一面の銀世界に乱立する雪の柱。山形県・蔵王の「樹氷」は、別名アイスモンスターとも言われています。
今年、樹氷が発見されてからちょうど100年を迎えます。樹氷は、1914年2月15日に山形師範学校(現、山形大学)の神山峯吉教授らが、熊野岳で見つけたといわれています。発見当初は「雪の坊」と名付けられており、その後、1929年に山形高校(現、山形大学)の安斉徹教授が「樹氷」と命名して現在にいたっています。蔵王の樹氷は、見るものを魅了する冬の東北を代表する名所です。
希少な蔵王の樹氷
一般的に樹氷は「およそ氷点下5度以下に冷却した水蒸気や過冷却の水滴が、樹木などに吹きつけられ凍結してできた氷」と定義されています。
しかし、蔵王でいう樹氷とは「アオモリトドマツが着氷と雪片に覆われて巨大な塊となったもの」です。蔵王の樹氷は、他の地域の樹氷よりもスケールが大きく、まるで巨大な雪の柱のようです。いくつかの条件が重なることによって作られ、自然の芸術品と言われています。
その生成条件ですが、次のような蔵王特有の気象条件があるとのことです。
シベリアからの北西の季節風は、日本海の対馬暖流から多くの水蒸気をもらって雪雲をつくります。雪雲は朝日連峰で上昇して多量の雪を降らせます。雪雲は山形盆地を通って、再び蔵王連峰で上昇して雪を降らせます。
そのときの雲のなかは、多くの雲粒が0℃以下でも凍らない過冷却水滴(かれいきゃくすいてき)になって、雪とまじりあった状態になっています。蔵王の1~2月頃は快晴の日が少なく、風向きは北西から西を示し、平均風速10~15m/s、平均気温―10~―15℃の吹雪の世界です。樹氷はこうした気象条件のなかで成長します。
※過冷却水滴:通常、水は0℃で氷になるが、雪粒(直径0.01~0.03mm)のような小さな水滴では、最低―30℃でも水滴の状態でいる。これを過冷却水滴と呼ぶ。過冷却水滴は、非常に不安定な状態なので、低温の物体にぶつかるととたんに凍りつく。
上記の他、以下の自然・気象条件も加わり、樹氷ができるといいます。
■樹氷ができる条件(蔵王温泉観光協会WEBサイトより)
・アオモリトドマツなどの着氷と着雪の起こりやすい常緑針葉樹が自生していること。
・積雪が適量であること。(雪が多すぎると、「アオモリトドマツ」は埋没します。また少なければ、当然樹氷はできません)
・多量の過冷却水滴と雪が、常に一定方向の強風で運ばれてくること。
(風向が一定しないと、樹氷は成長しません。気温が高いと雪が解け、また低すぎても雪がつきにくい)
これらの気象・自然条件が重なって、初めて蔵王の樹氷ができます。このような特殊な条件を満たして、巨大な樹氷ができるのは、世界でも稀であり、日本では蔵王の他は八甲田山などの限られた地域だけとのことです。
しかし、希少な蔵王の樹氷が、気温上昇などの理由により、40年後には見られらなくなるかもしれないという、山形大学理学部の柳沢文孝教授(地球化学)の研究報告もあります。
様々な樹氷の楽しみ方
蔵王と一部の地域でしか見ることができないという巨大な樹氷。自然が作り出すその芸術品の鑑賞方法をいくつかご紹介します。
■ロープウェイで樹氷原へ
最も簡単に樹氷を楽しむことができる方法です。蔵王ロープウェイを利用して地蔵山頂駅まで行けば、手軽に樹氷を見ることができます。レストランで食事をとりながら樹氷鑑賞も可能です。
【期間】12月下旬から3月上旬(樹氷形成時期)
【時間】8:30から17:00(ロープウェイ運行時間)
【場所】蔵王ロープウェイ地蔵山頂駅付近
【料金】お1人様 おとな 2,500円/こども 1,250円(ロープウェイ往復運)
■樹氷のライトアップ
アイスモンスター『樹氷』をライトアップ。静寂な、そして漆黒の闇の中に色彩豊かな照明で浮き上がる樹氷の姿は、日中の白銀に輝くそれとは趣がまったく異なり、まるで幻想的な世界に迷い込んだ雰囲気です。
【期間】例年12月下旬~3月上旬期間の50日間程度
【時間】17:00~21:00(上り最終/~19:50まで)
【場所】山形市蔵王温泉・蔵王ロープウェイ山頂線沿線および地蔵山頂駅周辺
【料金】お1人様 おとな 2,500円/こども 1,250円(ロープウェイ往復運)
■雪上車で
日本で唯一の雪上車「ワイドルモンスター号」に乗って、蔵王の大自然が織りなす雪と氷の造形「樹氷」を鑑賞するツアーです。
【期間】平成25年12月14日(土)~平成26年3月16日(日)
【時間】平日 11:00~13:00
土日祝 11:00~13:00、13:00~15:00
※混み具合やツアー利用などにより、上記時間以外に臨時便が出る場合があります。
【場所】みやぎ蔵王スキー場すみかわスノーパーク 発着
【料金】おとな4,700円、子ども(小学生以下)3,800円
(座席を必要としない2歳以下の幼児は無料)
■スキー・スノーボードで
山形蔵王温泉スキー場では、ゲレンデから樹氷を見ることが可能です。
スキー、スノーボードを楽しみながら樹氷鑑賞というのも、一度はやってみたいものです。
【期間】平成25年12月7日~平成26年5月6日
【時間】08:30~17:00(ナイター17:00~21:00)
【場所】山形蔵王温泉スキー場
■スノーシューで雪上を歩きながら
西洋のかんじき、スノーシューを履いて雪の上を歩きながら、樹氷を鑑賞することができます。スノーシューのレンタルや案内ガイドをつけてのトレッキングも可能です。観光協会、スキー場、ペンションなどでレンタル、申込みができます。
イベント(蔵王樹氷まつり)
■雪と炎の饗宴
スキー・スノーボードの華麗でダイナミックなデモンストレーションや、ゆるキャラパフォーマンス、 クライマックスを華やかに彩る雪上花火など雪と炎の祭典。
【期日】2014年2月1日(土)
【時間】19:30から20:30
【会場】蔵王温泉スキー場・上の台ゲレンデ
■じゃんけん大会
【期日】2014年1月12日(日)・18日(土)・19日(日)
24日(金)~26日(日)
【時間】詳細は下記リンク参照
【会場】蔵王温泉スキー場
これからの季節が一番の見ごろです
蔵王の樹氷は、例年1月から2月にかけて大きくなり、2月が最も見ごろになります。世界的にも希少だとも言われている、蔵王の樹氷。自然が作り出す幻想的な風景を一度は見てみたいものですね!
2月1日には、「蔵王樹氷まつり」のクライマックスとして、雪上花火も打ち上げられるそうです。
蔵王・樹氷
Text :sKenji
最終更新:
sKenji
2014年2月19日付河北新報では、「樹氷」という呼び方は、大正11(1922)~12年に、東北帝大や旧制第二高(仙台市)の学生らが使い始めたということが、山形大理学部の柳沢文孝教授(地球化学)の研究でわかったと報じています。