【防災週間】被災地支援に駆けつけるボランティアの受け入れ訓練

iRyota25

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地震、津波、豪雨、豪雪、竜巻、火山の噴火などさまざまな自然災害が発生する日本列島。9月1日の防災の日を中心に、防災週間(2015年は8月30日:日曜日から9月5日:土曜日まで)にはさまざまな防災訓練が開催されます。避難訓練、小学校や幼稚園・保育園での引き渡し訓練、消火訓練、炊き出しや水の浄化の訓練……。

でも、ちょっと待ってください。これらの訓練のほとんどは、自分たちが被災した場合を想定した訓練ですよね。大規模災害の現場には「被災者」のほかに「支援者」つまりボランティアと呼ばれる人たちがたくさん入ってきて、復旧に向けてのさまざまな活動を行うことになります。災害被災地でボランティアは欠かせない存在。しかし、ボランティアを対象にした訓練はあまり聞いたことがありません。

8月30日、静岡県三島市でボランティア受け入れの訓練が開催されました。被災地到着から活動開始、そして活動を終了して撤収するまでの流れを、実際のボランティア団体が参加して行った訓練です。

「少しでも被災地の力になりたい!」現地に駆けつけたと想像して、ボランティア活動の流れをご覧ください。

ボランティア、最初に目指すはボランティアセンター

被災地は混乱しています。とくに災害が発生した直後には、人命救助や捜索、孤立した地域へ物資を届けるための道路啓開(がれきや土砂などで埋もれた道路を開く作業)のために消防、警察、自衛隊などが出動してシビアな活動が繰り広げられています。基本的にボランティアが被災地で活動を始めるのは、この災害直後の状況がある程度落ち着いて、被災地に災害ボランティアセンターが立ち上げられてからになります。

災害ボランティアセンター、通称「ボラセン」「VC」とは、社会福祉協議会や市町村が主体となって災害時に立ち上げる組織。ボランティアの受け入れ窓口であり、支援ニーズがある場所へボランティアを送り出す一方、地域の支援ニーズを吸い上げて、災害復旧が円滑に行われるように調整する司令塔のような存在です。

ボランティアとして被災地支援に行く際は、まずはボラセンを目指しましょう。ボラセンの立ち上げは、市町村のホームページなどに掲載されます。TwitterやFacebookなどで情報を仕入れた場合でも、必ず市町村などのホームページで活動開始時期や注意事項などを確認してください。

おっとその前に、ボランティア保険に入ってますか?

ボランティア活動保険とは、活動中の事故やケガ、対人対物の賠償責任が発生した場合にも適用される保険です。被災地での活動では自分自身のケガなども心配ですが、他者を傷つけたり非常に高価なものを壊したりといったリスクもあります。ボランティア活動を行う際には、必ず加入が必要です。

全国社会福祉協議会が実施するボランティア活動保険には、基本タイプと天災タイプのそれぞれに補償額の異なるAプラン、Bプランの計4タイプがありますが、災害ボランティアの場合は天災Aプラン(年額430円)か、天災Bプラン(年額650円)に入ることになります。

補償期間は年度単位の1年間(4月1日~3月31日)。補償内容は下記のリンクでご確認ください。たとえば死亡保険金はAプランでは1200万円、Bプランでは1800万円ですが、対人・対物の賠償責任保険金が限度額5億円ついています。

 ふくしの保険「ボランティア活動保険」
www.fukushihoken.co.jp  

問題はボランティア保険をどこで申し込むかです。残念ながらインターネットでの加入はできません。基本的にはお住まい、あるいは出発地等にある社会福祉協議会で手続きすることになります。

大規模災害の際には、被災地のボランティアセンターでの手続きが可能になるケースもありますが、災害復旧に尽力している地元の負担を軽減するため、出発前の手続きが推奨されています。(ボランティア保険は被災地への往復途中の事故も対象なので、出発前の方が安心です)

受付:なぜポストイット2枚?

保険もちゃんと加入しているし、ボラセンにも到着。さあ、活動だ!

ところで、どこでどんな活動をしますか? ボランティアの頑張りたい気持ちや能力と被災地の支援ニーズをマッチングしてもらうのが、ボラセンの重要な機能です。まずは受け付け。ここで「ボランティア保険に入っていますか?」と確認されます。(受付だけではなく、いろいろな係の人から確認されるのでご覚悟を)

受付では、氏名・住所・連絡先などを記入。内容を確認してもらいボランティア登録証を受け取ります。これはボランティア活動で来訪していることを示す身分証明のようなものです。

さらに名札(ガムテープ等にマジックで名前を書く場合もあります)とポストイットを2枚渡されて、すべてに名前を記入するように言われます。

名札はともかく、どうしてポストイット? しかも2枚?

