――受験や格差社会で休むことを許されず競争を強いられ、追いつめられている子どもたち自身が「ホーム・レス」だと、表現されていますね。これから北村さんが目指す社会とは?
「ホーム」とは、心が安心して帰ることのできる場所であり、ありのままの自分を受け入れてもらえる「人とのつながり」です。私が本当に目指すのは「ホームレス問題の授業」を通した『ホームづくり』です。襲撃事件がくり返されるのは、社会の大人たち自身の「ホームレス」への差別や偏見、無知と無関心が最大最悪の要因で、その意識が子どもたちに反映しています。大切な子どもたちを被害者にも加害者にもしないためには、まず大人が自らの差別意識を問いなおし、変わっていく必要があります。親でなくても教師でなくても、私たち一人ひとりが出会う子どもたちの「ホーム」になれるよう願っています。
――学校のいじめ、ホームレス襲撃問題、そして子育てするお母さんの意識が実は根っこですべてつながっているということに気づかされてとても学びが多かったです。では最後に、北村さんがこれから特に力をいれたい活動はどんなことですか?
「自死遺児のサポート」です。私は12歳で自死遺児になってから、ずっと『お父さんを死なせてしまったのは私のせい』と罪の意識を抱えてきました。父の33回忌を過ぎた頃からやっと自分を責めることなく、自身の気持ちを語れるようになりました。自分を許すこと、認めることは、あるがままの自分を受け入れ肯定することにつながっています。人間はみんな間違うし、不完全なもの。私はようやくそんな自分も、父のことも、受け入れられるようになりましたが、「自殺はしてはならない悪いこと」「自殺したら地獄に行く」といった世間の罪悪視のなかで、今も声を上げられず、苦しんでいる自死遺族がたくさんいます。「自殺はダメだ」と声高に主張するよりも、当事者たちの心にもっと寄りそうケアが必要ですし、自死遺児たちがこれから希望をもって生きていけるよう、自分を許し肯定できるように、これからも励まし伝えてゆきたい。そして自死を防ぐためにも、周囲の人たちが、弱い立場、苦しい立場にある人への理解と関心をもてる社会になるよう、働きかけていきたい。誰もが、命を、自分自身を、大切に愛して生きていってほしいと、願っています。
編集後記
――ありがとうございました! 北村さんの本を読んで、講演会でのお話しに、そして取材で話してくださる言葉一つひとつに、たくさん涙を流してしまいました。私の場合、子どもが幼少期の時は仕事に追われている上、支えてくれる人がたくさんいたので、後ろを振り返る余裕もなく楽しく過ぎていきました。でも、かわいかった子も難しい思春期を迎え、ワケがわからない親子関係になっていた時に出会ったのが北村さんの一冊でした。これからも迷ったり悩んだりしたら、「自己尊重トレーニング」を思い出して進んでいこうと思います。人として生きる限り誰でも参考になる考え方です!
取材・文/マザール あべみちこ
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