スリランカ旅行記 ~ハプタレー茶畑散歩~

sKenji

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スリランカ、ハプタレー。
一面茶畑に覆われた山々が連なる紅茶の一大生産地だ。

スリランカは、世界でも有数のお茶の生産地で、観光客に特に有名な場所はヌワヤエリア。当初、自分もヌワヤエリアに行くつもりでいた。

しかし、スリランカ現地に到着して情報を集めると、バックパッカーにはヌワヤエリアの宿代はどうしても高い。そこで、アジアで一番美しい車窓風景とも言われている電車でヌワヤエリアからさらに二時間ほど山奥に行った場所にある、ハプタレーに来たのだった。

ハプタレー

ハプタレーはとても小さな村で、山の峠の上に作られた村だ。眺望のよい場所として知られている。

村周辺にも茶畑が広がっているのだが、ローカルバスで20分程行ったところにある、リプトン・ティー・ファクトリーに行ってみることにした。

リプトン・ティー・ファクトリー。その名の通り、紅茶メーカー、リプトンの工場だ。ダンバテン行のバスに乗り終点で下車。そして、見学するために工場を訪れる。

しかし、この日はあいにく工場見学が休みの日だった。ただ、休みなのは観光客向けに公開していないだけであって工場ではお茶を作っていた。

僕は、邪魔にならないように工場の窓ガラスにへばりつきながら、中を覗いていた。すると、工場内で働いている若い女性数人がこっちを見て笑っている。更に熱心に見ていると、想いが通じたのか、中で働いているおじさん達が

「中に入って見にこいよ!」と手ぶりで合図してくる。

しかし、すぐそばにおっかない顔をした若い現場マネージャーがいたので、やめておいた。工場内はどうやら写真撮影禁止だったらしいのだが、先ほど、それを知らずにこのマネジャーの目の前で堂々と写真を撮ろうとして注意を受けたばかりだったからだ。

しばらく工場での作業を見た後、せっかくここまできたのだから紅茶を飲もうと思った。

ここリプトン・ティー・ファクトリーには、リプトンズシートなるものがあると聞いていた。このシートは、お茶畑が見渡せる眺望の良い場所に椅子があり、そこで飲む紅茶は格別らしいのだ。リプトンの紅茶工場に来たからには、リプトンズシートに座って、茶畑を眺めながら優雅にティータイムと洒落込むかと決めた。近くにいた従業員のおじさんに

「リプトンズシートはどこですか?」と聞いてみる。彼は外を指さして、

「あの道を歩いて行った先にある」と言った。

てっきりこの工場の建物内の一画にリプトンズシートがあると思っていたので、本当かな?と疑問を持ちながら言われた道を歩いてみる。

道は山一面に広がる茶畑に続いていた。5分程歩いてみたが、周りは茶畑だらけで椅子(シート)らしきものはまったく見えてこない。

何かがおかしいと思った。近くにいた、おじさんに再度聞いてみる。すると、

「この道を7㎞行ったところにあるよ。」と言う。

まず、耳を疑った。そして次に、きっとこの男性は英語の単語を間違えているのだろうと思った。きっと700mとか7分とか言いたかったに違いない。と勝手にいいように解釈した。

しかし、再び歩き始めると、すぐに道端に一本の背丈ほどの杭が立っているのを見つけた。そして、その杭に英語でこう書かれていた。

「リプトンズシートまで7㎞」
「えっ、うそでしょ?!」

7㎞って普通は歩く距離じゃないよなと思った。
7km。どうしようか少し迷ったが、まわりの茶畑があまりにも美しいので、まあこの景色なら7km歩いてもいいかと開き直って歩くことにする。

この選択は正解だった。

先に進めば進むほど、茶畑の光景は一層美しくなっていった。歩いていて思わず幸せで笑みがこぼれてくる散歩道はそうそうにないだろう。

茶畑は山の斜面にへばりつくように作られていて、リプトンズシートへの道はその茶畑の中をつづら折りに山頂に向かっている。

山道を登っていると一台のトゥクトゥクが下から壊れそうなエンジン音をたてながら登ってきた。

トゥクトゥクとはアジアによくある三輪のタクシーのことだ。その三輪タクシーは脇を通り過ぎる際に止まった。

中には少年少女達が3人乗っていたのだが、一人の少年が

「乗りなよ!」って言ってくる。

この綺麗な景色をゆっくり見ながら散歩もしたかったので、断ろうかともおもったが、彼らと一緒にトゥクトゥクに乗るもの面白そうなので乗せてもらうことにした。

日本の常識でいうと二人乗り位のスペースに僕を含めて4人。通勤ラッシュ時の電車並みの窮屈さだった。

トゥクトゥクは、より一層けたたましいエンジン音をたてながら、急な山道を苦しそうに登っていく。そして、その音に負けないくらいの大声で乗せてくれた少年が

「どっから来たの?」

と英語で聞いてきくる。

「日本だよ!」

僕も負けない位の大声で答える。その後も、エンジン音と張り合うように大声で会話をする。内容としては、たわいもない会話なのかもしれないが、とても楽しいひと時だった。

10分弱程乗っていただろうか。少年達には申し訳なかったのだが、あまりにも茶畑が綺麗で歩きたかった為に、

「僕はここで降りて、景色見ながら歩いて行くよ。トゥクトゥクで山頂まで先に行っていてよ。そして山頂でまた会おう!」

と言って、トゥクトゥクを降りて、茶畑散歩を再開する。

リプトンズシートまでは2㎞ちょっとだった。

30、40分程かけて山頂に着くと彼らがかけよってきた。そして、「遅いよ!何してたの?!」って言われてしまった。

山頂到着時は、雲がかかっていて下界を見ることはできなかったのだが、リプトンズシートで彼らと紅茶を飲んでいると、時折、雲に切れ間ができ、どこまでも続く広大な景色を眼下にすることができた。さすがに名高いリプトンズシートだけあり、最高の眺めだった。

