悔やまれてならない。
犠牲になられた方のご冥福を心よりお祈りします。
追記:
時事通信の報道によると、亡くなられたのは安藤ハザマ(正式には安藤・間)の作業員、釣幸雄さん(55歳)とのこと。間組は原発事故直後、関連企業の多くが撤退する中、率先して事故現場での作業に取り組んだ企業だと聞いている。公に尽くす社風をもつ企業の方が犠牲になられたことに、重ねてお悔やみを申し上げます。
福島第二原発で、協力企業作業員の死亡
福島第二原発でも協力企業作業員が死亡する労働災害が発生した。
場所は1・2号機廃棄物処理建屋5階の管理区域内。濃縮器点検点検の準備作業で、点検用の治具に頭部を挟まれた模様と報告されている。
1.概要
発生日時:平成27年1月20日 午前9時30分頃
発生場所:1、2号機廃棄物処理建屋5階(管理区域)
発生状況:
1、2号機廃棄物処理建屋5階(管理区域)において、濃縮器点検に向けた準備作業として、協力企業作業員が同点検で使用する点検台(直方形)に固定してある点検治具(円筒形、ボルト固定)のボルトを緩めたところ、当該の治具が回転し頭部を挟まれた模様。発生時、当該作業員に意識はなかった(頭部から出血あり)。
時系列
午前9時頃 事務所から現場へ出発
午前9時30分頃 災害発生
午前9時37分頃 救急車要請
午前9時42分頃 応急処置室移動
午前9時52分頃 双葉消防本部よりドクターヘリを要請したと連絡あり
午前10時48分頃 ドクターヘリ いわき市立総合磐城共立病院へ向けて
出発
午前11時20分頃 病院到着
午前11時57分 医師による死亡確認
(中略)
3.災害発生後の対応
災害発生を受けて、全ての作業を中止し当所所員および協力企業へ以下の内容を
周知した。
・基本動作の徹底
・作業手順の遵守
・作業員一人一人が気を引き締めること
福島第二原子力発電所1、2号機廃棄物処理建屋(管理区域)における協力企業作業員の死亡について|東京電力 平成27年1月20日
なぜ治具が回転したのか、治具の回転によってなぜ頭を挟まれるような事態に至ったのかがまったく不明だ。新たに導入された治具ではないと思われるから、「回転」が通常ではありえないことだったのかもしれない。もし頻繁に回転するような治具だったとすれば、安全な取り扱いのための手順が整備されていたのかという問題も出てくる。治具そのものの改善の必要性もあったかもしれない。
また、発生状況にある「頭部を挟まれた模様」という表現から、亡くなった作業員はひとりで作業していたと考えられる。死亡事故につながる恐れのある機器の取り扱いとして適切だったのだろうか。
犠牲になられた方のご冥福を心よりお祈りします。
人身災害についての臨時会見開催
本日(1月20日)午後3時から、当社原子力発電所(福島第一・福島第二・柏崎刈羽原子力発電所)における人身災害について、本店と福島と新潟を中継した臨時会見を開催し、ご説明させていただきます。
<臨時会見の開催案内>
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・開催日時 平成27年1月20日(火)午後3時~
・開催場所 東京会場:本店本館1階会見室
(午後2時から受付開始)
福島Jヴィレッジ会場:Jヴィレッジ内「アルパインローズ」
(午後2時30分から受付開始)
福島会場:千代田生命福島ビル2階会議室
(午後2時30分から受付開始)
新潟会場:柏崎刈羽原子力発電所 ビジターズハウス2階大会議室
(午後2時30分から受付開始)
・会見者 東京会場:原子力・立地本部長 姉川尚史(あねがわたかふみ)
福島Jヴィレッジ会場:
福島復興本社代表 石崎芳行(いしざきよしゆき)
福島第一原子力発電所長 小野明(おのあきら)
福島第二原子力発電所長 設楽親(したらちかし)
新潟会場:柏崎刈羽原子力発電所長 横村忠幸(よこむらただゆき)
◆「安全総決起大会」の開催に前後して労災事故が多発
第一原発で1月15日に元請け企業42社約170人と東電社員170人が参加した「安全総決起大会」に前後して、発電所内の安全管理が杜撰であると考えざるを得ない災害が頻発している。安全の確保は最終的には企業トップの責務であることを指摘したい。
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