――真の人道支援。国が決めたレールに乗るのではなくて、自分たちが考える支援を形にするのは、新しい道を作っていくようなことですから、ものすごくエネルギーが必要ですね。
昨年の8月にはイラクへ行って、50度の猛暑の砂漠で子どもたちを診察してきました。2月にもまた行く予定です。今度は、イラクの6つの病院の小児科医たちが集まって、カンファレンスをしようということになっています。そのための資金稼ぎが「哲学のある義理チョコレート」の販売。売上は、すべて医療支援に使っています。イラクで白血病と闘う子どもが描いた絵をパッケージにしています。
――とても素敵なアイデアです。日本が誇る製品(六花亭のチョコ)に、イラクで頑張る子どもたちの絵を添えるのは、モノを通じてあったかい気持ちになれる寄附ですね。
今年から缶入りパッケージにバージョンアップしました。六花亭の三種類のチョコレート10個入で、おいしくてかわいくて、役に立つ。まさに哲学があるチョコレートです。ぜひたくさんの人に味わってほしいですね。
――先生はこれからの未来を背負う子どもたちを支援されていらっしゃいますが、日本の子どもたちへは、どんなことを伝えたいですか。
子どもたちには、本を読んでいてもらいたい。今の僕の考え方を方向づけているのは、子ども時代に読んだ本。こういう仕事をしたいと思わせてくれたのも本だったし、人と少し違う表現をしたときでも、ぐらつかないでいられるのも、本のおかげでした。生きていれば嫌なことや納得できないことがあるけれど、本には救いがある。
それと、心を暖めておいてほしい。例えば、夕日を見てきれいだなと思うことだって結構大切。夕日を見るのなんか1秒ですよ。「きれい」と感じるとき、幸せホルモンのセロトニンが動く。そういう感情の積み重ねが心のウォーミングアップにつながる。
でも、その美しさに気づかせてあげられるのは、親なんです。問題なのは、親も子も夕日の美しさに気づいていないこと。親が「きれいだなあ」って思う時間を子どもと共有してほしい。そうすればいろんなことに感受性が強い子どもに育っていく。たとえいじめられても生き抜けるし、人をいじめなくなる。生きるうえですごく強い人間になっていける。僕の本なんかは、感受性を高めるのには最適(笑)。漢字は難しくないし、センテンスが短い。絵本『雪とパイナップル』(集英社)はもちろん、『がんばらない』(集英社)も『へこたれない』(PHP)も、小学校高学年から読めますからおススメします。
編集後記
――ありがとうございました!鎌田先生ご自身が養子だったことを知ったのは、30代半ば立派な大人になってからだったそうです。それほど長い期間、わが子として愛情を注がれてこられたご両親は筆舌に尽くしがたい御苦労がおありだったことと思います。親御さんへ恩返しをするように、日本だけでなくイラクの子どもたちを医療で支え続ける鎌田先生。本業をこういう形でいかせるなんて素晴らしいです。親が「勉強しなさい!」と子どもにいうのは、「目の前にあるものを片付けなさい!」と同じような意味だったりします。でもそれって楽しむための勉強を見失わせてしまう。鎌田先生の「勉強」は渇望から始まり、生きる楽しみにつながっておられます。ハングリーは魂を育てるんですね。どうか、これからもますますお元気でご活躍ください!
取材・文/マザール あべみちこ
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