【シリーズ・この人に聞く!第137回】作詞家 もりちよこさん

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アニメ、キッズソング、J-POP、K-POP、CMソング&とジャンルを超えて活躍中のもりちよこさん。一度聴くとフレーズが耳から離れず、口ずさめる歌ばかり。子どもたちはいちはやく覚え、多くのヒットソングを生み出してきました。言葉の森を紡いできた幼少期を振り返り、これまでとこれから歌に込める想いについてじっくりお聞き致しました。

もりちよこ

作詞家。「パンパパ・パン」「たこやきなんぼマンボ」「ドコノコノキノコ」「回れトロイカ」「OK食堂」等おいしい歌から、ケロロ軍曹やおジャ魔女どれみ等のアニメ主題歌、平原綾香、堀内孝雄、タッキー&翼、天童よしみ、北翔海莉、ダイアモンド☆ユカイ、城 南海、速水けんたろう、LEGEND、ペク・チヨン、Hellow!Project等幅広く作詞。映画「サウンド・オブ・ミュージック」全曲の日本語吹替詞を担当(ドレミの歌を除く)。絵本「コイシテイルカ」(さかなクンと共著)が出版されている。韓国でも作詞家として活動中。

 Mori Chiyoko,もりちよこ(@mori_chiyoko)さん | Twitter
twitter.com  

合唱と創作童話、好きなことが礎に。

――もりさんは作詞家としてNHK 「おかあさんといっしょ」 の歌をたくさん手掛けられています。音楽の道に進まれたきっかけは何でしたか?

4歳頃ピアノの発表会での一枚。

4歳頃ピアノの発表会での一枚。

ヤマハポピュラーソングコンテスト(通称ポプコン)というアマチュアコンテストに大学時代に出場し、賞を頂きました。中島みゆきさん、チャゲ&飛鳥さんなど多くのミュージシャンを輩出したいわば登竜門です。学生時代からシンガーソングライターとしてギターを抱えて歌う一方で、早稲田大学合唱団に所属し混声合唱で歌っていました。母がコーラスをしていたのでその影響も受けて、歌うことが小さな頃から大好き。小学生の頃は西宮少年合唱団で歌っていました。

――生粋のコーラスガールなのですね。もりさんの歌はフレーズがリズミカルでとても耳に残ります。子ども時代は合唱のほかの習い事や、好きで続けられていたことは何かありました?

小4から入団した合唱団も相当忙しかったのですが、ほかにもたくさん通っていました。ピアノ、お習字、お絵かき、ジュニアミュージカル。一番心に残っているのは音楽との出会いでした。もう一つ、小3の時に担任の先生から「童話や小説を書いてごらん」と勧められて、楽しくて夢中で原稿用紙に物語や絵を書いていました。世界で一つだけの作品ができ上がると、母が原稿用紙を束ね、キリで穴をあけて紐で綴じ、仕上げにきれいなリボンを掛けてくれるのがとってもうれしかった。

――創作と合唱。今のお仕事に全部つながっているように思います。ご家庭にそうした環境がおありでしたか?

うちは薬局を営んでいたので、両親とも働いていて忙しくて、家にお手伝いさんがいました。母は本をたくさん読んでくれました。私の小学校の頃の夢は「大きくなったら文学者・もりちよこになりたい」でした。幼少期に病気をして、薬の副作用で顔がむくんでしまった私は、あまり外交的ではなく内に籠るタイプでした。

――ご病気された時間も、想像力を膨らませるエネルギーとして蓄えられたのですね。歌と創作と出会えて、今の原型がその時代に詰まっているようです。

今思うと、歌を書く仕事にたどり着いたのは、小さな頃から歌が好きだったことと、創作童話を楽しんで書けたことが原点となっている気がします。母が私を抱っこして、本を読んだり歌ったりしてくれたこと。その時の、胸に籠った声と、甘い香りは記憶に残っています。習い事の中で、ピアノは苦手でしたが合唱団で歌うのは好きでした。中学2年生頃からは、ギターやピアノの弾き語りを始めました。

三世代で楽しめ、残る歌は幸せ。

――大学をご卒業されてから広告のコピーライターに就かれました。順風満帆でご活躍されている中、再び音楽の世界へ。どのような経緯で転じられたのですか?

大学生の頃からギターを奏でて唄っていた。

大学生の頃からギターを奏でて唄っていた。

大学卒業後はシンガーソングライターになりました。昼は音楽制作会社でアルバイト、夜はライブハウスで歌いながら、デモテープを作ってレコード会社に持ち込んだり。24歳の時に父が亡くなって家業の薬局を手伝いに神戸の実家に帰りました。でもやはり歌いたい思いを断ち切れずに再上京。今度はリクルートでアルバイトを始め、当時広告全盛期でコピーライターという仕事があるのを初めて知りました。思いがけず広告が楽しくなって忙しくなり、段々音楽からは離れていってしまいました。

――広告から再び音楽の道を選択されたのはどうしてでしたか?

