【シリーズ・この人に聞く!第14回】産婦人科医・医学博士 女性を助ける天職に就いた 対馬ルリ子先生

kodonara

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銀座のど真ん中にあるクリニックの扉を開けると、まるでホテルのラウンジ。ウィメンズ・ウェルネス銀座クリニックは、「癒し」空間そのもので病院というイメージには程遠い。今回ご紹介する対馬ルリ子先生は、このクリニック院長でもあり、産婦人科医として活躍されていらっしゃいます。医師という転職に就かれるまで、そしてお二人のお嬢様を子育てしてきた母親の立場から、習い事のお話をうかがってきました。

対馬 ルリ子(つしま るりこ)

周産期学、ウィミンズヘルスが専門。1984年弘前大学医学部卒業後、東京大学医学部産婦人科学教室入局、都立墨東病院周産期センター産婦人科医長などを経て、2002年にウィミンズ・ウェルネス銀座クリニックを開院。
2003年には、女性の心と体、社会とのかかわりを総合的に捉え、健康維持を助ける医療(女性外来)をすすめる会「女性医療ネットワーク」を設立、全国230名の女性外来医師・女性医療者と連携して活動している。女性の生涯にわたる健康のために、さまざまな情報提供、啓発活動を行なう。
著書に『キレイな〔からだ・心・肌〕女性ホルモン塾』(小学館、共著)、『女性外来が変える日本の医療』(築地書館)、『プレ更年期からはじめよう』(かもがわ出版)、『「女性検診」がよくわかる本』(小学館)、『症状でわかる女性の医学BOOK』(主婦と生活社)ほか。

 女性医師・対馬ルリ子のオフィシャルサイト
tsushima-ruriko.com  

八戸の港町で育った、眠らぬお嬢様

――先生は青森県八戸市ご出身ということですが、ご家族はやはりお医者様で?

はい。祖父は弘前大学医学部医学部長から学長になった人で、父も大学で耳鼻科の講師をしておりました。4才まで弘前で、4才から高校卒業時まで八戸の港町で育ちました。父は、大きな病院の耳鼻科部長を勤めてから、私が小学校1年生の頃、地元で耳鼻科の開業医になりました。土地柄、耳鼻科が欠かせないものでいつも患者さんが溢れていたのを覚えています。

――DNAでしょうか。先生もきっとお勉強がお出来になったのでしょうね。

勉強はですね、できました(笑)。田舎で勉強はあまり奨励されなかったのですが、中学時代は3年間ずっと1番。でも、高校は進学校で皆できる人が勢ぞろい……それでもそれでも5番以内。じゃ、医学部を目指そうかな~と。

――やっぱり(笑)。劣等感をもつことが無かったのでは?……学校の勉強以外はどんな時間を過ごされました?

ピアノを習っていました。その当時、ヤマハ音楽教室に通うのが人気で。テニスもやっていました。母が国体の選手だったものですから。中学に入ってテニス部が無かったので、新しく部をつくったんです。テニスに熱中するようになって、ピアノを弾くと手が震えるの。結局、その時はテニスを取りました。

――すごい。何でも優秀にお出来になるんでしょうね。何か苦しかった思い出っておありですか?

実は私、なかなか眠らない子どもだったんです。「早く寝なさい」と言われるのがすごく辛かった。眠たくなるように布団の中でたくさん本を読みましたが、眠らなくてもいられた。大学生になっても続いていて、皆よりたくさん起きていられて色んなことができるから、ちょっと得した気分でしたよ(笑)。

――それ、何かの才能でしょうか?エネルギーが有り余って…という気がしますが。他に習い事は?

4歳頃、オルガンを弾くのが好きだった

4歳頃、オルガンを弾くのが好きだった

日舞とお花を。本当は日舞でなくてバレエが習いたかったんですが、見学に行くつもりの日がたまたま教室がお休みで。それなら…と急遽、母の友人を尋ねましたら「バレエより私が習っている日舞の先生を紹介するから、ぜひおやりなさいな」と勧められ。筋がいいと褒められて、小学2年生から受験直前の高校3年生まで、名取一歩手前でお休みしましたけれど。もうすぐ再開しようかなって。

女性を助ける仕事という発想から医師の道へ

――お医者さんになろうと意識したのは、いつ頃からですか?

中学、高校くらいからですね。医師というより「女性を助ける仕事がしたいな」と思って、その選択肢として医師があった。小さな頃の夢は、「世界中の野良犬を集めて育てる!」というほど犬好きで。犬と見れば、寄って撫でて連れて帰る……という子どもでした(笑)。

――医学部に合格されたのはストレートで?

東大医学部目指すからと予備校生活を許してもらいました。浪人中は東京の大手有名予備校に通いましたが、周りはエリートばかり。お母さんの手編みのセーターとか着て勉強している男子とか、それまで見たことがなかったのでおもしろかったですよ(笑)。そこで会った全国各地のお友達と仲良くなって、医学部に進んでからもそれぞれの故郷を泊まりっこをしたり。

――楽しそうですね。それで、大学で医学部に合格された?

