陸前高田の高田地区につくられる新しい中心市街地アバッセたかた。オープンは4月27日の予定。今月15日の撮影だから、オープンまでもう2週間を切っている。
建物の中ではテナントの開店作業が行われている。同時進行で外構や周辺の道路では工事が進められている。工事現場から周囲を撮影してみるとこんな感じ。
「高田にしては立派」という感想が多い遊具はほぼ完成。予定では、オープン記念イベントとして、市内各保育所から園児を招いて遊び初めセレモニーが行われるという。楽しそうな遊具ではあるが、周りを見回せば工事現場だらけ。そんな環境で日常的に子どもたちに遊びに来てもらえるのか。「オープン後」を考えなければにぎわいは持続しない。
こちらは図書館。外観も内装もほぼ完成しているが、書籍の搬入や整理などの関係で7月オープン予定。「図書館がオープンしたら行きたいわ」という声はよく耳にする。「だってカフェもあるのよね」と読書だけでなく、カフェやテラスで友だちとおしゃべりするのを楽しみにしている人も多い。もしかしたら、図書館はアバッセ最強の集客装置になるかもしれない。であればなおのこと、地元の人たちと観光で訪れる人たちが交流できるような仕掛け、イベントを打ち出していかなければ。
アバッセの駐車場から西側遠くに見える青いフェンスは、第一中学の仮設グラウンド。近い将来、グラウンドがあるかさ上げ地からアバッセまで道路で結ばれるはずだが、2つのかさ上げ地の間には、まだ埋められていない深い谷間が存在。アバッセのオープンで、あれもこれもと期待感は膨らむが、この場所が工事現場の中の離れ小島のようなロケーションであるという現実はまだしばらく続くことになる。
アバッセ駐車場から南には、震災遺構のタピック45の建物や、第二線堤と呼ばれる高い防潮堤が見晴らせる。町のにぎわいの中心であるとともに、震災遺構を間近にできるというのは、南三陸のさんさん商店街にも共通している。観光で訪れる人をアバッセまで引っ張ってくるための仕組みがほしい。でなければ、せっかく一本松にたくさんの人が来てくれるのに、町をスルーして平泉や浄土が浜に向かわせてしまうという現状が繰り返されることになりかねない。
遺構としては、屋上の機械室でぎりぎり津波の難を逃れたことで知られる米沢商会の建物も見下ろせるはずなのだが…
米沢商会のビルは、アバッセのかさ上げ地よりも高かった。
ビルの屋上に小さく青く見えるのは、津波到達点を示すサイン。あの時の津波の高さよりも、中心市街地アバッセは低い場所だった。
万一に備えて、地震が来たらどこに逃げるか、つねに考えておかなければならないのは、新しくつくられた中心市街地でも同じこと。まさか災害への備えの大切さを実感してもらうために、この高さのかさ上げ地にアバッセを建てたわけではないだろうが、防災を学ぶイベントに適したロケーションといえるかもしれない。
幸いなことに、アバッセのすぐ北側には本丸公園と呼ばれる高台がある。いざというとき、まだ工事中の場所を横切って、どのようなルートで本丸へ逃げるのか、体が不自由な人にどう避難してもらうのか、オープン前にしっかり考えて、下見をしておかなければ。
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