DVD「最新ソングブック わらうおばけ」に『かっぱなにさま?かっぱさま!』『あおうよ!』を収録。

DVD「最新ソングブック わらうおばけ」に『かっぱなにさま?かっぱさま!』『あおうよ!』を収録。

当時のリクルートはサークル活動の延長みたいな会社で、いい広告を作りたい一心で皆が燃えていました。その後、広告代理店に転職してさらにどっぷり広告に浸かって。でも広告は15秒とか、1週間とか期間限定で消えてしまいます。音楽はいつまでも人の記憶に残り口ずさめます。残るものを作りたいという思いが生まれたのです。シンガーソングライターとしてデビューするのは遅いけれど、作詞家ならどうだろう?広告の経験も積み木してできるのでは?と。

――その狙いがぴったり当たり、90年代後半から作詞家としてメキメキと頭角を現し、子どもたちの心を捕えるヒットメーカーとなりました。

「かっぱなにさま?かっぱさま!」は1999年当時、杉田あきひろお兄さん、つのだりょうこお姉さんに歌われヒットしましたが、2017年の今年になってから横山だいすけお兄さん、小野あつこお姉さんに再び歌われ、また新たな味わいとなって皆さんに楽しんで頂いてます。20代の若いパパママが子どもの頃に歌っていた歌を、自分の子どもと一緒に歌えるなんて素敵でしょう?私が作詞家になった時に夢見ていたことが実現したようでとても幸せです。

――かっぱの歌は我が家でも18年前大ブレイクしていました(笑)。もりさん作詞の歌はどれも口ずさみやすいですが、あの歌はどうやって作られたものですか?

かっぱの歌を作ろう!というお題が先にあって、いくつも提案したのですがどれもNGで…締め切りが迫っている朝方に頭をうんうん悩ませて「もう~~かっぱってなにさまや?……あ、、、かっぱさまや!」というひらめきがあって、それを歌にしたら「これいいね!」とやっとOKを頂けました。作った歌が18年も経ってから、また再燃するというのは作家冥利に尽きます。音楽も広告と同様、作っては消えて忘れられていく時代に、こんなふうに世代を超えて歌い継がれるのは本当にうれしいです。

子どもが好きなことを応援する親に。

――もりさんが所属されていた西宮少年合唱団はかなり有名です。YouTubeでもたくさん歌声が聴けますが、きっと大忙しな小学生でしたよね?

シンガーソングライターとして歌っていた23歳の頃。

シンガーソングライターとして歌っていた23歳の頃。

毎週末に合唱団の練習やコンサートがあって、一番遠くは金沢まで公演に行きました。活動を通して皆で一緒に歌う楽しさと競争心を知って、人生の基本になるような生き方を教えてもらったように思います。入団テストもある合唱団で、通っていた小学校から3人が同期で入団しました。西宮市内にある小学校から150人ほど集まり歌っていましたね。10年ほど前の2007年頃、「かっぱなにさま?かっぱさま!」を西宮少年合唱団の子どもたちが歌ってくれて喜びもひとしおでした。

――幸せな巡り合わせですね。もりさんが今子育て中のお母さんお父さんに思うことがあればお聞かせください。

子どもをアイドルにしたい!という親御さんが増えているように思います。その子が本当に望んでいることでしたら良いのですが。例えば、砂場で黙々と一人で遊ぶ子だとしたら、アイドルではなく工作教室のほうが楽しいかもしれません。子どもが好きなことを冷静に判断して見極めてあげられたらいいですね。身近な人で例えると、好きなことを極めて仕事にしているだいすけお兄さんやさかなクンは、お母さんもとても明るく朗らかな方です。きっと、よその子と比べたりせずに、わが子のことを心から応援してこられたんだろうと思います。

――子どもたちを観察して思うことはありますか?

楽しいことには目をキラキラさせるし、おもしろいことは夢中になるから、子どもはいつの時代でも一緒です。特に小学校に上がる前までの幼児の頃は、純粋でかわいい。今、いろいろな生きづらさを抱えている子どもも増えているようですが、突き抜けた才能をもつ子かもしれない。伸びる芽が摘まれないようにと思います。

――もりさんご自身の展望をお聞かせください。

「おかあさんといっしょ」は番組ができて今年で58年。58年前から歌い継がれている歌は、ひいおばあちゃんの代から4世代に渡って歌われていることになります。「かっぱなにさま?かっぱさま!」は18年経って再び巡ってきました。長い間、多くの親子に親しまれている番組に関わることができてとても幸せです。この先10年後も、へんてこな歌を作っていたい。世代を超えて楽しく歌ってほしいですね。

編集後記

――ありがとうございました!取材時に、もりさんが幼少期に作られた創作童話をお持ちくださって、なんと原稿用紙300枚に綴られた感動の大作。キラキラとした自由な作風と、丁寧な内容に現在のお仕事につながるすべてが詰まっていらっしゃると感じました。もりさんが在籍されていた広告会社のクリエーティブで私もほんの少しの間ご一緒させて頂いたこともあり、今回の再会は懐かしくも誇らしくもあってうれしい時間となりました。これからもステキな歌をお創りください。益々のご活躍を!

取材・文/マザール あべみちこ

活動インフォメーション

『ごめんください、めんください。』
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www.nhk-ep.com  

歌/だいすけお兄さん・たくみお姉さん
6/7発売
歌/だいすけお兄さん・たくみお姉さん
6/7発売

 おかあさんといっしょ メモリアルアルバム Plus(プラス)やくそくハーイ!|幼児・子ども番組|CD
www.nhk-ep.com  

[CD]「メモリアルアルバムPlus やくそくハーイ!」に『冬のないない気のいい王さまのお話』を収録。
歌/だいすけお兄さん・たくみお姉さん
6/7発売

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