【シリーズ・この人に聞く!第89回】「今でしょ?」で大ブレイクの東進ハイスクール スーパーカリスマ現代文講師 林修さん

kodonara

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「いつやるか?今でしょ?」のフレーズを知らない人がいないほど、日本中の老若男女を惹きつけた東進ハイスクールのCM。予備校では普通に使われているこのフレーズは、まさに時代を象徴しています。今回登場頂く林先生は現代文のカリスマ講師として当予備校で20年ものキャリアをお持ちです。どんな幼少期をお過ごしで、今があるのか?毎年多くの東大生を生みだす親として今の子どもたちへどんなメッセージを送りたいか、じっくりお聞きしました。

林 修(はやし おさむ)

1965年、愛知県名古屋市生まれ。東進ハイスクール、東進衛星予備校の現代文講師。東京大学法学部卒。長銀に入社後、半年で退社し、予備校講師となる。現在、難関コースを中心に担当し、特に東大受験生からは業界随一と言える圧倒的な支持を得ている。CMでのセリフ「いつやるか?今でしょ!」はあまりにも有名。2013年、トヨタのCMに起用されたことなどからテレビ出演オファーが殺到するようになり、一躍「時の人」となった。

 林 修のプロフィール|Ameba (アメーバ)
profile.ameba.jp  

5歳で百科事典全8巻丸暗記の神童!

――「今でしょ?」で一躍林先生の存在がお茶の間に知れ渡りました。経歴を拝見すると優秀過ぎてビックリ!とっても頭がいいお子さんだったのだろうなとお察し致しますが、幼少期にこんなことをした…というエピソードは何かございますか?

5歳の頃、七五三の記念撮影。百科事典を暗記する神童!

5歳の頃、七五三の記念撮影。百科事典を暗記する神童!

頭がよかったというよりも、勉強に向いている頭が偶然環境のなかで出来上がったというか…。本が好きで、普通の好きな度合いとはちょっと違っていました。何しろ本さえ与えておけばずっと読んでいるので、親にすれば手のかからない子だったと思います。絵本も読みましたが早々に書籍へ移行して読んだのを覚えているのは「こども百科事典全8巻」。これは全巻ほぼ暗記してしまいましたね。母方の祖父母に覚えた内容を聞かせると喜んでくれて、それがうれしくてまた覚える…という繰り返しでした。

――「すごいね!」と褒めてくれる人がいると俄然やる気が出ますよね。小学校時代はいかがでしたか?

父方の祖父が歴史画家でいろいろな話をしてくれたこともあって、小学2年生頃から歴史にのめり込みました。「日本歴史全集」という普通なら小学校高学年くらいに読む内容のものを、これまた読みこんでほぼ覚えてしまいましたね。好きだから何も抵抗がなかった。それから図書館に籠っては、いろんな書物をわら半紙に書き写すということをやっていました。今の子はそういうことたぶんやらないでしょう。これは決定的にラッキーな出来事でした。当時はコピー(複製)という存在がなかったのでね。

――いつも本に囲まれていたり、図書館に通われたり…ご家庭は勉強が好きになるような環境が備わっていらした?

父は本が好きな人でしたがサラリーマンで営業職でしたのでほとんど家にいなかったですし…。僕にとっては祖父母の影響が大きかったように思います。特に、母方の祖父にとっては初孫でしたからとてもかわいがってくれて本や紙芝居を買ってきて読んで聞かせるだけではなく、僕がそれを祖父母に読んで聞かせるのを楽しそうに聞いて褒めてくれました。そういう環境で本が大好きになりました。

――学校の成績は常に優秀でしたよね。習い事は何かされていましたか?

