「こどもは大人、大人もこども」陸前高田のこどもの日

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5月5日、こどもの日。陸前高田のかさ上げ地にオープンして1週間あまりのアバッセたかたでは、朝9時の開店早々、入口近くの広場にカラフルなエレキギターが並んだ。ん、エレキギター??

餅まきという名のお菓子まき

広場(正式にはパブリックスペースという名称)には「餅まき」を告知するポップ。餅まき文化は日本各地にあるが、東北ではとくに、何かあれば餅をまくという習慣が顕著だ。こどもの日だからって餅をまくところは、そう多くはないだろう。

しかも、この日この場所で撒かれるのは餅ではなくてお菓子。言葉の正確を期するなら「お菓子まき」というべきところなのに「餅まき」と言い張るところに、「餅まき王国・東北」の矜持がうかがえる。

餅まきのために用意されたお菓子を見せてもらって、さらに驚いた。お菓子は何個かまとめて小袋に入れられているのではなく、すべて「バラ」。うまい棒もカントリーマームもバラでまかれるのだという。(お菓子まき、いな餅まき会場の騒然たる状況が目に浮かぶ)

しかし、餅まきスタートを待つ子どもたちはとてもお行儀がいいのだ。餅のまき手が登壇する仮設ステージの前でちゃんと座って待っている。餅まきに参加できるのは小学生以下の子どもたちのみ。遠巻きに我が子の姿をスマホで撮影しようとしていた親がぽろりとこぼす。「見たことないくらい見事な体育座りだ…」

餅まきに先立って、大船渡市出身で高田高校を卒業したシンガーソングライターの濱守栄子さんのミニライブが始まる。よく聞くと歌詞がじ~んと沁みる「アンパンマンのマーチ」、「夢をかなえてドラえもん」、となりのトトロの主題歌「さんぽ」。手拍子が広がる。子どもも大人も手を叩いている。濱守さんの透きとおった歌声と子どもたちの歌声がアバッセ中に響き渡る。

そして、陸前高田市復興応援ソング「たかたのゆめちゃん」のスタートに合わせて、陸前高田のマスコットキャラクターたかたのゆめちゃんが、観客の後ろ側から登場。

餅まきを待つたくさんの子どもたちの中、なぜかこの時はエスコートなしのゆめちゃん。ステージまでたどり着けるのか心配されたものの、楽天イーグルスの帽子を被った少年ほか子どもたちの協力でステージ前へ。

ゆめちゃんがステージに到着するや、餅まきスタート。

ステージ上の濱守さん、アバッセの運営主体の伊東理事長ほかスタッフの人たち、そしてゆめちゃんからたくさんのお菓子が投げ渡されていく。

お菓子を撒く方も、受け取る方も、会場は笑顔、笑顔。

お母さんの帽子を借りて、たくさんのお菓子を拾った子、抱えきれなくて、歩きながら落としたお菓子を拾ってまた落としてを繰り返す子。

空気入りのエアギター

記事の冒頭の写真は、餅まきを待つ子どもたちに楽しんでもらおうと、アバッセのスタッフが用意したエアギター。

カラフルなギターを手に手に、子どもたちがエアギターの演奏を始める。きっと初めて目にした子も多かったに違いないが、ギターの形をしたものを手にすると、自然とみんなエアギター奏者になってしまう。

これぞ音楽、そしてエンターテインメントのチカラというべきか。

餅まきで少ししかお菓子をゲットできなかった子も、エアギターがあるからご満悦。

その頃、アバッセの外では

こちらアバッセの北側。餅まきの対象が小学生以下だったのでガッカリして帰っていく中学生たちの図、ではない。

中心商店街としてオープンしたアバッセだが、周囲はまだ造成工事現場だということをお伝えしたくて、この場を借りて掲載。

一方、南側の駐車場前では、岩手県のキャラ・わんこ兄弟のふわふわドームで小さな子どもたちが飛び跳ねる。

お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんが「お菓子まきがあるよ」と誘っても、「ここがいいの!」

