【シリーズ・この人に聞く!第181回】絵本作家・イラストレーター 松本春野さん

kodonara

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社会や政治に求めつつ、自分の幸せのために働く。

――コロナ禍は続きますが、2021年の活動はどんなご予定ですか?

お父様に肩車される春野さん、お母様に肩車される弟さん。(長女さん撮影)

お父様に肩車される春野さん、お母様に肩車される弟さん。(長女さん撮影)

シングルマザーの絵本を企画しています。文章は別の方が書きますが「どうしてうちにはパパがいないの?」と4歳くらいになると周りの子が聞いてくるようになって、うちの場合は「本当のパパではないんでしょ?」と言われたり、パパという存在に気づき始める。私の周りにはシングルマザーが多いので、そんな話題が昨年はよく出ました。子どもにパパの存在を聞かれても、母も傷ついているから笑いに変えられるような返事がなかなかできない。明るい絵本を作って、不在を疑問に思っても突破していく親子がいたら、それを読み聞かせるだけでも楽しめる(笑)。いろんな家庭が他にもいっぱいあるということを伝えたい。犬を飼っている家もあれば、いない家もあり、お父さんがいる家もあれば、いない家もある。でも母子二人のチームって最高じゃない?そんなにパパが欲しけりゃ探しに行く?双眼鏡片手に…なんていうコミカルなお話にしたいです。

――それは楽しみです。「父親不在」を前向きに捉えられる絵本になりそうですね。他に、社会問題を見つめる作品を手掛けるご予定は?

東日本大震災から10年目となります。福島にある地元企業からの依頼で、もう一度震災をテーマにした絵本を制作予定です。福島問題は、放射線リスクの考え方や捉え方、原発の賛否がイデオロギーに結びついた部分もあり、こじれにこじれ、大きな分断が生じました。複雑でたくさんの要素が絡んだ問題を、分かりやすい浅い理解で描きたくないという思いが強くあります。今まで分かりにくく放置されてきた物語に、光を当てて描けたらと思います。

――そうですね。「分かりやすい答え」を求めず、「分かりにくさ」を大切にしたいという春野さんの視点にとても共感します。教育方針として、娘さんの習い事は何かされていますか?

子どもと家の経済状況をざっくり共有することを大切にして、「ママとパパ(パートナー)が合わせて稼ぐお金は、月によってバラバラ」というのを5歳の娘には伝えています。仕事状況によっては、娘がやりたいことが続けられない可能性もあると。そんな経済状況だけど、工夫しながら夢や希望を一緒に叶えようと。娘は今の所「うん、わかってる!」とさらりと言いますが、どこまでわかっているんだか。習い事は大切だと思っています。保育園や学校以外の居場所としても。初めての習い事はバレエ。娘の希望でした。幸い徒歩圏内に、月謝もリーズナブル、親のコミット率も他の教室に調べると格段にラク、さらにはレッスン内容も自由度があり、楽しいという最高の教室がありもう2年通っていて、母娘にとって最高の習い事になっています。

5歳を迎えてからはいっきに習い事が増えて、バレエの他に水泳とKUMONを始めました。水泳は小学校になってからでいいと思いましたが、体験したらとても楽しかった様子。家での特訓とは違い、スクールはメソッドができているのですんなり潜って目を開けられるようになりました。何よりも水の中は自由で気持ち良さそう。バレエを凌駕する楽しさだそうです。KUMONは、過去の教訓、『毎日コツコツ仕事ができるように』という想いを押し付けているかもしれませんが、私とパートナーの考えで始めてもらいました。人間が育てる限り抑圧はゼロにはならない。私は、いい親になることをどこかであきらめていて(笑)子どもの意思のみを尊重し、全力で応援するような親にはなれません。Give and Takeをどこかで求めてしまいます。娘がやりたい事やらせてあげるんだから、私のやってほしい事もお願いねと。娘の遊びに付き合ったら、私もやりたいことがあるので自分時間いただきますと。自分の権利に貪欲な母に、娘は呆れ顔で「ママはしょうがない」と言います(笑)。

――母の欲望は大切ですね。5歳で体づくりと勉強の基礎づくりをされていて、きっと大物になります!お子さんを含めて、未来の子どもたちがどんなふうに育ってほしいですか?

いろんな生き方が素敵ですが、自分が祖母や母から見せてもらったように、娘にも、私の心と体が健康なうちは、仕事をし続ける背中を見せたい。社会や政治に求めることはもちろん諦めず、けれども自分自身の幸せのために、せっせと働き続けられる人間に、私も娘もなっていけたら素敵です。最近「おかあさんみたいなおもしろい人になりたい」と言われたのがうれしかった。ゲラゲラ笑って楽しそうに生きているって。困難もそこそこあるのですが(笑)。職業は何であれ、おもしろく生きていければそれで100点だと思います。自分の経験から言えることは、仕事をして、お金を稼ぎ、自分の暮らしの決定権を誰かに委ねずに自分で決めていく生き方は、結果的に自己肯定感を高めて、人生をのびのびおもしろくしてくれています。未来を生きる子どもたちに、おすすめの生き方です。

それと、私は「選択的夫婦別姓」に賛成しています。誰にも迷惑をかけない問題なので早く法改正されてほしい。娘も松本という名前を変えるのは嫌なようです。パパもパパの名字が似合っていると。違う名前でも家族はチームとしてうまくいっていると認識しています。いろんな家族がその人らしくふるまえるように選択的夫婦別姓を心から望んでいます。

編集後記

――ありがとうございました!心に垣根をつくらない陽気さ。じっくり考える聡明さ。そして淡く儚く、誰もが遠い記憶に潜む風景。春野さんの絵には、子どもの頃に通過してきたキラキラした想いのカケラが詰め込まれているように思います。ご自身の豊かな経験が、これから益々作品に投影されることを楽しみに、応援しています!

2021年1月リモートによる取材・文/マザール あべみちこ

活動インフォメーション

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松本春野 著/イラスト
文渓堂
定価 1,650円(税込)
発売日 2021/1/25

フィギュアスケートのチャンピオンのねずみのリンは、山のスケートリンクにでかける途中、木の根っこにつまずいてしまい、せっかくの衣装を破いてしまいました! でも、大丈夫! 山のどうぶつたちがやってきて……。

Life(ライフ)
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くすのきしげのり 著 / 松本春野 イラスト
瑞雲舎
定価 1,430円(税込)
発売日 2015/2/27

町の外れに「Life(ライフ)」という小さなお店があります。でもお店といっても、だれかが働いているわけでも、なにかを売っているわけでもありません。ある冷たい風が吹いた日、一人のおばあさんが「ライフ」にやってきました…。冬の間も「ライフ」には、たくさんの人が訪れ、そしてすてきな春がやってきました。

ノノちゃんとママのおはなし ふたりの成長ものがたり
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松本春野 著
清流出版
定価 1,760円(税込)
発売日 2019/11/18

小さなノノちゃんと二人、森で暮しはじめたママ。動物たちとのふれあい、森の保育園、一緒にいる時間、離れている時間、新しいパパとの出会い。いわさきちひろの孫・春野さんが描く親子の世界!

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このページは株式会社ジェーピーツーワンが運営する「子供の習い事.net 『シリーズこの人に聞く!第181回』」から転載しています。

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