【シリーズ・この人に聞く!第157回】女優 鳴神綾香さん

kodonara

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もし自分が、あるいは大切な人ががんになったら…?2月2日公開のドキュメンタリー映画「がんになる前に知っておくこと」のナビゲーター役として登場する鳴神さん。15名の識者との対話からがんのイメージがガラリと変わったとか。作品を通しての気づき、これからの意気込みについてお聞きしました。

鳴神 綾香(なるかみ あやか)

女優。映画・ドラマ・CM・舞台などで幅広く活躍中。特技はピアノと剣道。主な出演作に映画「月光」、映画「ひかりのたび」。

 鳴神綾香(@ayakanarukami)さん | Twitter
twitter.com  

ふたりに一人が、がんになる時代に。

――試写でこの映画を観るまで、私自身は健康診断毎年オールAで健康そのものだからあんまり関係ないかな~なんて思っていたのですが、明日は我が身。誰もがんにならないという確信は持てない時代だとよくわかりました。鳴神さんはまだお若いですが、乳がん検診で疑いありと診断されたのはいつ頃でしたか?

1年近くかけて15名の識者へ取材し毎回学びがあった。

1年近くかけて15名の識者へ取材し毎回学びがあった。

今から2年前のことです。もともと生理痛がきつくて産婦人科にお薬を処方してもらっていたのですが、そのクリニックに乳がん検診案内のポスターがあって、なんとなくやってみようかな…と思って受けた。そうしたらまさかの「ん?しこりがあるね」と言われて。触診ではわからなかったのですが、超音波で何かあるとわかって。結果が出るまでの1週間。ドキドキして頭の中は真っ白に。家族や友達にも「どうしよう。こんなふうにお医者さんに言われた」と相談。ネット検索をしてもネガティブな情報ばかり見てしまって…。

――結果として、良性のしこりでがんではなかったということでよかったですが、がんについて知る機会になったのですね。

私はまだ結婚も妊娠もしていないので、もし今、がんになったらこの先どうなるんだろう?という不安いっぱいで。がんになっても妊娠はできるのかな?とか、その時初めて自分の将来とがんとの関係を深く考えるようになりました。その経験から1年ほど経って、今回の映画でナビゲーター役を探していると聞いて、これを通じてもっとがんについて知ることができるのかな?と思ってオーディションを受けました。

――今回の映画は難しいテーマにもかかわらず、鳴神さんがナビゲーターとして介在されていたのがよかったと思います。私たちと同じ目線で識者の皆さんにお話しを聞いているせいかわかりやすくて、価値ある情報ばかりでした。

私も率直に「どうやったらがんにならないのですか?」と先生にお聞きしてみたり。なかでもご自身が乳がんを患いながら医師としてバリバリ現役で仕事もされている唐澤先生のお話は衝撃でした。乳がんの家系だから自分もなると予想されていたこと。唐澤先生をはじめ他の先生方も皆さんおっしゃっていた共通の言葉は、QOLは「生活の質」ではなく「人生の質」であること。治療において「生存期間」よりも、患者さんの人生の目的や生き甲斐をどれだけ達成できるかを考えて治療方法を選んでいくべき…と。唐澤先生は冷静にご自身のことを分析されていて、今はウィッグをつけていることも正直にお話しされていてすごいなぁ、と。

――パワーをもっている先生や支援をしている方、体験者の方など15名に取材をされて、それぞれの立場からがんになる前に知っておいたほうがよいことを聞き出しています。取材の時もかなりパワーが必要だったのではないですか?

毎回発見があって、学びが多かったです。最初インタビューする前は「がんは怖い」とか重いイメージで「これは聞いちゃいけないかな」とか、いろいろ考えすぎていました。実際会ってお話しを伺うと、皆さん堂々とされていましたし、がんは私の一部でしかないと定義されていました。がんを治療しながら自分の人生を自分らしく生きているのが素晴らしいな、と思いました。お医者さんも患者さんをサポートしているし、病院以外にも頼れる場所があるのがわかりました。がんは特別な病でなく、2人に1人がなる時代。誰であっても明日はわからないからこそ、こうした情報は多くの方に知ってほしいと思います。

ピアノやバレエは今も役にたっている。

――鳴神さんは映画の中でもピアノを演奏するシーンが印象的に挿入されていますが、ピアノは幼少期から習っていらした?

母はピアノ講師。弟たちもピアノを弾いた。

母はピアノ講師。弟たちもピアノを弾いた。

ピアノは3歳から始めました。母がピアノ講師をしておりまして、その関係でずっとピアノを弾いてきて、大学は武蔵野音楽大学へ進学。実家は和歌山で、小さな頃からお芝居の仕事をしたいなーと夢見ていて、早く和歌山を出たくて…(笑)憧れの東京でした。最初は家族に反対されましたが、音大へ行くなら東京へ行ってもいい…という条件で、大学入学と同時に上京しました。卒業後、お芝居のスクールへ入って23歳から女優の道へ進みましたが、大学時代からモデルをしたりしながら過ごしてきました。音楽の先生になる目標は最初からなくて、映像の世界で作曲やピアノ演奏をしたり、演じたりしたいとずっと思っていました。

――念願叶っての今なのですね。お母様はピアノの先生!音楽が生活の中にあったのですね。ごきょうだいはいらっしゃいましたか?

