【シリーズ・この人に聞く!第53回】双子のユニット和楽器奏者 AUNさん

kodonara

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18歳の時、世界で初めて和太鼓を広めた鬼太鼓座(おんでこざ)に参加。数年後には、全米一周1万5千キロという距離を3年かけてマラソン走破し、300界以上のステージをこなす中、4回のNYカーネギホール公演を成功させた実力派。12年間、座の中心的プレイヤーとして世界各地16ヵ国、国内外で1000回を超える講演活動を行ってきました。新たな表現活動を求め二人で2000年にAUNを結成し、今年で10年目を迎えます。双子の生き方としてもとてもユニークなお二人にこれまでとこれからについて語っていただきました。

AUN(あうん)

日本の伝統と今を伝える双子の和楽器奏者、井上良平と井上公平の双子ユニット。
2001年にデビュー。多数の海外公演を経て、2006年日本文化継承を伝える活動をニューヨークにも広げ、1年半ほどNYでの活動を行いマンハッタンでのライブ活動や、全米各地のフェスティバルへ参加。その年には外務省に招聘され南米ガテマラ、コスタリカ、コロンビア・ツアーも成功させた。
そのような活動が認められ、06年国土交通省「ビジットジャパン・キャンペーン」をプロデュース。そのテーマソングを作曲、演奏も行い、日本の伝統と今を伝える双子の和楽器奏者、AUNの良平公平は、日本が世界に発信する新しい形として注目を集めている。2008年には、いままでにないジブリの魅力を存分に発揮した和楽器だけのアルバム「和楽器でジブリ」を発売し好評を得ている。また森林保護を推進する環境保護プロジェクト「株式会社ハートツリー」と協力して、日本各地に里山を再生しようという企画があり、今回は長野県上田市にある長野大学と提携し、学校敷地内に「AUN長野大学恵みの森」を作る。CDの売り上げの一部を寄付し、人々が集まれる里山を再生します。また2010年2月に、AUN J-クラシック・オーケストラとしての第二弾アルバム「桜-SAKURA-」をリリース。この桜のアルバムも奈良吉野の桜の保全のために売り上げの一部を寄付する環境への取り組みも積極的に行われている。いま、「和楽器の再発見」をテーマに、大人から子供までも魅了する彼らのパフォーマンスからは到底目が離せない。

 AUN&HIDE Official Web Site
aun-japan.syncl.jp  

大家族で育ち、兄姉もアーティストの道へ

――双子でアーティストの方にお会いするのは初めてです。お二人とても仲がよろしいんですね。ごきょうだいは他にいらっしゃるのですか?

7歳の夏祭りにて左が良平、右が公平。近所でも有名な双子だった。

7歳の夏祭りにて左が良平、右が公平。近所でも有名な双子だった。

9歳上の兄、4歳上の姉、2歳上の兄、そして末っ子が僕ら双子の5人きょうだいで育ちました。きょうだいは皆、音楽やったり絵を描いたりで今、プロとして生きています。長男は藝大でパーカッションを専攻してから和太鼓に目覚め、時勝矢一郎(じしょうや・いちろ)という芸名でソロ活動しています。長女はフルート奏者でしたが兄の影響を受けて「しの笛」奏者となり、井上真実としてアルバムを何枚も出しています。
次男は井上信太として京都で現代美術のアーティストです。
父は紡績会社に勤める普通のサラリーマンでしたが、音楽が好きで教会でオルガンを弾いていました。母はピアノの先生でしたから、僕らも一番最初に出会った楽器はピアノ。でも皆と同じなのが嫌で、中2くらいからバンドを始めて僕(公平)はギター、良平はベースを演奏していたので「これで食っていきたい!」と思っていました。

――お二人とも早くから自立を考えるなんて大人っぽかったですね。ギターやベースから和楽器に魅了されるようになったのは何がきっかけで?

一番上の兄が「鬼太鼓座(おんでこざ)」という和太鼓のグループにいたので、初めて観に行った高3の時に、すごい!これだ!と衝撃が走ったのがきっかけでした。

――双子は私の周りにも何組かいますが、いっつも一緒の仲良しか、背を向け合うかの両極端のようで。あまりにも似ていて、お互いがもう一人の自分というように捉えているのでしょうか?双子ならではのエピソードはありますか?

僕らは幼少期から高校まで同じ学校で過ごしましたし、今まで41年間一緒ですね。
今は僕(良平)は家庭をもっているので、公平とは別に暮らしていますが。
学生時代もずっと下の名前(良平・公平)で先生にも友達にも呼ばれていましたし、
良平の友達は公平も友達で、お互いの交友関係を広くもてました。双子で損したことなんて全然ないですね。上に兄貴もいましたから、町内ではとても有名でした(笑)。

――さきほどのお話しに戻りますが、お兄さんのいた鬼太鼓座(おんでこざ)を観て衝撃を受けられて、それで18歳でカナダへ渡られたと?