国語、算数、理科、社会は5段階評価でいつも5でしたね。体育と図工は3とか、体育だけは2を取ったこともあります。親に「勉強しなさい」と言われたことは一度もありません。最初の習い事は、体操教室。ちゃんと跳び箱を飛べるようにという親の計らいだったのでしょう。3,4年通いましたが、あんなの意味なかったです(笑)。その次に通ったのはフルート教室。これも4,5年通いましたが、ろくに練習もしませんでしたからまったくモノにならず。僕が思うに、本人がやりたいと思うこと以外、周りがやらせてもまったく意味がない。でも「向いていない」ということを知る意味では、いい経験だったと思います。

勉強に向いている処理能力の高い脳。

――林先生が楽しいと思える分野はスポーツや音楽ではなかった…ということですが、その後、習い事で興味のあることは何かされましたか?

7歳頃、歴史に興味があり高学年向けの本を進んで読んだ。

7歳頃、歴史に興味があり高学年向けの本を進んで読んだ。

公文の教室に通ったのが小学校高学年から。どんどん進んで楽しかったし、僕自身のその後にとって、あの体験は大きかった。中学生の時には、ほぼ高校数学が終了していました。

――勉強ができちゃって、できちゃって、しょうがない…ってうらやましいことですが、当時はどんな夢や希望をお持ちでしたか?

はじめは歴史学者に、次は物理学者に、それから経済学者に。学者になることしか考えていなかったんです。勉強が好きですし得意ですし、一方で他のことは著しく不得意なんですから(笑)。僕は名古屋の中高一貫の私立校へ中学受験して入学しましたが、受験塾にも通っていませんでした。今の時代と事情が違うとはいえ、僕のように、ほとんど受験対策せずに合格するというのは珍しかったかもしれません。

――聞けば聞くほど…勉強ができることが特技みたいですごいですね。でも進学校に集まる子は皆優秀ですからそれなりに努力も必要でしたよね?

中学に入学してから最初の中間テストは緊張しました。僕はそれほど学力的に高い子がいない小学校へ通っていたので、自分が本当はどの位置にいるのかわからずにいたんです。ですから、どのくらいの位置になるのかが心配で、本当に試験勉強しました。結果はクラス一番。それからもずっと一番でした。逆に勉強ができることは大したことではないと思うようになりました。頭がいいというよりも勉強に向いているかどうかです。

――既に備わっている力と、努力して手に入れるスキルとがあって、現役で東大へ行かれた?

幼稚園前に百科事典を覚えてしまったり、小学校低学年で歴史に目覚めて年表や系図を書いたり、百科事典を写したり…。情報が処理しやすい脳ができちゃっていた。パソコンでいうと早めにバージョンアップができて処理能力が速い状態。それがずっと続いているだけです。現役で東大法学部に合格していますが、率直に申し上げて、ほとんど苦労はありませんでしたね。別に威張っているわけでもなんでもないので、くれぐれも誤解のないようにお願いします。東大がスゴイと皆さんおっしゃいますが合格ラインは案外幅広く、今年の二次試験で見ても、ある子は360点、ある子は230点で合格している。130点も違うのに意外と門戸は広く開かれているものです。問題はその先で、自分の適性をいかして何ができるかを見いだせるかでしょうね。

自分の頭で考えないことは身につかない。

――日本がバブル経済の時代に大学生、就職は大手銀行へ。エリートコースを歩まれてこられたのに半年で退職。その後、予備校講師は天職でした?

小3頃、左後方一番大きな体格の林少年は、ずばぬけて成績優秀児。

小3頃、左後方一番大きな体格の林少年は、ずばぬけて成績優秀児。

大学時代はギャンブル、バイト、デート…と勉強以外のことばかりの最低な東大生でした。東大法学部を卒業して民間に就職する時点で、もうエリートではない。バブルの影響は世の中を浮つかせ、踊らせました。そういう雰囲気が好きでなくて、こういう所にいたくないなぁ…という気持ちでした。僕はいつも冷めた皮肉屋なので。退職後は…「空白の3年間」を経て、予備校講師となりました。最初はこの仕事も3年やって辞めようと思ったのですが、3年で借金が無くならなかったから続けました。気がつけば予備校講師となって20年以上になります。

――勉強が得意な林さんだからこそ、という気がします。今は子どもを取り巻く環境が変わっていますが人との関係性についてはどう思われますか?