はい。大学は戦後、祖父の心血を注いで拡充した国立弘前大学の医学部へ進学。入学式の初日に教授陣が「お爺様には大変お世話になりました。何かお困りのことがあったら、何なりとお申し付けください」と挨拶に来られて。しまった!と思ったのですが既に遅し……。

――黒塗りの高級セダンで送り迎えなんかもあったり?

黒塗りではなかったですが(笑)。勉強しないと目立ちますよね。大学時代は、趣味のピアノをいかしてロックバンドのキーボードを担当していたんですよ。医学部の6年間ずっとバンド活動はしていました。

――意外です!先生はやりたいことを実現するために、どのような心構えで初志貫徹をされました?

7歳頃、オルガンからピアノへ転向。弾くのが大好きだった。

7歳頃、オルガンからピアノへ転向。弾くのが大好きだった。

「ルリ子は家も裕福で、勉強もできるし、女の子としても魅力がある。でもハングリー精神がないから大成しない」「医者になるには患者の痛みがわからないといけない」とか、色々と言われてきて落ち込んだり、「じゃ、私の存在価値って何だろう?」と考えたりしました。でもね、とにかく私なりに人の役にたつことを探して、明るくやさしく豊かな気持ちを分け合いたいと思ったんです。今は、医師になって女性の役にたちたいと思ってから25年近くたって、少しずつ形になってきた。形になるまで何十年掛けても、あきらめずに夢を持って生きているといつか叶うと思っています。女性の寿命は長いですから、長いスパンでね(笑)。

二人の娘を育てながら第一線で活躍

――お二人の娘さんにとって、先生の存在は「お母さん」以上のものなのでは?

うでしょう(笑)。上は大学1年生、下は高校2年生です。産婦人科という仕事を選んだということは、当直、夜間の呼び出し、土日も問わず……なので家には居られない現実がある。私がいない時は、夫、ベビーシッターさん、ご近所さん、実家の母などたくさんの人に支えてもらってきました。今でも「お母さん」と呼ぶのは、週3回夕ご飯を作って、子どもたちの発表会に付き添ってくれたベビーシッターさんのことでもある。でも、上の子は「スポーツする人を応援したい」と、ハンカチ王子もこれから入学する早稲田大学のスポーツ科学部で、応援団のチアーをやっています。下の子はストリート系のダンスをしています。二人共個性豊かで、自分が好きなことを見つけてやっていますね。

――先生の背中を見て育っている気がしますね。先生の教育はどんな方針で?

習い事をやり始めるのってお金も時間も掛かりますよね。私は、本人にやる気と覚悟があれば応援しますが、それ無しでは成り立たない。習い事でも学校でも、どうしてもやらせてほしいという気持ちがない限り、私はお金を出す必要はないんじゃないかなと思います。

――確かにそうですね。先生は母親であると同時にクリニックの院長で、第一線の産婦人科医でもある。お子さんにはどう言葉掛けされているんでしょうか?

医師としてはもう20年以上やっているプロですが、経営者としてはまだひよっ子なので(笑)、「ママは自分に投資しないといけない。あなたたちは、自分で自分を育てなさい。ママは応援はするけれど、それ以上のことはできない」と言い渡してあるんです。まだ子どもですけれど、自分なりに考えようとしていますね。

――親の考え方がしっかりしていると、子どもは早く自立しますね。では、読者のお母さんに向けて先生からメッセージを。

女性一人ひとりが自分の価値に気づいてほしい。このクリニックでの出会いを、自分を育てていくキッカケにしてほしいですね。検診はお金が掛かるかもしれませんが、自分のために投資しよう、もっと大事に自分を輝かせようと思っていただきたい。美容院やカルチャースクールに行ったりするのと同じように気軽にお越しください。体の健康だけでなく、一人の人間として輝くためのキッカケになればと考えています。それを応援できる立場でいたいので、私も健康でないといけませんし、勉強しなくちゃね(笑)。

編集後記

――ありがとうございました。ほんわか柔らかな語りと朗らかな笑顔。こんな素敵な産婦人科医に早く出会えていれば、私のお産はバラ色だったかも……。医師、経営者、母親、妻、そして一人の美しい女性である対馬先生。天は二物も三物も与えてしまわれるのですね。先生の柔らかさを見習って、もう一人授かるように頑張ります!・・・・って、こればかしは自分だけじゃ頑張れないものだけど(笑)。

取材・文/マザール あべみちこ

活動インフォメーション

対馬ルリ子先生の近々の講演、出演などのスケジュールです。
●3月11日(日)13:00~15:30 オープンクリニック 
ミニセミナースマイルボディネットワーク 骨盤底筋体操
●3月25日(日)10:00~16:30 (社)日本女医会
「健やか親子21」関連事業「十代の性と健康」指導者養成講座第10回
●4月22日(日)13:00~15:30 オープンクリニック
絵本で読む「いのち」のセミナー
●4月28日(土)20:30~20:59 NHK教育テレビ「すくすく赤ちゃん」(本放送)
●5月4日(金)13:05~13:34 NHK教育テレビ「すくすく赤ちゃん」(再放送)
●5月12日(日)女性医療ネットワーク講演会(京都)

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