65年前に始まり今も続く朝鮮戦争

Rinoue125R

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1950年6月25日早朝4時、38度線の全域で北朝鮮による砲撃が始まり、4時30分、雨の中を北朝鮮軍が韓国に攻め入ったと言われる。朝鮮戦争の始まりである。

破壊されたソウル市内の建物(Wikipediaより)朝鮮戦争は、分断された同国人同士が戦った戦乱。韓国では「6・25動乱」、北朝鮮では「祖国解放戦争」とよばれている
破壊されたソウル市内の建物(Wikipediaより)朝鮮戦争は、分断された同国人同士が戦った戦乱。韓国では「6・25動乱」、北朝鮮では「祖国解放戦争」とよばれている

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朝鮮半島は1910年の韓国併合の後、日本が第二次世界大戦で敗れたのを受けて、北緯38度線を境に、北側がソ連の、南側がアメリカの占領支配下に入る。そのまま戦後世界は東西冷戦に突入し米ソの覇権争いが深刻化。そのような流れの中で1948年8月13日、南側は大韓民国(韓国)を宣言、翌月の9月9日には、北側は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を宣言していた。

朝鮮戦争が始まる以前から、南北ともに朝鮮半島の再統一を目指していたとされるが、開戦当時、南北の軍事力は北の20万人に対して南は10万人。何より北がソ連から譲り受けた多数の戦車を持っていたのに対して、南は戦車ゼロだったという。

北朝鮮が砲撃を開始して1時間半後、平壌放送が「アメリカ帝国主義者たちの扇動によって南朝鮮かいらい軍が38度線全域で北進を開始した。英雄的朝鮮人民軍は、敵の攻撃に反撃を加えつつある」とラジオ放送する。南側の第一報は韓国放送による7時のラジオ放送で、北側の大規模攻撃を告げるものだった。さらに驚くべことに、李承晩韓国大統領に報告があったのは、砲撃開始から6時間後の午前10時だったといわれている。開戦劈頭の状況は、北の奇襲に対して南が混乱に陥るというものだった。

6月28日に日付が変わった直後には北の戦車部隊がソウルに進軍。韓国軍は未明のうちにソウルを脱出。韓国政府も水原、釜山と移動を繰り返し南へ南へと追い詰められていく。いよいよ朝鮮半島を逃れて日本に亡命政府を置くことまで検討されていたという。

つまり、対馬海峡が最前線になる可能性もあったわけ。しかしアメリカなど国連軍の踏ん張りで釜山を死守した後に反攻に転じた南側は、北を中国国境近くまで押し返す。そこに抗美援朝(米国に抗し、挑戦を援助する)を掲げる中国人民解放軍が参戦し再び前線を南に押し戻し、38度線付近で戦線は膠着。

そして開戦から3年2カ月後の1953年7月27日、板門店で北朝鮮、中国、国連の3
軍の間で休戦協定が結ばれ、戦争は停止された状態にある。あくまでも北進して朝鮮半島の統一を主張した李承晩韓国大統領は、停戦協定を不服として調印式を欠席した。

3年の年月を経て、国境線は暫定的にほぼ開戦前と同じラインに戻った(開戦前には南側だった古都・開城は北に奪われた)。その間の犠牲者は南北あわせて400万人と言われる。総人口の5人に1人が死亡した計算になる。しかもその多くは一般民衆で、戦闘による死者ばかりでなく、占領した側や奪還した側の支配者によって殺害された人が相当数にのぼるとされる。

2015年6月25日、フランスの通信社AFPによると、北朝鮮の国防委員会は朝鮮戦争勃発65年に合わせた声明で、「悪党の米帝国主義者たちをバラバラに切り刻むための世界規模の反米闘争」に参加するよう各国に呼びかけたという。

 北朝鮮「米帝を切り刻め」 朝鮮戦争65年で世界に呼び掛け 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
www.afpbb.com  

1953年に結ばれたのは休戦協定であって、朝鮮戦争はいまもまだ停戦しているだけの状態にある。しかも、その協定にすら韓国は署名していない。さらに、停戦協定の当事者が、北朝鮮と中国、そして国連軍(実質的にはアメリカ)、そして署名していないものの韓国という複雑さもある。

端的にいうなら四半世紀前に終わったはずの冷戦の構造が朝鮮半島には残されているということだ。しかも、パワーバランスの変化は間違いなく様々な新たな歪みを生み出していくだろう。

同じ朝鮮人同士が殺し合い、そこに外国の軍隊が介入し、国民の5人に1人が犠牲になるような悲劇が繰り返されていいはずがない。朝鮮戦争は過去の戦争ではなく、現在も続いているということ、そして単に「お隣の出来事」なのではなく、この戦争とその結果が日本の現在にも大きな影響を及ぼしていること、さらに将来的に、この地域の緊張を高めないように努めることが、日本にとって極めて重要なのは間違いない。

有事に備え邦人救出のための法整備を進めようとしている日本の現政権だが、実は水面下で「有事にいたらないための多国間協調」の努力を行っていることを信じたい。

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