弟が習っていた剣道にも進んで通った。

弟が習っていた剣道にも進んで通った。

2つ下の弟と、6つ下の弟の三人兄弟です。私は割とひとりで何かやっていることが多くて、下の弟ふたりはつるんでいましたね。でも3人今も仲良しです。小学校の頃から人前で表現すること、たとえばピアノの発表会、ミュージカル、歌を唄うこと…が好きでした。家でピアノの教室を母がやっていたので、音楽が常に流れていました。ピアノは私には合っていたし、母の影響は大きかったです。

――女優さんになるための努力は、今もなお研鑽を重ねていらっしゃるかもしれませんが、どのようなことをされてきましたか?

人前に出るのが好きな一方で緊張するので、リラックスして自分をいつでも表現できるように今も努力しています。それと、東京に知り合いが誰もいなくて上京したので、そこから自分がやりたいことができるまで結構時間が掛かりました。いろんな人との出会いを大切にしています。東京には音楽だけでなく、文化や芸術でみるべきものが集まっている。人も、自分が理想とするような芸人さんや俳優さんがたくさんいて、そういう方と話すのは刺激になります。

――目標にしている女優さん、こういう存在になりたい!という人はいますか?

安藤サクラさん。ナチュラルで、おもしろいです。日常を大切にしている感じ、飾っていなくて素敵だなと思います。それから、大竹しのぶさんはスゴイと思います。以前ドキュメンタリーをみた時に、スイッチのONとOFFがすごくて。本番前のギリギリまでいつものほんわかした雰囲気で飴食べたりリラックスされていたのに、本番のブザーが鳴った途端、歩き方も目の色も変わって役に成りきって舞台へ…。こんなに一瞬で変われるんだ!と。私は本番までかなり前から集中しないとならないので、驚きました。

簡単にあきらめない、しぶとさを習得。

――ピアノ以外に習い事は何かされていましたか?

人前で歌うことも好きだった小学生時代。

人前で歌うことも好きだった小学生時代。

バレエを5歳から9歳まで、剣道を小4から小6まで、合唱団は小4から中2までやっていましたね。私は好奇心旺盛で、体を動かすのが好きで、やってみたいことはやらせてもらっていました。昔から負けず嫌いなので、コンクールやオーディションなど勝負事は燃えました。音楽に合わせて何かするのがすごく好きでした。弟も剣道やピアノをやっていて、下の弟は剣道で大学も推薦入学でした。

――たくさんいろんなことさせてもらえて幸せな環境でしたね。今、何か注目しているニュースはありますか?

YouTubeをよく観ています。それで生計立てている人がいるなんてスゴイですよね。いろんな国を旅するYouTuberのはおもしろくて、ひとりでその国に行って現状をダイレクトに発信して、そのままを写している。レポートしている内容もリアルでおもしろい。チャンネル登録しているYouTuberの動画は必ずチェックしています。

――うちの大学生の息子もそうですが…鳴神さんくらいの世代からもうガラッとテレビを観なくなっているとは…私も全然テレビ観ませんが(笑)メディアが完璧に入れ替わりました。では、習い事を考える親にアドバイスするとしたら?

私は習い事で頭を使ったり、体を動かしてきたことが、今でも役に立っているし思い出に残っています。子どもが興味あることを聞きだして、その子に合うような習い事をさせるのはすごく良いこと。いろんなチャレンジをすることで、良い影響がある。うちの親は三人三様、子どもの個性を伸ばす教育をしてくれました。私は小・中・高と習ってきたピアノの先生にビシビシ叱られてきました。そのおかげで簡単にあきらめない癖もついた。うたれ強さには自信があるし、しぶといと言われます。それも習い事で修得できたことです。

――映画「がんになる前に知っておくこと」の最後の場面で、美しくピアノを演奏するシーンが印象的ですが、映画について最後に一言お願いします。

最後に弾いているのは、バッハのゴルトベルク変奏曲という曲です。やさしく繊細なメロディで、監督が提案してくださって、よくよく聴いてみるとこの作品に合っていました。私と同世代の方にとっても、わかりやすい映画だと思います。がんは暗いとか怖いわけでない。もし何かあった時でも、いろいろな人や場所のサポートがあることを知っておくと心強く感じられるはずですから。

編集後記

――ありがとうございました! 健康だけが取り柄と言っても、それが永遠に続くのかはわかりません。明日は我が身のがん。見終わると力が湧いてくるような作品です。キレイな鳴神さんの心がそのままスクリーンに映っているような、最後の演奏シーンが心に沁みました。女優さんとしても益々楽しみです。

2019年1月取材・文/マザール あべみちこ

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医師と看護師、経験者との15の対話(ドキュメンタリー)
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 【ドキュメンタリー映画】がんになる前に知っておくこと
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日本人の2人に1人が「がん」になると言われている時代に、「がん」をおそれるのではなく、知ることから始めたい。がんのこと、自分のこと、治療のこと、これからの人生のこと。

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