ちょうど高3の冬休みはカルガリーオリンピック開催の時期で、そこで演奏の予定があるから荷物持ちとして付いてこいと兄に言われて、初めての海外ですし喜んで付いて行きました。カナダに出発直前に、何が原因か未だにわかりませんが鬼太鼓座(おんでこざ)の座員が5人くらい辞めてしまった。2週間後にはオリンピックで演奏が迫っている。それでカバン持ちのつもりでいった僕らに「あと2週間。お前ら特訓だ」と。わけのわからぬうちに猛練習で何とか演奏できるように。晴れ舞台に上がるのとデビューが同時。
上のきょうだい3人がそれぞれ藝大や女子大、美大と進んでいて、「ふたりが大学に行きたいなら、この家を売ってもいいんだぞ」と父は言ってくれましたが、高校卒業後はそれほど勉強したいと思わなかったので(笑)、音楽の道へ迷いなく進みました。

12年間の海外公演で培ってきたこと

――偶然にしてもすごくラッキーな始まりでしたね。それから本格的に演奏活動をされるように?

鬼太鼓座の一員だった頃。アメリカの各新聞にも何度も掲載された。

鬼太鼓座の一員だった頃。アメリカの各新聞にも何度も掲載された。

初めての演奏で目の前の1000人くらいのお客さんが総立ちになって拍手喝さいをしてくれた。まさか、こんなに感動してくれるものなのか? ! と。
カルガリーから一旦帰国し、高校の卒業式を終えて3年間の修行の後、再び今度はアメリカへ。最初は助っ人のつもりで長くやるつもりはなかったのですが、好き嫌いは別として何かやらなければならないような気がして。3年間アメリカに行きっぱなし、全米一周マラソンで走りました。毎日30キロから60キロ走るわけです。公演してお金を貯めながら、全州回った。3日に1回くらいアメリカのどこかの新聞に僕らのことが載っていました。

――アメリカの3年間を皮きりに30歳までの12年間は世界各国でツアーをされてきました。実地で音楽活動へ入られたわけですね。日本に帰りたいと思いませんでした?

左から二人目が公平、その隣が良平。全米一周マラソンで走り、全米中に注目された。

左から二人目が公平、その隣が良平。全米一周マラソンで走り、全米中に注目された。

僕らが世界を回っている間、日本はバブル景気だったようですが、まったくその時代いなくて知らなかった。帰国したくても資金がなくて帰れないことがありましたが、バブルの終わり頃、ようやく日本での公演も決まり、何年ぶりかで日本へ帰ってこられた時は泣きました。飛行機の中でNHKのニュースを見て懐かしくて。日本へ戻ってまたヨーロッパ行って、アメリカへ渡ってとずっとツアー続きで家がない状態。小さなトランクひとつ持ってホテルで生活していました。20代はずっとツアー人生で、30歳の節目を迎えてはたと「これじゃ、いかんのでは?」と思い始めて。この後もツアー人生だとしたら、あと10年は同じかもしれない。卒業するなら今だと。二人で独立してAUNを結成しました。

――そのユニット名、AUN(アウン)は『阿吽の呼吸』から付けたもので?

3日に1回くらいアメリカのどこかの新聞に二人の記事が載った。

3日に1回くらいアメリカのどこかの新聞に二人の記事が載った。

双子ならではの阿吽の呼吸、ツーカーというか。日本語もアから始まってンで終わるし、それと1本の三味線を2人で弾く曲で『阿吽三味線』というのがあって、それがユニット名の所以となります。二人で始めて鬼太鼓座(おんでこざ)のステージの時よりも、自分たちの看板でやったという、やり遂げ感があった。それから、いろいろな偶然も重なって運よく和太鼓が入手できたり、一旦は和太鼓を卒業したはずが、もう一度やってみるか!ということになったんです。

――なぜ和楽器なんでしょう? 和楽器でどんな音楽を奏でたいとお考えでしたか?

まったく先入観がなかったから初めて観た時に、かっこいい!と思えたんですね。
新しく思えた。ただ単にうまく演奏したり、譜面で作っているのではおもしろくない。
曲の背景とかテーマを思い浮かべて演奏する。たとえば松本清張の「黒地の絵」という有名な小説があります。この物語は太鼓のリズムがキーワード。このストーリーをイメージして太鼓のメロディーをうまくつかって10分くらいの曲を作りました。

何者かになる!という想いで歩んできた

――将来どういう仕事をしたいとか、大人になったら……の夢はございましたか?