一時間近く少年達とのティータイムを楽しんだ後、彼らはまたトゥクトゥクに乗り、下山して行った。出発際に、

「一緒に乗っていかない?」

と声をかけてくれたのだが、どうしても歩きたかったので、せっかくの好意を申し訳なかったが断った。

彼らが去り、少しして僕もまた、元来た道を歩き始める。

往路は曇りがちだったが、復路は晴れて茶畑の緑が一層に輝きを増していた。

その復路も終盤のころ、1台のトラクターが、茶葉が詰まった袋を山のように積んだ荷車を引っ張ってやってきた。茶葉を積んだ荷車は、巨大なリヤカーのような車両で、山積みの茶葉の上には男性も一人、乗っかっている。

トラクターを運転していたドライバーが通り際に声をかけてきた。

「乗っていくか?」

のんびりと歩いてみたいという気持ちもあったが、トラクターも面白そうなのでお言葉に甘えて乗せもらう。

最初、ドライバー席の脇にある、乗降用ステップに立ち乗りしていたのだが、どうしても荷車の茶葉の上に乗ってみたくて、乗り移った。茶葉を積んだ巨大リヤカーは茶葉がクッションになっていて、とても快適だ。

トラクターは、所々で止まっては、収穫された茶葉が詰められた袋を積み込みこみながら、山道を下りていく。

好意で乗せてくれたのに積み込みを見ているだけでは心苦しいので、手伝うことにした。

巨大リヤカーの茶葉の上に乗っていた男性が、下から茶葉が詰まった袋を放りなげ、巨大リヤカーの茶葉の上にいる僕がそれをキャッチして積み上げていく。近くで茶摘みをしているスリランカの人たちが笑いと微笑みを足して割ったような笑顔でこっちを見ている。

この積み込み作業を繰り返していくのだが、これが思ったより重労働だった。体力には比較的自信はあったが、これは大変な作業であった。

最後にトラクターは午前中に見学した工場に到着する。そして、工場裏側の巨大な倉庫のようなところに横付けをして、そこに今まで積んだすべての茶袋を降ろして並べていく。

しばらく降ろし作業をしていると、今朝、工場で写真を撮ろうとして注意した、あの強面の若い現場マネジャーがやってきた。

また、何か言われるのかと思っていると、最初にトラクターのドライバーと話をした後、今度は笑顔になり、そして、写真を撮ってやるといって、積み下ろしている僕の姿の写真をマネジャー自ら何枚も撮ってくれたのだった。

30分近くかけてすべての袋を倉庫にきれいに並べた。最後は汗だくだった。

茶畑での仕事というと、優雅でお洒落なイメージを持っていたのだが、わずかながらも手伝うことによってそこで働く人の重労働さを身をもって感じることができた。

美しい緑の光景、茶葉トラクターのヒッチハイク、そしてお手伝い。
リプトン・ティー・ファクトリーからの帰りのバスは
天気も気分も快晴だった。
本当に充実した中身の濃い一日となった。

当初は、前からどうしても行ってみたかったウズベキスタンを旅行したいと思っていたのだが、ビザ取得に早くても一週間はかかるために断念した。

その結果、繰り上がり当選的な感じで決めたのがスリランカだった。スリランカのコロンボ空港到着まで本当にこの国でよかったのだろうかと思っていた。

しかし、今はスリランカに来て本当に良かったと思っている。

スリランカ。

現地の言葉で「スリ」は「輝く」。「ランカ」は「島」。

つまり「輝く島」

イギリスの植民地時代の国名はセイロンだったが、独立後、現地の方達が呼んでいた「スリランカ」という名前に変えた歴史がある。

この国を旅行するまで、何が輝いてスリランカというのかはわからなかった。スリランカの人は、美しく輝いている緑、海を指して「輝く島」と呼んでいたのかもしれない。

しかし、この島を旅行して、いくつもの彼らの優しさと笑顔に触れた今、僕は思っている。

この島で一番輝いているのは美しい緑や海ではなく、スリランカの人々の優しさと笑顔だと。

<終わり>

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Text & Photo:sKenji

最終更新:

コメント(2

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  • B

    BNR32

    1枚目の写真とか幻想的なんですが、なんていうかミニチュアみたいですね。この景色が目の前に広がるとかまったく想像ができません。。

    • S

      sKenji

      撮影時、雲がかかっていたので30分程ねばって、掲載の写真をとりました。
      どこまでも写真のような景色が目の前に広がっていました。

      眺めるだけでも最高ですが、写真の景色の中を散歩したら、
      更にいいですよ。