ボラセンのキモ「マッチング」

災害被災地にはさまざまなニーズがあります。ガレキ撤去、家屋からの泥出し、家具等の搬出、子供たちの遊び相手(親たち大人の手を空けるための重要な任務)、被災した写真のクリーニング、炊き出し、マッサージなど多種多様です。もちろん活動場所はいろいろですし、作業内容のレベルもまちまち、必要とされる人数もケースバイケース。

とにかく人手が必要というニーズもあるでしょう。資格や技能、特殊な経験を活かせる活動内容もあるかもしれません。

多彩なニーズとボランティアの摺り合わせをして、その日の活動チームを決めていくのがマッチングと呼ばれるプロセスです。

優先順位の高いニーズに対しては、「とにかく体力に自身のある人、10人来て~」と人が集められることもあります。必要とされる人数で組み合わせてチームを攻勢する場合もあります。逆に、ボランティアが自分のやりたい活動を選ぶ方法もありえます。

とにかくここで、その日の活動内容と、一緒に活動する仲間が決まるのです。

リーダーやった方が充実です

活動内容とチームが決まるや、「誰かリーダーを決めてください」との指示。そう言われると、リーダーなんて責任が重そうでイヤだなとか、仕事が大変なのではと思うかもしれませんが、要するにチームとボラセン、活動先の人たちとボラセンをつなぐ連絡係のようなものです。依頼されたお宅の方と話す機会も多いですし、活動後にボラセンのスタッフと連携する場面もあるので、積極的に買って出た方が充実したボランティア活動になりますよ。

さて、リーダーになると、上の写真のように資料を挟んだクリップボードを手渡されます。クリアファイルの場合もあるし、書類入れのような形状の場合もありますが、ボランティアニーズとボランティア参加者の名前を記したシート、活動場所への地図、活動内容の注意点、活動後に依頼者に書いてもらう終了報告書などの書類がセットされています。

ここで先程のポストイットの出番になるわけです。

チームが決まったらシートの参加者欄に自分の名前を書いたポストイットを貼り付けます。上の写真では書類の下の枠の部分がポストイットとぴったりサイズになっていて、いちいち記入しなくてもペタッと貼るだけ。ポストイットのいいところは、マッチングをしている途中で急なニーズが入るなどしてチームを組み替える必要が生じた際など、名前入りポストイットを貼り替えるだけでチーム編成を変えられる点です。実際経験してみると、なるほど納得なのです。

ポストイットが2枚あるのは、リーダー用とボラセン用のクリップボードに同様に氏名を貼り付けるから。場所によっては、ポストイットを貼ったシートのコピーをとってリーダーに手渡す場合もあります(ポストイットだと剥がれやすいから。でも、コピーだとポストイットの字が読みにくくなる場合も…)。ポストイットにそれぞれの携帯電話番号を記入することもあります。

やり方はボラセンによって、また地域によっても違います。日々のボラセン活動の中での改善や創意工夫がノウハウとして蓄積され、反映されていくからだと思います。

オリエンテーション:土地カンがモノを言う

チームを組み、書類をまとめたら、いよいよ活動前のオリエンテーション。活動内容や活動場所についてのブリーフィングです。ここでいちばん問題になるのが、外部からやってきたボランティアは、基本的に土地カンがないということ。

たとえ地図があったとしても町名や番地だけで目的地にたどり着くのは至難です。現場までの目印など念入りに説明してもらいましょう。どうしても分かりにくい場所だったりすると、ボラセンの人に案内してもらったり、前日などに近辺で活動した人とチーム人員をトレードしたりということもあります。

もうひとつ問題なのが交通手段。現地までどうやっていくのか。撤収はどうするのか。徒歩や自転車から、自家用車、ボラセンの人に送迎してもらう、あるいはバスによる送迎まで、交通手段もケースバイケースです。不安のないようにしっかり打ち合わせしておきましょう。

出発前に資機材の貸し出し

ここまでの事務的な手続きが完了したら、スコップや1輪車、軍手、土のう袋、場合によっては建設機械などの資機材の貸し出しを行います。マッチングの際に使ったシートに必要と思われる資機材が記載されている場合もありますし、状況によってはリーダーがチームやボラセンの人と相談して、追加したり減らしたりという場合もあります。他のチームの活動にも配慮しながら、資機材を借り受けてください。(とはいえ、行ったことのない現場での作業となると、どんな道具がいるか想像もつきませんよね。そんな時は同様の作業を経験した人をつかまえて聞いてみる。それでも現地で何かが足りなかったりした時には、チームのみんなの創意工夫で乗り切る。そんな現場力を発揮するのもボランティアの醍醐味のひとつです)

準備ができたら出発です。今日も1日、ご安全に!!

