【さあ、これからだ】高校球児たちが咲かせる花

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写真を一目見て、「この子たち、野球部員じゃん」と思った方、あなたは鋭い!

でも、彼らが何をしているのかまで分かる人はいないだろう。写真だけ見て分かっちゃう人がいたら、それはもう神と言うべきかも。

時間を少しだけ巻き戻そう。陸前高田に新しい複合商業施設アバッセたかたがオープンしたのは3日前のこと。大型連休の前半最終日にあたるこの日の夕方、アバッセのパブリックスペースの一角に設けられたワークショップ会場には、次の写真の光景があった。

小さい彼女がいっしょけんめいにやってくれているのは、子どもたちの遊び場を飾るための折り紙。彼女の前に置かれた折り紙の花のパーツに、ニコちゃんマークを書き込んでくれていたのだった。

彼女は得意の折り紙をたくさん作ってくれた上、現在は災害公営住宅に暮らす数10年前のの少女たちが作ってくれた花のボールのパーツも作ってくれた。どうして彼女がそんなにたくさんの折り紙を作ってくれたのか。それは、「ここに遊びにくるお友だちが楽しんでくれるように」

閉店30分くらい前になり、たくさんの折り紙を飾ってくれた彼女が、買い物を終えたお母さんと一緒に笑顔で帰っていった直後、部活を終えた野球部員が入れ替わりに同じ場所にやってきた。「ここ、折り紙やってもいいんっすか?」と折り紙の本をめくり始めたので、「高田高校野球部の君たち、折り紙するなら、この花のボールはどう?」と少しおどけた調子で声を掛けてみる。

小さな折り紙を折って作ったパーツを5つ集めると花がひとつ。その花を12個集めると、くす玉みたいなボールになる。この花を作るのには、小さな子どもから、災害公営のおばあちゃんたちまで、たくさんの人が参加してくれているんだよ。いろんな人が作ったパーツを集めて大きな花にして、子どもたちの遊び場を飾ろうって企画なんだけど…

「それ、いいっすね!」

説明が終わる前に帽子をかぶった野球部員が元気に返事をした。向かいの長身の彼もうなずく。かくしてセカンドと外野、2人のメンバーから折り紙の花づくりが始まった。

高田高校からアバッセたかたまでは徒歩で15分ほど。運動部員なら10分かからずに来れるだろう。だからこの場所は、部活帰りのたまり場や、遠方から通う部員たちがお迎えの車を待つ場所として機能し始めている。最初の2人が折り紙を始めるとすぐに、ほかの野球部員たちもやってきた。

最初に折り方を教えた2人が、後から来た仲間に折り方と折る目的を教えていく。

まず1人、そして2人来て5人になった。「1人1枚折れば5弁の花がひとつできるじゃん」なんて言ってるうちにどんどん人数が増えて行く。加わったり帰っていったりで出入りはあったが最盛期には8人になった。

花のパーツを折っている彼らに、「今年は何回くらい校歌を聞かせてくれるのかな?」と聞いてみた。県大会と全国大会の試合数を勘定しているみたいだったので、「まあ最低でも10回くらい?」と振ってみると、答えは「それは大丈夫っす」

それって甲子園でもけっこういいとこまで行くってことだよね。ベスト8かベスト4か、なんていう言葉にニコニコしている。

じゃあさ、関西の方の大きな球場に行くことになったら、アバッセに来てる人みんなでこの花のボールをたくさん作ってプレゼントするから、と言うと、すかさず「ありがとうございます!」とレーザービームみたいな返事が返ってきた。

お迎えの連絡を受けて、野球部員たちは1人、また1人と帰っていく。1人ひとりが帽子をとって「今日はお先に失礼します」とあいさつしてくれる。

閉店のアナウンスが聞こえる頃、「ここに遊びにくる子どもたちによろこんでもらいたい」と作ってくれた花のパーツはどんどん増えて、花のボールの半分ほどが出来上がっていた。

いい日曜日だった。

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