JRいわき駅前大通りはいまイルミネーションに輝いています。駅から約400メートルにわたって灯されたLEDの数はなんと14万個。今年で4回目とのことですが、毎年LEDが増えているそうです。この時期になると全国各地でイルミネーションが灯されますが、いわき駅前大通りの光はピンク色と白のLEDがつくりだす薄紅色。大通りの街路樹すべてが同じ色に輝く様は、まるで桜並木。
そんな風に思っていたら、地元の方が教えてくれました。
「このイルミネーションはね、東北でも有数の桜の名所、富岡町の夜の森の桜並木を再現したものなんですよ」
双葉郡富岡町の夜の森周辺には帰還困難地域が多く、桜並木がある住宅地周辺もバリケードで閉鎖されて立ち入りできなくなっています。そんな地域、そしてもう少し線量が低い地域からも、いわき市に避難して、そのまま市内で暮らし続けている人たちがたくさんいます。桜のイルミネーションには故郷への思いが込められているのです。
とはいえ、現実に目を転じると残念な話もあります。
原発事故の被害が大きかった双葉地域から避難している人たちと、元々のいわき市の住民の間に軋轢があるというのです。それは避難生活が始まった直後から言わ続けてきたこと。たとえば病院の待ち時間が長くなった。いわきに税金を納めていないのにいわき市のサービスを利用しているのはおかしい。避難者が多くなって賃貸住宅の家賃が高騰した。そして、多くの対立の背景にあるのは原発事故の補償の差からくる不平等感。殴り合いのケンカが頻発して救急車の出動が増えたとか、双葉郡から移り住んだ人の車にキズが付けられたり、タイヤがナイフで刺されたりという、悲しすぎる出来事までありました。
双葉地域の知人の中にもいわきで暮らしている人たちがいます。しかし、その人たちが対立の渦中にいるようには思えません。いろいろな人がいるから、そして1人の人間の中にもいろいろな感情があるから、時として対立が露わになることもある。だけどその一方で、浜通りという同じ地域にに暮らしてきた仲間としての連帯感も強い。とても強いと思うのです。震災以前から双葉郡の人がいわき市の高校に通うのは当たり前だったし、双葉郡で働くいわきの人も大勢いました(東電の原発や火力がいい例ですね)。行政の境界をこえてマブダチがいる。大切な先輩やかわいい後輩がいる。だから、たとえば双葉郡の神社が震災で壊れたままになっていると聞けば、「何とかしたい」といわきの人たちが心を痛める。たとえ補償が打ち切られることになっても、いわき市に住民票を移すつもりだという人も少なくありません。
駅前大通のイルミネーション「いわき光のさくらまつり」を主催したのは、いわき青年会議所。浪江と南双葉の青年会議所との共催なのだそうです。まさに行政の境界をこえて、地域の人々のつながりが実現した灯りです。
「いわき光のさくらまつり」は1月11日(祝)まで。17:00~23:00、毎日点灯しています。人と人をつなぐ希望のさくらをぜひ見に来てくださいね。
いわき光のさくらまつり2015
JRいわき駅前大通
最終更新: