7年後の、ラジオに向かってぶん投げた罵声

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大船渡の友人のクルマに乗っていたとき、たまたま大船渡がラジオで取り上げられていた。日曜日は3.11。この1週間はテレビでもラジオでも新聞でも、思い出したかのように震災のことが伝えられる。

年に何度も東北の被災地を訪れるというラジオパーソナリティが被災地でがんばる人をインタビューするという趣向の全国ネットの番組だった。

インタビューされていなのは、友人ではないまでも知ってる人だったので、うんうん、そうだっぺななどとハンドルを握る大船渡の友人ともども、まるでラジオの向こうの人たちと合わせて4人で喋りっこしてるような感じになった。いい感じだった。3.11を迎える気持ちに前向きなものがプラスされるような感じだった。

「ところで最近の被災地の様子なんですが、昨年、お隣の陸前高田を訪ねると、大きなショッピングモールがオープンしていて、復興が進んでいるなと感じたんですが」(みたいな)

「そうですね、昨年あたりからは高田にも大船渡にも立派なショッピングモールができて、まちの雰囲気が変わってきたと思います」(みたいな)

眼が点、というものを久しぶりに経験した。一瞬言葉が出なかった。ハンドルを握る友人が「ケッ!」と吐き出すのと同時に、同乗者は「ショッピングモール?」と語尾を引っぱり上げた。

「建物の端から端まで、ばあちゃんが手押し車を押してっても3分くらい。スキップして行って1分かかんねえべし。中学生の孫っこにダッシュさせれば30秒切るっぺ。ほんなのがショッピングモールってのか?」

「正面の入口から裏口まで歩き抜ける間に、平日の午後なんかだったら10人くらいしかお客さんとすれ違わないことだってあるのに、あれが大きくて立派なショッピングモールだって言うんかいな」

呆れ果てた。そして空恐ろしくなった。

実態を知らない人が、ラジオからの音声で「かさ上げされた土地にショッピングモール」と言われれば、復興してんだなという印象しか抱くまい。

前情報なしで「かさ上げされた土地にショッピングモール」と言われて、「いやいや復興はまだまだこれからだ」なんて思う人がいたら、よほどの慧眼の持ち主か、あるいはひねくれ者だろう。

つまり、「ショッピングモール」という言葉ひとつで、被災地では復興が進んでいるという誤った印象が広められる。そして定着してしまう。

こんな報道、百害あって一利無し、迷惑だ。と多くの人が思ってる。

「ショッピングモール」って言われて、どんな施設を想像する? ららぽーと? かなり古いか。モザイクタウン? これも古いか。でもさ、都会の人だったら、きっと近くにある本当に大きなモールを想像するよな。石巻の人が聞いたって、ほう陸前高田にもAEON MALLができたんだって誤解するべ。体育館くらいの広さのスーパーがあって、専門店も百軒くらい入ってて、東京のブランドだって手に入るし、シネコンまでついた巨大なモールがってな。

田舎町で平均的なサイズのスーパーマーケットと衣料品チェーン店、ドラッグストアの3つがコア店舗で、そこに図書館と10軒くらい専門店が合体。それが施設のすべて、だなんて誰も思うまい。あるいはテレビとか新聞が伝えたとしても、本質的には同じことだろう。「あれから7年。現実を掘り下げる」といった方向性の番組でない限りは。

そもそも「あれら」ができた後、どれだけまちが変化した? この先、このまちはどうなっていくのだろうか? ってことが大切なんだ。たしかに「あれら」ができて、人がまちに集まる機会はできるようになった。イベントなんかがあるときは、大勢の人が集まる(こともある)。でも、住宅地から切り離された場所の商業施設ってそもそも何なんだ。高齢者の買い物はどうする。商業施設の周辺でいくつかの店舗が再開したり、再開に向けた準備を進めているが、なぜかほとんど飲食ばかり。それも夜の飲み屋に偏っている。遠方からのお客さんをお招きできる食事の場はほとんどない。

日曜日は3.11。この1週間はテレビでもラジオでも新聞でも、これまで忘れてたかのように震災と震災後のことが伝えられる。

これまで忘れていたことの償いの意識か何かしらないが、勇み足して「復興は進んでいます」なんて口走らないでほしい。去年できた施設がショッピングモールだなんてウソを広めないでください。

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