【シリーズ・この人に聞く!第130回】母親の育児ストレスや育児不安の研究に取り組む第一人者 大日向雅美さん

kodonara

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――私の場合は子どもが小さい時よりも、ある程度育った今「自分の子育て失敗だったのでは?」と振り返ったりするのですが…。

子育てに失敗などありませんよ。子どもを育てることは大変さも喜びもあって、それは子どもがいくつになっても、ずっと続くものだと思います。どんな時でもあきらめずに関わり続けることです。特に思春期は親の力が試される時です。子どもを信じて、そして待つことです。それから、子どもは「授かりもの」とよく言いますが、私は「預かりもの」だと思っています。「授かりもの」だと、親は自分の期待通りにしよう思いがちではないでしょうか。でも、私たちは子どもから子どもの命と人生を預かっているのです。子どもが自分の人生を決めて歩んでいく。それを傍らで見ている時には、いらいらしたり嘆いたりすることもあるでしょう。それでいいんだと思います。でも、どんな時でも子どもを見捨てずに、関わり続けることが大切で、それが親の使命ではないかと思っています。

――なかなか親も成長できずにおりますが…おっしゃる通りですね。では最後に、「母性愛神話の罠」にハマって心折れている母たちへエールをお願いします。

私は「母性愛神話からの解放」の必要性を訴えてきましたが、子どもを愛する大切さは一度も否定したことはありません。子どもは愛されるために生まれてくるのです。ただ、その愛は母親だけが注げるとは限らないということです。母親も勿論ですが、父親や祖父母、地域の方々など、いろいろな方々の愛情に守られて育っていってほしいと思います。そのためにも、母親が一人で子育ての大半を背負わなくてはならないと思い詰めず、むしろ、周囲の人のお力を上手にお借りすることが大切です。そして、母親であると共に、一人の女性として、社会人としてのご自分も大切にしてほしい。それが心から子どもを愛し続けることにつながると信じています。

編集後記

――ありがとうございました!念願かなって大日向先生にお目に掛かれて幸せな取材でした。私自身ができそこないの母親で問題が多く、先生のお言葉は一つひとつ真を突くもので、取材中にも拘わらず押さえきれない感情が涙になりました。「母性愛神話」は真っ向から違う!と思いながら仕事を抱え子育てしてきた19年間。20歳を頂上とするならば、あともう少しで到達するのですが、きっと頂上に立っても景色が少し変わるだけでいろいろな悩みは尽きないものなのでしょう。これからも母親の不安に伴走してくださる先生のお言葉、大切に耳を傾けてゆきたいと思っています。

取材・文/マザール あべみちこ

活動インフォメーション

『増補 母性愛神話の罠』
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www.amazon.co.jp  

大日向雅美 著
日本評論社
定価 1,836円(税込)
発売日 2015/6/23

原著刊行から15年。子ども・子育て支援新制度スタートの年に、母性愛神話、三歳児神話の「いま」を増補し、装いも新たに再刊。

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