ニーズはどうやって集めるのか

ここまでは、被災地に支援にやってきたボランティアの側からボラセンを見てきましたが、活動する上で絶対に欠かせない「ニーズ」は、どこからやってくるのでしょう。

実はニーズは努力して集めるもの。空から自然に降ってくるものではないのです。

ボランティアセンターを立ち上げる社会福祉協議会や自治体とはいえ、すべての職員・スタッフが日常的に地域住民との関わりを持っているわけではありません。災害が発生した時には、住民からの要請を直接受けるほか、町内会や民生委員、警察や消防、地域を巡回する役場スタッフなど多彩なチャンネルから、どの地域、どこのお宅にどんなニーズがあるか、情報を吸い上げます。

ニーズとは、その地域、あるいはその人が「困っていること」です。しかし、困っていても「手助けしてください」と言えない人が多い、たいへん多いのです。

状況はほとんど良くなっていないのに、ニーズの件数が減ってしまい、せっかくボランティアが集まっているのに作業がないという状況も起こりえます。ニーズが枯渇しそうになった時には、ボランティア活動を休止する日を設けて、ボラセンのスタッフが総出で町をまわり、困ってるのに我慢している人たちのニーズを掘り起こすケースもあるくらいです。現場で作業をしていると、「ボラセンで事務仕事をしている人たちも肉体労働に駆り出せばいいのに」という人もありますが、地元のいち早い復旧のために、ボランティアを効率よく配置するというたいへん大切で、かつ困難な仕事にボラセンのスタッフは取り組んでいるのです。

作業終了⇒撤収⇒報告、そしてお疲れ様!

現地での作業が終了したら、依頼主さんに署名をもらいます。また作業が完了したか、継続して作業が必要か、その他の要望などを聞き取り、あるいは記入してもらいます。ここで依頼主さんとうまくコミュニケーションをとって、「実はボラセンには言ってなかったんだけど、こんな困ったことがあるの」とか、「うちはもう大丈夫だけど、3軒先のお宅は83歳のおじいちゃんの一人暮らしなのよね」といったニーズを聞き出すことができれば、ボラセンと連携してさらに活動を深めていくことができます。経験豊富なボランティアリーダーになると、活動のかたわら、休憩時間などに近所の聞き取りをして回る人もいます。「せっかくボランティアに来ているのだから少しでもその地域の役に立ちたい」という気持ちが、地域やボラセンのスタッフたちに届いて、うまく回るようになってくると、ボランティアとしての達成感は並大抵のものではないみたいですよ。世の中には「ボランティアのプロ」と呼びたくなるようなカッコいい人たちがたくさんいるのです。そんな人達と出会えるのも実はボランティアの喜びなのです。

作業を終了し、ボラセンに戻り、資機材を返却したら、最後の仕事は報告書の提出。報告書といっても堅苦しいものではなく、作業を進める上での問題点や、継続活動の場合の課題(スコップが足りなかったとか、人数が多すぎたとか)、新たに聞き取りしたニーズなどをボラセンのスタッフの人たちにバトンタッチしていく作業です。スタッフの人から「貴重な話をありがとう」と言ってもらえるとうれしいものですよ。

ボランティアの1日の作業はこれでほぼ終了です。あとは宿舎に帰るなり自宅に向かうなり、仲良くなった仲間と食事をするなりアフターの過ごし方はさまざまでしょう。ただ、覚えておいてほしいのは、ボランティアのみなさんが帰路についた後、ボラセンのスタッフたちは、翌日の作業内容を調整したり、適正な人数、資機材の配分について話し合ったり、ニーズのシートを作成したり、夜遅くまで作業を続けているということです。午前様も珍しくないと聞いたこともあります。

災害ボランティアに参加したら、被災した人たちのために働くのはもちろんのことですが、ボラセンの人たちを少しでもサポートできるように活動できたらいいな。

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日本列島全体が被災してしまうようなスーパー大災害でも発生しないかぎり、どんなに大きな災害であっても被災者より被災していいない人、つまり支援者になる可能性がある人の方がはるかに多いのです。

災害が発生した時には、自分自身やご家族など大切な人たちの安全を守ることが第一です。しかし、安全が確保・確認できて、人助けの余裕があったなら、ぜひ困っている人や地域の支援というアクションをとってほしいと思います。

それにしても――。訓練とはいえ、状況を想像しながら、出来るだけリアルな訓練になるよう努めていた三島市の災害ボランティア本部の方々には頭が下がる思いでした。きっと訓練の後も、延々と反省会議を続けたんだろうな……

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