海の紳士 ~狐崎復興漁業部~ 

sKenji

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夜が明け、少しずつ明るくなり始めた早朝4時。宮城県石巻市狐崎浜の漁港。狐崎復興漁業部を取材で訪れた。

狐崎復興漁業部は、東日本大震災後に、地元の牡蠣養殖漁師達が立ち上げた団体で、牡蠣養殖の他に、戦後絶えていた定置網漁の復活に挑戦している。

今日は、定置網の引き上げを取材させてもらうことになっていた。漁港にある「狐崎復興漁業部」と大きく壁に書かれた建物を訪れる。

一人の男性に近づき、「おはようございます。」と挨拶しようかと思ったら、先に、向こうから挨拶をされてしまった。

この方は、阿部政志さん。復興漁業部の部長さんだ。

とても気さくな方で優しさがそのまま雰囲気に出ていた。復興漁業部は阿部さんの他に、穏やかさがにじみ出ている、菅野善太郎さん。渋さが光るイケメンの管野清也さん。そして、漁業部では若手の今野政也さんがいる。

みなさんの第一印象で共通しているのは、穏やかさと優しさだった。海の男というと、どちらかというと気性が荒いイメージがあっただけに意外に感じた。挨拶を済ませると、清也さんは、

「服が汚れるけど平気ですか?」

と、私に聞いた後、手袋、長靴、カッパを探して持ってきて下さった。私は、手渡された長靴、カッパを急いで着こむと、慌ただしく漁船に乗り込んだ。

船は早朝の港を出発する。天気は薄曇り。

漁船は港を出ると、沖合を目指した。少し肌寒かったが、船上で感じる早朝の風は気持ちよかった。清也さんは、静かにじっと進行方向を見ていた。凛としていた。漁師の風格が漂っている。

定置網は、港を出てから10分程の沖合に仕掛けてあった。

船を定置網の脇に泊めると、網につながっている黒い太いロープを、漁船に備えつけられている器具に巻きつけた。そして、器具を作動させ、ロープを巻きあげて、網を引き上げ始めた時のことだった。ロープは、前触れもなく、いきなり「ブチッ」という音と共に切れた。切れたロープは、反動で勢いよく「バシッ」と船体にぶつかる。すぐに、今野さんが、

「大丈夫ですか? ぶつかりませんでしたか?」

と心配して声をかけてくださる。眠気が吹っ飛んだ。漁は危険と隣合わせだと実感する。

もう1隻の漁船と2隻共同作業で、定置網を引き上げ始めた。

網が上がってくると、無数の魚が見えた。まず、目につくのは、イワシ。そしてトビウオだった。すると善太郎さんがタモでトビウオだけをすくい上げ、バケツに入れ始めた。船上がにわかに活気づき始めた。ウミネコも魚のおこぼれを狙って集まってくる。

善太郎さんの作業を見ていると、タモですくった一匹のトビウオを「ぽーん」と私の目の前に放りなげてくれた。私は興味津々でトビウオを眺め、そして、写真を撮った。

バケツに入れようと、両手で捕まえると、トビウオは勢いよく手の中で暴れた。力強かった。手のひらにビシビシとトビウオの動きが伝わってくる。新鮮な感覚だった。しっかりつかんでいないと両手から飛び出してしまう。

私もタモを見つけ、トビウオすくいに挑戦する。金魚すくいと違い、網は破れないから簡単だろうと思っていたが、これがなかなかうまくいかない。
善太郎さんは、脇でトビウオをサクサクすくっていく。「流石だ」と、うなった。私が苦戦していると、

「尻尾から追いかけるのではなく、頭の方からタモをいれるんだ。」

という声が飛んできた。言われた通りにしてみる。すると、やっと一匹すくうことができた。一見、簡単に見える作業でも、思ったより難しいものだ。

定置網が更に引き上げられると、次に目立ってきた魚はサバだった。網には、その他、ヒラマサ、アジ、ヒラメ、イシモチ、ダツ、そしてアナゴまで入っていた。

トビウオの次は、サバすくいだ。すくい上げられたサバは船上に放りなげられる。私はそれを両手で必至に捕まえ、氷が入れられた プラスティック製の巨大な水槽に投げ入れる。

船の上では、あちこちで魚が飛び跳ねて、水しぶきを上げている。しぶきが目にバシッバシッ入ってくる。目をぬぐっている暇はない。あっという間に、全身びしょ濡れで、頭のてっぺんから足元までうろこだらけになってしまった。まるで自分が魚になったかのような有様だ。

サバに混じっている、トビウオなどのその他の魚は選別して、バケツにいれる。バケツがいっぱいになってくると、暴れている魚が飛び出してくる。 私は、飛び出して船上で跳ねている魚を慌ててバケツに戻す。

船の上はまさに戦場にようだった。

足手まといにならいないように魚と格闘すること、20~30分。 戦いは終った。
ほっとする間もなく、漁船は港に向けて戻る。

港に戻ると、今、取ったばかりの魚を善太郎さんがさばいて、刺身を作り始めた。清也さんが、大きな鍋に即席麺を入れて茹でている。箸で麺を回しながら

「トビウオも入れようか。」

と言うと、阿部さんが、即座に

「それは止めてくれ。」

と反応していた。

朝食は、取れたばかりのヒラマサ、トビウオ、アジの刺身と炊き立てのご飯。そして、ラーメン。なんと贅沢な朝食だろう。

短い時間ながらも、人生初の定置網引き揚げ作業。とても貴重な体験だった。

最初、漁師さんというと、荒れる冬の海で漁をする気性の激しい海の男をイメージしていた。船上で少しでも邪魔をすれば、怒声が飛んでくる覚悟で取材に挑んだ。

しかし、狐崎復興漁業部のみなさんは違った。とても物腰が柔らかく、穏やかな方々で、まさにジェントルマン。荒れた海よりも、穏やかで広大な大海原が似合う。懐の大きさ感じさせる男達だった。

「海の男」というより、「海の紳士」という方が似つかわしい。

次回、お会いするときはぜひ、海の紳士と一杯やりたいと思いながら、狐崎を後にした。

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狐崎浜

Text & Photo:sKenji

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