利尻島では、毎年8月下旬に「利尻島一周ふれあいサイクリング大会」というイベントが行われる。円形の利尻島は海岸沿いに一周、車道が通っているため、それがそのままコースとなっているようだ。
「利尻島の潮風を感じながらサイクリングを楽しみませんか?」
というホームページの気楽な募集に惹かれ、友人数名を引き連れて参加することにしてみた。
スタートと同時にフル加速で消えて行った先頭集団、僕らはのんびり進む
ありがたいことに、自転車は無料貸し出しだった。が、何やらかなり本格的なタイプ。身体を「つ」の字にして漕ぐようなヤツだった。しかもスタートライン周辺は、ヘルメットやひざ当てとかなり本格的な恰好でスタンバイしている人たちばかり。僕らは怖気づいて、列の後ろでのんびり進もうと決めた。
スタートのピストルが鳴ると同時にフル加速で消えて行った先頭集団を「すげー・・・」と眺めながら、僕たちはゆっくり走り始める。慣れないマウンテンバイクによろついた友人が早速転んでしまうアクシデントもあったが、いざ進み始めると、意外とスイスイ。あ、これ良いかも知れない。
徐々に景色を楽しむ余裕も出てくる。最高峰である利尻富士を中心に豊かな自然が広がる利尻島。歩けば本格的な登山コースらしいが、眺める分にはのどかで雄大で、見ているだけで癒されてしまう。鴛泊の集落を抜けると建物ひとつない、見晴らしの良い、高原のような風景に変わった。「空が広い」なんて改めて感じたのは初めてかも知れない。
利尻島一周ふれあいサイクリング大会
出発は利尻富士町の鴛泊フェリーターミナル。ここから反時計回りに1周してゴールを目指す。
なんだか様子がおかしい・・・「うわ、俺ら最後尾や!」
ところどころ自転車専用のサイクリングロードがあり、時々名前もわからない野鳥だか海鳥だかが、まるで先導車のようにとことこ歩いている。利尻富士町から利尻町へと差し掛かるころには風車も見えてきた。風車の向こうには、南の島とはまた違う青さの海が広がる。都会ではそうそう見かけない景色だけに、いちいち喜んでいた。
ところが、このあたりで何やら様子がおかしいことに気付く。参加者のべ400人以上と聞いていたこのサイクリング大会だが、僕らの周辺には誰もいない。これほど広々とした視界のなか、僕ら以外の参加者を見かけないのだ。ただ、幸いコースは離れていないようで、時々交差点で道案内するボランティアスタッフを見かけていた。これはもしや・・・。
僕らが過ぎたあと、車で追い抜いて行くボランティアスタッフを見て確信した。
「うわ、俺ら最後尾や!」
「案外余裕じゃね?」それは安易な考えで・・・
ようやくたどり着いた休憩地点・利尻町森林公園には、スタート地点で見かけた人たちがくつろいでいてひと安心。ところが僕らが支給されたジュースを飲む頃にはみんな出発してしまった(!)。僕らも慌てて出発する。
島の西側・利尻町の海岸沿いに入り、今度は車道を走る。さっきまで快晴だったはずの天気は曇りがかり、海岸に見える海は白波が立っていた。さらには起伏も激しくなってきた。スタートからしばらくは開放感あふれる景色だったが、ここでは淡々と長い道が続く。ここが正念場かも知れない。
そうこうしているうちに再び最後尾になったようで、やっと昼食ポイントのオタトマリ沼にたどり着いたころには、スタートから4時間半経っていた。ちなみにこのサイクリング大会は一周60.2km。
「車が時速40kmで走って1時間半の距離だし、案外余裕じゃね?」
出発当初は安易な想像をしていたが、ここにきてやっと半分である。
「あと、車道をまっすぐ進めば着くから頑張ってね。」
僕らの疲れも峠を越えたようで、再び余裕が出てきた。ひたすら上り坂が続いて汗もかいたが、夏と言えどさすが北海道。それほど暑くなく、むしろ海風が心地よかった。
久々に出会った自販機でジュースを飲んでいると、
「あと、車道をまっすぐ進めば着くから頑張ってね。」
と言うボランティアスタッフさんの乗る車が通り過ぎていく。いよいよ本気で追い抜かれてしまった・・・。僕らは僕らで開き直って、利尻富士をバックに記念撮影をしたり、海の風景を撮りながら進んだり。せっかくの利尻島、景色を楽しまなくてどうする。上り坂の先から集落が見えた。ゴールまであと少し。
スタートから7時間、ゴールの利尻富士温泉にようやくたどり着いた。ゴールは港と違って温泉というのがまたニクい。
登山ばかりが有名な利尻島だけど、自転車もなかなか。島を一周して、最後に温泉。気が付けば全身筋肉痛だったが、それはそれで心地よかった。
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