髪の毛が白くなる仕組みと要因について

sKenji

公開:

0 なるほど
2,474 VIEW
0 コメント

歳とともに増えてくる白髪。しかし、個人差も大きく、人によっては黒髪のままの人もいます。最近、私のまわりでも白髪がちょっと話題になっているので調べてみました。

白髪になるメカニズムについて

いったいどのような仕組みで白髪になるのか。とうの昔に判明していたのかと思いきや、実はそれがわかったのは比較的最近のことのようです。

解明したのは東京医科歯科大学・難治疾患研究所・幹細胞医学分野の西村栄美教授らの研究グループです。2009年6月、国際科学誌Cell(セル)にその研究結果が発表されています。

 幹細胞がストレスに抵抗し品質を保つ仕組みを解明 | 研究成果・プレスリリース | 国立大学法人 東京医科歯科大学 難治疾患研究所
www.tmd.ac.jp  

気なる白髪の仕組みについて、東京医科歯科大学・難治疾患研究所のWEBサイトには、

黒髪のもとになる色素幹細胞がゲノム損傷ストレスにより分化成熟し自己複製しないため幹細胞が枯渇し白髪になることが明らかになりました。

幹細胞がストレスに抵抗し品質を保つ仕組みを解明 | 研究成果・プレスリリース | 国立大学法人 東京医科歯科大学 難治疾患研究所

と書かれています。

生物学の基礎知識がある方ならばこれだけで髪が白くなるメカニズムについてわかるのかもしれませんが、高校時代の授業で「生物」を選択していなかった私には、何を言っているのかよくわかりません。そこで、生物学用語などを調べてみたところ、どうやら次のような仕組みであることが理解できました。

まず、髪が白くなる仕組みの前に、髪の毛ができるメカニズムについてご紹介します。

頭皮にある毛穴の奥には毛乳頭と呼ばれる組織が存在します。この組織の周りには毛母細胞と呼ばれる細胞があり、髪の毛はこの毛母細胞が増殖することにより伸びていきます。

髪はもともと白い色をしているのですが、毛母細胞が増える時に近くにある別の細胞、色素細胞が作りだしたメラニン色素を取り込むことにより、着色されるそうです。

色素細胞は色素幹細胞が分化して作られます。幹細胞とは細胞分裂を行い、「自分と同じ幹細胞を作る能力」と「体を作る細胞に分化する能力」を持った細胞のことです。

分化とはそれまで役割を持っていなかった細胞が変化して役割を持つことで、今回の例でいいますと、髪の毛の色を作りだす「色素細胞」に変化することです。

つまり、色素幹細胞は分裂して自分と同じ色素幹細胞を作るとともに、その一部が髪の着色に欠かせない色素細胞に変わります。

2009年に発表された研究によると、色素幹細胞はゲノム(※遺伝情報)がある一定以上損傷すると色素幹細胞を作りだすことができずに全て分化する、つまり色素細胞となってしまうそうです。

色素幹細胞が作られなくなり無くなってしまうと、新たな色素細胞も作りだされなくなります。すると髪の毛への着色も行われなくなり、髪が白いままとなります。

白髪を引き起こす要因について

髪が白くなる仕組みはわかりましたが、色素幹細胞のゲノムを壊す要因が気になります。その主な原因としては次のことが考えられています。

■白髪を引き起こす原因と考えられている主なこと

○紫外線、放射線
紫外線や放射線により色素幹細胞のゲノムが損傷する恐れがあります。

○加齢
遺伝情報は歳を重ねるにつれ、少しずつ壊れていきます。

○遺伝
両親からの遺伝も、白髪となる要因のひとつと考えられています。

○過度なストレス
過度なストレスにより、髪が白くなることが指摘されています。

○栄養バランス
過激なダイエットなど、栄養バランスが崩れると細胞の老化が早まると言われています。

白髪の予防策について

白髪のメカニズムについては解明されてきてはいるものの、現時点では白くなった髪を黒くする薬などはまだ開発されていません。そのため色素幹細胞のゲノムが壊れるのを事前に防ぐ、予防が重要になってきます。

色素幹細胞のゲノム損傷を極力減らすためにできることとして、次のことがあります。

○紫外線の強い夏場などは帽子や日傘などを使用して、頭皮に紫外線があたらないようにする。

○十分な睡眠、適度な運動、趣味などを通じてストレスをためないようにする。

○規則正しく、バランスのとれた食事を取る。

ちなみに、「白髪を抜くと黒髪が生えてくる」という話を聞いたことがありますが、髪の毛を抜いたとしても色素幹細胞が新たに作られることはなく、一度白髪になった毛根からは黒い髪は生えてこないそうです。

白髪は生えてきたら肯定的に考えたい

古来から人は白髪について大なり小なり気にしていたようです。残されている記録のなかで最も古く白髪染を行っていたのは、齊藤実盛(さいとうさねもり)という平安時代末期に活躍した武士だそうです。実盛は戦場で敵に老いをばかにされるのが悔しくて髪や髭を黒く染めていたといいます。1183年、彼が「篠原の戦い」で討ち死にした際に髪を黒く染めていたことが平家物語などに記載されています。

白髪はときに老いの象徴のように否定的に思われがちかもしれませんが、ロマンスグレーなど肯定的な見方もあります。

個人的なことを言えば、白髪の予防はするものの、生えてきたらそれはそれで否定的にはとらえずに、素敵なロマンスグレーになったと考えたいと思っています。ただし、それ以前に薄くなってきた頭髪をこれ以上、いかに進行させないかを考えないといけませんが(笑)

参考WEBサイト

 幹細胞医学分野 | 難治病態研究部門 | 研究部門・分野紹介 | 国立大学法人 東京医科歯科大学 難治疾患研究所
www.tmd.ac.jp  
 iPS細胞から毛包再生、重い脱毛症の人の力に | ヒト幹細胞情報化推進事業(SKIP)
www.skip.med.keio.ac.jp  
 理容の歴史 歴史篇
www.riyo.or.jp  
 斎藤別当実盛 | 熊谷デジタルミュージアム
www.kumagaya-bunkazai.jp  

Text:sKenji

最終更新:

コメント(0

あなたもコメントしてみませんか?

すでにアカウントをお持ちの方はログイン