町にハロウィンの飾り付けがあふれるようになると思い出してしまいます。体が凍えて固まるような恐ろしさを。
ルイジアナ州バトンルージュで16歳の交換留学生、服部剛丈(はっとりよしひろ)さんが射殺されたのは、1992年10月17日のことでした。ハロウィンパーティが行わる家を間違えた服部さんに対して、家の主ロドニー・ピアーズ氏がFreeze!と警告。それでも服部さんが近づこうとしたため、ピアーズ氏は服部さんにマグナム拳銃を発射したとされています。
この事件に関しては、アメリカが銃社会であることが背景にあったと指摘されることがしばしばです。しかし、この事件は決して「社会」の問題ではないはずです。パーティが行われている家だと勘違いしたということは、服部さんは撃たれるその時まで相手とコミュニケーションをとろうとしていたことは間違いないでしょう。それに対してピアーズ氏は、服部さんが働きかけたコミュニケーションを発砲という行為で一方的に、そして永遠に断ち切ったのです。
仮に服部さんを侵入者だと判断し、正当防衛のために撃ったのだとしても、至近距離から、相手に死をもたらすような撃ち方をする必要はなかったはずです。
この事件は、人間と人間のコミュニケーションが殺人という暴力によって、断ち切られたという点で、人類すべての人に関わる重大な問題です。人道に対する犯罪です。このような犯罪が起きることは、人類の文明や人々の生き方に、どうしようもない欠陥があることを示しているようにも思えます。しかも許されるべきではない暴力は、いまも世界中に広がっているのです。もちろん日本でもそうです。
私たちは新しい文明を作っていかなければならない時期に差し掛かっているのかもしれません。暴力を許さない新しい文明を。
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