大船渡に桜咲く。何事もなく無事にとの祈りとともに

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大船渡の高台にある加茂神社にて。

薄い雲間から差し込む光を受けて、花開いたばかりの満開の桜が輝く。

幾重にも重なる桜の花の間からは、大船渡湾が見下ろせる。

眼下の世界ではまちづくりが急ピッチ。新たに誕生する中心市街地キャッセン大船渡のオープンは4月29日。静かに花咲く神社の境内まで、工事の音が聞こえてくる。

これからの町のことやら、なんだかんだを思いながら眺めていたら、鋼鉄のかたまりが発する機械音とはまったく別物の、カラカラと心地よい音が背後から聞こえてくる。振り返るとそこに絵馬。桜の枝を揺らす風が、吊るされた絵馬を揺さぶって、絵馬同士がまるで木鐸のように和風の音を立てていたのだった。

風のいたずらは少し度が過ぎたようで、見ると絵馬が一枚、風に飛ばされて落ちていた。拾い上げてみるとそこには——。

何事もなく無事に過ごしたい

風はいたずらをしたのではなくて、教えてくれたのだった。大船渡の人たちの祈りを。この町に暮らす人々の安寧を、海辺近くに新しくつくられる町の未来を祈る想いを。

桜咲く加茂神社の境内には津波警報塔が建てられている。このタワーは町からもよく見える。そしてこの境内は6年1カ月と少し前のあの日、あの光景を目の当たりにした場所。

これからはいいことがたくさんあればいいと思う。でもその一方でこうも思う。ものすごくいいことなんて、そんなになくてもいいから、「何事もなく無事に過ごしたい」

咲く花の思いも同じかも知れない。

高台に建つ加茂神社に見守られる場所で4月29日、大船渡の新しい町がスタートする。

【東北の風の道】(6号)さよなら三月、また来て四月
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