御殿場市、裾野市と富士山の周辺を回ったあとは、南方面に戻ってきました。今回見学したのは、駿東郡長泉町にある「文化財展示館」です。
長泉の歴史や民俗に関する資料を展示しています。常設展示では、3万2千年以上前の旧石器時代の石器から江戸時代の古文書までを展示し、町の歴史を見ることができます。ふれるコーナーでは、土器などをさわることができます。
JR御殿場線の下土狩駅から徒歩1分。コミュニティながいずみの本館1階部分が町民図書館です。隣が駐車場になっており、その屋上にあるのがこちらの展示施設。展示室の隣は自習室になっており、とても静かな館内。
展示室に入ると中央には土器が置かれ、それらを囲むようにして、旧石器時代から、縄文、弥生、古墳、飛鳥、奈良・・・と各時代の展示品と解説が並んでいます。
それぞれの時代の長泉
引用で触れているように、この長泉という地は3万年以上も前から人々の暮らしの場として形成されてきました。長泉の地形は縦長であり、南と北それぞれに別の時代の代表的な遺構が残されています。
旧石器・縄文時代では、長泉町の北にあたる地区で見つかっている遺跡が多数。
一方で古墳時代のものは長泉町の南の地区に残されています。
古墳時代後期には「土狩五百塚」と言われたほどの、多くの古墳が造られていたのだそうです。このころの古墳は、横穴式石室というつくりのものです。(丘の上部にある石室を上から閉じるため、一度しか出入りできない竪穴式とは違って何度も横から出入りできる)
古墳の形状がわかるぐらい今も残されているのは、町内に2か所。(他にも古墳はあるのですが、大半が削られていたり、住宅で隠れてしまい見学不可だったりするのです。)
長泉町立南小学校の付近にある「麦原塚古墳」と「原分古墳」です。特に「原分古墳」は県東部最大級の大きさという貴重な遺構。館内に展示されている出土品も歴史を知る上で重要ですが、実際に行ってみて古墳そのものを確認したほうがさらに深く知ることができそうです。
奈良時代の遺跡も南地区が中心。的場遺跡(現:下土狩)、天神原遺跡(現:竹原)がありました。この時代は人たちは、竪穴式住居(地面を方形に掘りくぼめたところに葦などで上屋をかけた住井のこと)に暮らしており、家の壁には、粘土で作ったかまどもあったようです。
中世に進むと、今度は北側の地区に遺構が多く残されています。
築上年代ははっきりしないものの、長泉で築いたとされる長久保城(現在の長泉町立北小学校周辺)。現在はほとんどがまちの開発によって消えてしまいましたが、かつては本丸・二の丸・三の丸の他、掘りや土塁も整った城郭であったことがわかりました。
悲劇の滝
長泉町の滝と言えば「鮎壺の滝」。
県外から訪れる人もいるほど知名度が高い滝ですが、同じ黄瀬川を流れ、歴史上において重要な2つの滝が町内にあります。
それは、先ほどご紹介した町内の北側に築城されていた「長久保城」にまつわる滝。「鎧ヶ淵」と「牛ヶ淵」です。
【鎧ヶ淵】
長久保城をめぐって幾多の武士が戦った高橋で合戦で、血に染まった鎧や刀を洗ったり、激しい合戦で使えなくなった鎧を沈めた淵といわれています。また、合戦で傷つき敵に追われた武者が馬をこの淵に乗り入れ自ら命を絶ったという話も伝わっています。
長泉歴史探検マップ
【牛ヶ淵】
ある豪雨の夜、長久保城が敵軍に攻撃されて城兵の善戦もむなしく落城してしまいました。城の姫は数人の兵士や乳母に守られ豪雨の中を牛車に乗ってそっと城を抜け出しましたが、濁流渦巻くこの淵に、牛車もろとも転落し、命を落としてしまったという言い伝えがあります。
長泉歴史探検マップ
言い伝えを知らなければ、よく見るただの小さな滝。ですが、知ることでこれまでとは見方が変わりました。
これらの滝は、普段から観る機会すらほとんどなかったのですが、自分が普段見かけたり、触れているものをきっかけにして、町の歴史について深堀りしてみるのも良いかもしれません。
この「地域の歴史を知る休日」では、展示館、資料館など展示物が集約されている施設を中心に回ってきましたが、今後はもう少し範囲を広げて、点在しているまちの遺構や自然スポットにも行ってみたいと思います。
最終更新:
baikinman
長泉に古墳があるなんて知りませんでした。
3万年以上も前から人の営みがあったと思うと、なんだか不思議な気持ちになります。
akaheru
普段何気なく見てたスポットもその歴史をしることで見え方が全く違ってくるってこと、ありますね!
引き続き渋くも味のあるスポット情報を楽しみにしています。
cha_chan
歴史を知りに、かなりアクティブに近隣を巡っていますね。自分は、高校時代に考古学者を夢見ていました。こうやって、土器がたくさん並んでいると当時の記憶が蘇って血が騒ぎます(笑)自然スポットもいいですね!
pamapama
狩野川沿いは修善寺から沼津まではほぼ歩いたり走ったりしたことがあるので、次が黄瀬川沿いを狙っています。黄瀬川だと全くの川沿いを歩けるのは下流に限られるかもしれませんが、道路からなんとなく見えるぐらいなら結構上流から行けるのではないかと。