右が良平、左が公平。学校でも近所でも下の名前で呼ばれ育った。

右が良平、左が公平。学校でも近所でも下の名前で呼ばれ育った。

何かしたい、何かしなくちゃならない、何かになるんだという気持ち。普通では終わらないぞという気持ちは持っていました。何かのプロになるはずだと。父は会社大好きなサラリーマンでしたが『手に職をつけろ、何かの専門家になれ』といつも言っていました。

――今、お二人とも和楽器演奏家となられましたが、そうなるまでに努力をされてきたことは何でしょう。

和太鼓と出合った時の衝撃は今でも脳裏に焼き付いている。日本ならではの和楽器の素晴らしさを伝承する役割を担う。

和太鼓と出合った時の衝撃は今でも脳裏に焼き付いている。日本ならではの和楽器の素晴らしさを伝承する役割を担う。

ずっとやり続けてきたことですね。途中で他の仕事に変わるということもなかった。
鬼太鼓座(おんでこざ)時代は貧しくて100円のジュースも買えなかった(笑)。
でも、節目節目に支えてくれる人が現れて、人間関係で助けられてきた。それと、ずいぶん長い間、旅をしてきてよかったことがあります。旅はいろんな人に出会い、すぐに別れる時が来る。その短い時間で、いい面だけを見せ合っているわけです。そうすると自然に、いい人になっていく。旅が僕らを強くした。人を信じるという考え方を養ってくれたのかなと思います。苦しい時があっても、もうちょっとがんばろうとその繰り返しできて、がまんした先に道が拓けてきたので。グループ内では二人の絆があったということも大きい。

――何百ものコンサートをされてきましたが、コンサートで一番大事にされてきたことって何でしょう。

ステージに立つものの人間力、人柄でしょうか。お客様が観に来るのは音楽を聴きたいという以上の何かです。音楽だけならCDアルバムがあります。技術的にも優れている今、これ以上の音はないというくらいどのアルバムも素晴らしい出来栄えです。
でも、チケットをわざわざ買ってくるのは、あの人の音を聴きたいから。それは音楽という域を超えたものですよね。人間の魅力というのをどうやって付けられるかを僕は鬼太鼓座(おんでこざ)で学んだんです。
僕らは日本の邦楽界や音楽界のどこにも属していない。日本流のしがらみは全然もっていないので、流派の違いなんていうのも全然関係ない。スタジオジブリの映画音楽を全部邦楽器で奏でたらおもしろいんじゃないかというアイデアで作ったアルバムも出しました。

――では、これからの子どもたちへメッセージを。

三味線や太鼓、ヴァイオリンを弾いたり、写真を撮ったり……それらは全部同じ世界でつながっている。習い事は別のことではなくて、何でも共通点があるはず。自分に枠をつくってしまうと閉ざされてしまいます。いろんなことをやると、自分でも知らなかった一面が見えてくると思います。
何かひとつ趣味をもつと喜び、豊かさが違います。何でもいいからまったく違う世界へ踏み出すと、きっと素敵なことが待っています。ただ、ひとつ決めたら貫いてほしい。
心の声をしっかり聞いて、自分を信じる力を持ってほしい。
今、コンサートと同時に桜の木を植樹する活動も国内外で行っています。日本は経済先行できてしまいましたが、日本文化と和楽器の素晴らしさを伝えてゆきたい。

編集後記

――ありがとうございました!骨太な生き方でありながら、浮遊感のある軽やかな印象。好きな道をとことん極めている人がもつ独特な柔らかさを放つお二人。海外で和楽器を演奏することで、得てこられたのは自分が信じた道を歩いていこう!と決意できる「自信」だったのかもしれません。褒められたり、評価されたりすることで、どんどん力が伸びてゆく。お二人の大切にされてきた「信じる力」こそ、道を拓いていくのに必要なことですね。7月のライブも、楽しみにしています。

取材・文/マザール あべみちこ

活動インフォメーション

 AUN J クラシック オーケストラ
aunj-classic.syncl.jp  

男7人のスペシャルバージョンで送るAUN Jクラシック・オーケストラ。激しくも美しく奏でる和楽器の魅力と、人間味あふれる男味たっぷりの7人の和楽器奏者。
泣いて、笑って、楽しんで。鎌倉を熱くさせますよ。
開催日 : 2010年7月3日(土)
会場 : 鎌倉女子大学二階堂学舎 

『桜-SAKURA-』
 『桜-SAKURA-』
www.amazon.co.jp  

いきものががり、コブクロ、宇多田ヒカル、森山直太朗、ケツメイシなど数々のメジャーアーティストが歌い繋いできた「桜」をテーマにした楽曲を和楽器のみの編成でカバーした愛すべき1枚が完成!
毎年オリコン上位を賑わせた楽曲ばかり勢揃い!
”サクラ”をテーマにした楽曲がこれほどまでに日本人に愛される理由がこのアルバムにある!

和楽器でジブリ!!
 和楽器でジブリ!!
www.amazon.co.jp  

和楽器だけでジブリの作品をカバー。
シンプルでありセンセーション。和楽器の魅力たっぷりにジブリの名曲をお聴かせします。子供から大人まで楽しめるジブリも認めた一枚をぜひ。 

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