ふたたびアバッセ北側に目を転じると、駐車場脇のベンチで携帯ゲームに興じる小学校高学年の子どもたち。

「こうして子どもたちがのびのび遊べるこどもの日って、やっぱりいいね」「アバッセができてよかったね」など大人たちが語らっているのなんてお構いなし。

子どもたちはそれぞれに楽しいこどもの日を過ごしているのだった。

ゆめちゃんのお買い物

ふたたび時間を少し巻き戻しつつ、アバッセの建物の中へ。たかたのゆめちゃんは、餅まきが始まる30分も前にアバッセに到着していたのだった。陸前高田のゆめ大使として全国を飛び回るゆめちゃんが、多忙なスケジュールをやりくりしてまで早めにアバッセにやってきたのは…

「かもめの玉子」で有名なさいとう製菓でケーキを買うためだった。

ゆめちゃん、どうやってケーキ食べるの? なんて大人ぶったことは言いっこなし。今日はこどもの日なんだから。

ケーキを買った後には、八木澤カフェなど他のお店も賑やかしに訪問するあたり、ゆめちゃんはなかなか大人びてもいるのだった。

子どもたちのすてきな発想

「ママ〜、餅まきまでの時間つぶしに折り紙してていい?」

なんて理由を付けて、午前と午後の2回行われた餅まきの前後、パブリックスペースの子ども遊び場にはたくさんの子どもたちがやってきた。

口では時間つぶしなんて言ってたけれど、折り紙をつくる表情は真剣そのもの。折り方を知っている折り紙をせっせと折ったり、折り方を忘れた折り紙を教えてもらいながら折ったり、折った折り紙を遊び場の飾り付けに提供したり。

「ここに遊びにくる子どもたちに楽しんでもらおう」という呼びかけに応えて、どんどん折り紙をつくってくれた。

自分の作品を遊び場の飾り付け用にプレゼントする少年のこの表情。贈り物をするのはうれしいことなのだ。たとえ受け手が見ず知らずの誰かであったとしても。きっと誰かがよろこんでくれると知っているから、うれしいのだ。

紙工作で新聞紙をぐしゃぐしゃに丸めていたら、「それ貸して」と小さな子どもが受け取って、丸めた新聞紙を半分広げて帽子のようにかぶる。

まあ、なんてお似合いなこと!

小さな子どもの発想に、お母さんも近くにいた子どもたちも大人たちも拍手喝采。

その頃、折り紙用のテーブルの上では、花のボール(「高校球児たちが咲かせる花」参照)のパーツを使ってこんなアートが誕生していた。

大きな花を作るための部品としてしか見ていない目からは、とうてい生まれないアート。発想の勝利!

【さあ、これからだ】高校球児たちが咲かせる花
 【さあ、これからだ】高校球児たちが咲かせる花
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ちょっと前まで子どもだった大人たちも負けてはいない。濱守栄子さんのミニライブでMCをつとめた女性は、「わたし、アンパンマンが好きなんです」と、紙で作るアンパンマンこけしを製作中。この写真、ライブ開始の数分前。濱守さんはすでにほぼスタンバイ完了していたのだが。

MCしながらアンパンマンこけし作ってれば? とおふざけでプッシュしてみたら、「それいいですね」とピース。(実際は、もちろんMCの仕事はしっかり務めていらっしゃいました)

子どもたちの遊び場の一角には、こんな仕掛けも。

誰が遊びにくるのかは知らない。だけど、ここで遊ぶのはみんな友だち。だから、知らない誰かに遊びをとおしてメッセージを贈る。

お行儀がよかったり悪かったり。元気いっぱいだったり、たまにはそうではなかったり。泣いたり駄々をこねたり。当人はふつうにしているつもりが、周囲を笑顔でいっぱいにしたり。

いろいろあるけれど、放っておいたら、自然とつながっていく。友だちになっていく。

子どもは大人。大人も子ども。大人だって子どもだし、子どもだって大人だ。大人であることって少しだけ鼻高々な気分だけど、子どもであることって気持ちいい。

たくさんの人たちが童っ子(わらしっこ:子ども)になった陸前高田・アバッセのこどもの日。

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