「湯の花」浮かぶ、野趣に満ちた温泉
口永良部島・湯向(ゆむぎ)集落の温泉を見て感動した。たくさんの「湯の花」が浮かんでいるのだ。ちょっと遠出をすればその都度温泉に入るほど、温泉好きの僕ではあるが、ここまで大量の湯の花はちょっと見たことがない。
「緑の火山島」と呼ばれる口永良部島。新岳、古岳など、島の中央部から東部にかけて今なお活動を続けている火山もある。そんな火山の島だからこそ、温泉はちょっと楽しみにしていたのだ。
源泉かけ流し、ほのかに硫黄臭が漂い、窓からは南の島らしい木々が見えている。野趣満点とはまさにこのことだろうか。かけ流しゆえに湯温はちょっと熱め。浸かる分には問題ない熱さだが、長時間浸かるとのぼせてしまいそうだ。
湯向集落の住民は10人程度。古くから共同浴場として親しまれていたようで、建物は年季が入っていた。10人程度が暮らす集落ながら、偶然タイミングが合い、その日は4人での入浴となった。島の人から「明日はどこへ行くの?」なんて聞かれると、僕もすっかり島民気分である。
「じゃあ飲まんと・・・」島の人たちは“のんかた”がお好き
翌日、僕は口永良部島の散策してまわるのだが、行く先々で島の人々の輪に入ってしまい、17時ごろからお酒を飲んでいた。この島に限った話ではないものの、島の人たちは本当にお酒好き。すぐ集まっては焼酎やビールの栓が開き、“のんかた”(鹿児島方言で「飲み会」)が始まる。
「どこから来たの?まぁ遠慮せずに飲まんと・・・」
「こっちのお酒知らんと?なら三岳を飲まんと・・・」
「明日帰るの?じゃあもっと飲まんと・・・」
―――ちょっ、ちょっと待って!いったん落ち着こう!いったん落ち着こう!
・・・と、心で叫びながらも、僕はついつい飲んでしまった。下戸だというのに。
そこそこ飲んだあと、島の小学校の体育館でバレーボールをやろうと誘われたので、酔いも醒めぬままについて行く。ふらふらの足腰で2時間、バレーを楽しんだかと思えば、また飲み会!気が付けば午前3時をまわっていた。
正直な話、午前0時をまわったあたりから、あまり細かなことは覚えていない。
二日酔い・・・「そうだ、温泉へ行ってサッパリしよう!」
気が付いたときには、時計は午前8時30分をさしていた。しばらくボケッとしたあと、ここが、滞在先のへきんこ亭(湯向集落)であることを思い出す。どういう状態で寝ていたのかよくわからない。恐らくうつぶせで寝ていたようで、左腕には何故か僕の歯形がついていた。我ながらだらしがない・・・。
寝てばかりいても仕方がないので、なんとか身体を起こそうとすると、頭がガンガンと鈍く脈うつ感覚に襲われた。
―――あぁ、これが二日酔いってヤツなのか。
ふだん、日常的にお酒を飲まない僕にとって、二日酔いらしい二日酔いなんて経験はほとんどない。20代半ばにして、ようやく「これがそうなのか!」と気付けたのかも知れない。
とりあえずノドが渇いたので、スポーツドリンクをがぶ飲みした。
―――あぁ、身体が潤されていく・・・
いちいち新鮮な気持ちになるが、やはり頭は痛いし、どこかすっきりしない。
―――そうだ、温泉へ行ってサッパリしよう!
僕はふたたび湯向温泉へ向かった。
湯向温泉は24時間開放されている。湯向集落は元々人が少ないうえ、おまけに朝の時間帯だ。他に誰かくる気配もない。
―――これって、もしかして独り占め!?
どう見ても泉質は最高。今日も湯の花がたくさん浮かんでいる。見るからに身体に良さそうなこの温泉が、今、僕だけのためにある。かなり贅沢な状況かも知れない。
ふだん、生活をしていて朝から風呂に入るなんてこともない。どうせならじっくり堪能しよう。僕はゆっくり身体を洗い、じっくりお湯に浸かった。じんわり疲れが取れていくのを感じる。
―――あぁ、これは贅沢だ。
酔いは醒めた気がするけれど・・・
湯から上がると、酔いは醒めた気分だが、それでも少しふらふらする。どうやらのぼせてしまったらしい。ん、待てよ。そもそも二日酔いの身体に風呂って大丈夫なのか?
なんとなく気になった僕は、携帯を取り出し「二日酔い 風呂」で検索をしてみた。すると、Q&Aサイトでちょうど近い内容の質問をしていた人がいるようだ。
その質問に対し、ある回答者がこう答えていた。
二日酔い中に風呂に入り汗をかくというのは、脱水症状やめまいによる転倒等で、最悪死にますので、控えてください。
・・・死!??Σ( ̄□ ̄;
詳しく調べてみると、お酒を飲むことで体内の血液粘度がドロドロになり、さらに熱いお湯で血圧を上げるのは危険だということ。・・・どうやら、二日酔い+熱い温泉は良くない組み合わせだったようである。
ただ、僕の場合、起き抜けにスポーツドリンクをゴクゴク飲んだこと、これが良かったとも書いてあった。・・・少し、ほっとした。
湯向温泉は素晴らしい温泉。でも、二日酔いの時は気を付けて。
湯向温泉
無休、24時間営業、入浴料(大人200円、子供100円)本村港より車で約35分。【源泉掛け流し:含硫黄泉・ナトリウム・カルシウム塩化物泉】
まだまだ「島記事」あります。
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