伝染病のペストという人間の力を超えた大きなものに襲われた時に、どう向き合って生きていくかが書かれた本です。
外界から遮断された都市で、人々は様々に振舞います。
そんな中で印象的だったのが下記。
「われわれは人を死なせる恐れなしにはこの世で身ぶり一つもなしえないのだ。全く僕は恥ずかしく思い続けていたし、僕ははっきりそれを知った。われわれはみんなペストの中にいるのだ、と。そこで僕は心の平和を失ってしまった」
ペスト
「誰でもめいめい自分のうちにペストを持っているんだ。なぜかといえば、誰一人、全くこの世に誰一人、その病毒を免れているものはないからだ。そしてひっきりなしに自分で警戒していなければ、ちょっとうっかりした瞬間に、他の者の顔に息を吹きかけて病毒をくっ付けちまうようなことになる。自然なものというのは、病菌なのだ」
ペスト
不条理に人間を殺してしまうペスト。
ペストに罹っていない人もいる中で「誰でもめいめい自分のうちにペストを持っている」とはどういうことなのだろう。
死は当たり前に訪れるから態々ペストに例えることもないだろうと考えると、人間の内に秘めた「恐怖」「狂気」「人を死たらしめる何か」などを表しているのだと思いました。
自分が生きていることは誰かを死なせているかもしれないということに気づかなければいけない、そしてそのことに鈍感になってはいけないと感じました。
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