【島×働く】あとを継ぐ(小値賀島の場合)

tanoshimasan

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小値賀島の場合

 先日(12月8日)、「出張!おぢか島(東京・原宿テラス)」というイベントにお邪魔しました。これは、長崎・小値賀島への移住を考えている人々や移住に興味がある人々に向けたイベント。小値賀島へ移住を果たした島民の方々を囲んでの語らう会でした。そこでのお話を一部ご紹介したいと思います。

あと継ぎ問題

 美しい伝統的古民家とゆたかな景色が魅力な小値賀島。移住者の受け入れ態勢も整っており、それぞれがそれぞれの仕事で島の産業を支えています。島に引っ越すと「焼却場で仕事をされている方も、トイレの汲み取り業者の方もみなが知り合いになる」というほど。狭いコミュニティだけに、都会では見えなかった部分まで見えてくるということでしょう。

 一方で、薬局やケーキ屋など、かつては存在していたものが無くなってしまう瞬間も目の当たりにしたと言います。代々続いたお店でありながら、「あと継ぎがいない」という問題に直面し、そのまま廃業してしまうそう。どこの地域でも抱える問題ではありますが、小値賀島も例外ではありません。あらゆる仕事で、“世代交代”が課題になってきています。

長らく親しまれている宿

 イベントの参加者の中に、“島で民宿を営んでいる方の息子さん”という男性がいました。息子さんと言えど、年齢は40代後半。高齢となった両親が営む民宿も「今後どうすべきか」という話になっているそう。「長らく親しまれている宿だけに、このまま閉めるわけにはいかない。しかし、40代後半となった今、イチからノウハウを学んで経営するのも難しい」と仰っていました。

 実はこのような問題は多く、島という狭いコミュニティの特性上、その問題の行く末も注目されてしまいます。もちろん、息子・娘があとを継ぐこともありますが、男性は「やる気のある移住者の方がいらっしゃれば、その方にお願いしたい。」とのことでした。島民の周辺を見渡せば、こんなきっかけもあるのです。

3代続く活版印刷業

 島には3代続く活版印刷の普弘舎という、活版印刷業の老舗があります。やはりあと継ぎ問題を抱えていたそうですが、つい最近、大学を出たばかりの娘・横山桃子さんがUターンを経てあとを継ぎました。現在は父の仕事の“見習い”ながら、島で忙しい日々を送っています

 一時は島を離れて本土の大学に通っていた横山さん。就職活動を経て、そのまま会社勤めをする選択肢もあったはずです。それでも、彼女から聞く言葉は「小値賀が好きで」「伝統を守りたくて」「継ぎたいと思った」。イベント会場には、普弘舎でつくられる印刷物、年賀状や名刺、冊子などが置かれていました。「最近では島外からも注文があって」横山さんは笑顔でそう言います。

手を挙げれば、やれる風土

 農業や漁業といった島では定番の仕事も同様。島では民宿のほか、民泊(みんぱく)と言う宿泊システムがあります。これは島の一般の民家に宿泊し、島の生活を体験すると言うもの。観光客に気軽に親しまれる一方で、本気で移住を考える人々にも好評だと言います。

 一般の民家ですからそこには当然日々の仕事があり、内容も農業、漁業、畜産業などさまざま。イベント内で見た映像では、小値賀島の民泊のオーナーさんが、九州のお笑い芸人相手に捕れた魚のさばき方をレクチャーしていました。

選ばなければ仕事はある

 今回のイベントで印象的だったのは、移住者の方々が「選ばなければ仕事はある」と仰っていた点。それはおそらく、ただ雑多に仕事が溢れているというわけではありません。島が好きで、島のためにと思える人に任せたいという心意気のような気がします。

 日刊楽島コラム
potaru.com

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