【シリーズ・この人に聞く!第196回】俳優・タレント サヘル・ローズさん

kodonara

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――顔と個人名を晒すことは勇気もいるでしょうけれど、とても応援したいです。

ネガティブな経験でも、これがあったからこそ今があったし悪い経験ではなかった。悲観的になると前に進めない。マイナスをどう変換できるかで人間は生き方をいくらでも変えられます。どんな経験も観方の向きをちょっと変えるだけで、すごく美しいものに変わる。基本的に痛みを知る人間は強い。痛みは弱さではなく、弱さもあるから強さもある。世間から冷たい言葉や視線を向けられてきているから、施設出身であることは皆伏せたがります。でも映画に出演してくれた9人は、自分たちが施設出身であることを堂々と伝えたいと言っています。今年の夏には映画として送り出します。このような時代に少しでも優しさを届けたい。

――それはなかなかできそうでできないことです。意味のある作品になりますね。

撮る側も、出る側も施設出身は今までにないことです。私は当事者で、お芝居はしていない。彼らのお芝居はメンタルケアが必要でした。お芝居は自分の心を癒やせるし、私はオフモードに入れる瞬間がお芝居の本番中です。もちろん緊張はしますが、その瞬間はサヘル・ローズという任務を負わなくていい。生きる使命を負っている状態で、荷物のおろし方をわからないまま36歳を迎えているので…。

――サヘルさんのモチベーション、将来なりたいイメージはありますか?

自分のためだったら目を覚まさなくていい日が来てほしい。ある程度ロールモデルができて、お母さんがこの世にいなくなったら…。生きることに対して執着してないんです。心が何度も死んでいる経験をしているので。今一生懸命動いているのは必要としてくれている人たちがいるから。それがないと自分が生きられないこともわかるので、必要としてくれる難民キャンプや、子どもたちに会う旅、イラクの旅で出会った家族サポートなど、誰かと関わることで私が子どもたちを最後まで守り抜くんだというエネルギーだけで生きています。自分のために生きたことはないかもしれません。

社会と向き合う前に自分が幸せであること

――ご自身の願望より、目の前で困っている子を何とかしたいという使命感があるのですね。

おこがましいですが関わった人々を癒やしたい。それが生きている意味かな。同時に、人生でいろんなことを経験させて頂いているのは、神様が私に何かを経験させているのかな。人間という生き物を実験しながら生きている感じです。いいことも悪いこともたくさんあります。苦しんだ感情も大切に生きてきた。苦しみから見つけた言葉をこの本に書いて、次の世代にメッセージとして伝えています。

――習い事や教育を考える親に何かアドバイスをいただけますか?

子どもにこうしてほしい、こうなってほしいより、何がしたい?どうなりたい?と聞いてあげてほしい。選択肢を与えてあげてください。本当にその子が何をしたいのか?結果を恐れず経験させて、途中でやめても叱らずに、本人に主張をさせてあげて。失敗するからこそ、この道ではなかったと学べるし、うんと迷子にさせてあげて。その子が好きなことを見つけられるまで後ろから見ていて、その子が這い上がれるように親も弱さを見せてあげてほしい。

子どもは親になんて言えばいいかわからず、一生懸命いろんな合図を出します。お腹が痛い…というのも何回か続くことに意味がある。怖くてSOSが言えないんです。

――信号を親がキャッチしなくてはですね。では、この先の時代を生き抜くためのお言葉を。

自分の心に「私は幸せなのか?」と問いかけてみて。一番置いてけぼりにしているのは自分自身。自分の心がキャパオーバーになっていないか。心の悲鳴に気づけるか。丁寧に自分とまず向き合って、社会と向き合う前に、自分がまず穏やかで幸せか?心の声に気づいてほしい。 親子関係でうまくいかない時。たとえば子どもが不登校になると親は自分を責めます。他の子ができているのになぜうちの子は…と比較したり。他人にどう見られるのかを気にして生きているわけじゃない。自分自身がまずどう生きたいか?人の目を気にする以前に、自分の目を大事にしてほしい。どんな人間も欠けているからこそ、その人の良さがあります。欠点は一番の良さ。弱さが長所になる。そういうふうに自分を好きになる人が増える社会になるといいなと思います。

――めちゃめちゃ素敵なサヘルさんなので、恋人と「一緒に暮らそう!」的なお話は?

やるべきことがたくさんあるので、今はそこに意識が向きません。養母は大切な存在ですが、私は家族を知らないので自分の家族をイメージすることができない。0歳から5歳くらいまで子どもは愛情を注がれているか?で後々すごく変わります。私は7歳まで家族がいない状態で育って、家族を実感できていません。もちろん大切だと思える人はいますが。でも今は映画を仕上げることに集中したい。ロールモデルが社会に出ていくのを見届けたい。お母さんが生きている間は全力でお母さんに向き合いたい。私は不器用なんですね。

編集後記

――ありがとうございました!
心にたくさんの痛みを経験してきたからこそ届けられる言葉の数々。どのメッセージも心震えます。Twitterの投稿のように短いセンテンスで読みやすく気持ちの温度まで伝わってくる本。今年送り出す映画も早く観たいです!サヘルさんの活動をこれからも力を込めて応援しています。

2022年3月リモートによる取材・文/マザール あべみちこ

活動インフォメーション

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サヘル・ローズ 著
講談社
定価 1,430円(税込)
発売日 2020/1/20

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www.kodomononaraigoto.net  

このページは株式会社ジェーピーツーワンが運営する「子供の習い事.net 『シリーズこの人に聞く!第196回』」から転載しています。

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