僕はもともと友人が少ないのですが、それでよかったことのほうが多い。本にも書きましたが、仲がいい人なら余計一緒に飲む時間を少なくしたほうがいい。今の子は、興味のある同じテーマを共感してくれる人、自分にとって居心地のいい仲間をネットもあるし簡単に見つけられますよね。でも馴れあいの時間ほど無駄な時間はないと思います。特に男は馴れあい関係で集まれば愚痴や不満ばかり言う動物ですから。

――林先生は学校の教育現場ではいらっしゃらないタイプだと思いますが、今の学校に足りない点は何だと思われますか?

僕は関西方面の女子高で12年間教えた経験があります。もちろん、昼間の授業で教師をしていたわけではなく、私学の生き残りをかけて学内に予備校を設置した女子高に、授業後に講師として出講していたんです。その経験を通じて感じたのは、高校の先生は生活指導に時間を割かれ過ぎて学習指導まで手が回っていない。だから、そうしなくていい状況をつくるために家庭が子どものサポートをしないと。普通の学校の先生は、本当にお気の毒だと思うこともしばしばあります。一方で進学校では、生活指導に教員が時間を取られないので、学習指導が一層充実します。
もっとも、全員が受験勉強に励んで大学を目指す必要なんて、全くありません。勉強ができなくたって、今社会で大活躍されている方は多数います。しかし、自分の頭を使って考えることのできない人間は問題です。それは誰にでも必要なことであり、意味があるのだということを大人が教えるべきでしょうね。僕は、たまたま勉強に対する適性が高かったから、こういう仕事をしていますが、それぞれが、それぞれに向いた仕事を見つけていけば、勉強が不得意であること自体は全く問題ありません。こういうことも、授業でよく言うんですよ。

――国語の力はすべての学問に通じると思いますが、現代文を教えていらして今の子どもたちに感じることはどんなことですか?

明らかに国語力が落ちています。読書量が減っていること、コピーが氾濫しているのが大きな影響を及ぼしています。僕は自分の手で書き写した時間が長かったことがすごく大きい。文章を書き写すというのは大事。漢字も自然に覚えましたから、その手の問題集は一冊もやった覚えがありません。書けない漢字も読めない漢字もなかった。中学時代に夏目漱石、森鴎外、芥川龍之介、志賀直哉…など作家の全作品を読破していました。それも誰かにやれと言われたことではなくて、自分がそうしたいから読んだのです。ですから生徒には僕が言った通りではなく、自分流にアレンジして考えなさいと言っています。そういうものしか結局身につかない。誰かに言われたことは一瞬頭の片隅に置いても、抜け落ちていく。結局、自分の頭で考えたものしか残らないのです。

編集後記

――ありがとうございました!7月末まで一日もお休みなしのスケジュールびっしりで体調が心配ですが「これを順番にこなすことが楽しい!」と取材続きでお疲れなのにもかかわらず、たくさんエピソードをお話ししてくださった林先生。『野球、競馬、お笑い、シャンパン』の4テーマに興味があることをブレイク前からBlogに書かれていたら見事に今、全方面から仕事でお声が掛かっているそうで…なかなかの策士。辞典のような頭の良さを世の中にいかして益々のご活躍をお祈りしています!

取材・文/マザール あべみちこ

活動インフォメーション

『今やる人になる40の習慣』
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林 修 著  宝島社
定価 1,296円
発売日 2013年4月15日

テレビCMの影響で今や流行語になった『いつやるか? 今でしょ!』で大ブレイクした東進ハイスクールのカリスマ講師・林修氏の最新著作です。本書はずばり、何事にもグズグズしないで、『今やる!』ことの重要性を説く、生き方ノウハウ本です。やらないといけないのはわかっているのに、先送りして後悔、失敗してしまう。そうならないためにはどうしたらいいのか。40の習慣を著者が教えます。

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