行政機関が指定した特定秘密を洩らした人、知ろうとした人(公務員、業務上秘密を知った人やその家族・友人、マスコミなど、一般人かどうかを問わず)を厳しく処罰する特定秘密保護法案が11月26日午前、衆院国家安全保障特別委員会を通過した。委員会での採決に掛けられたのは、自民、公明の両与党とみんな、維新による4党修正案で、自民、公明、みんなの賛成多数で可決した。維新は強行採決に反対し採決を退席した。修正案は午後の衆院本会議に緊急上程され衆院通過する見通しだという。各紙は下記のように報道した。
(文末に「あわせて読みたい、よくわかる解説リンク」も)
新聞などメディアの一報は
前日の福島での公聴会はどう反映されたのか?
強行採決の前日、福島市で特定秘密保護法案の地方公聴会が開かれた。公聴会で発言した公述人7人のうち、与党側が推薦した2人を含む全員が、法案の慎重審議や廃案を主張したという。公述人の発言には、原発事故直後に正確な情報が伝えられなかったことが被害拡大につながったという思いがにじんだ。
地方公聴会は法的に位置づけられたものではないというが、いまも原発事故の被害を受け続けている福島で聞かれた意見内容が、翌日の強行採決にどのように生かされているのか知りたいところだ。
あわせて読みたい、よくわかる解説リンク
特定秘密保護法案の国会審議の本格化とともに、多くの意見がアップされてきたが、その中から論旨明快なものをいくつかを紹介する。
法案を考える上でのひとつのキーワードとなるのが、ニューヨークタイムスが法案に宛がった「Illiberal」という形容詞。英和辞典には、リベラルでないという意味のほか、狭量、偏狭、卑劣、下劣、教養のないといった訳語が並ぶ。一国の国会が審議している法案に対する表現としてはかなり不名誉なものだといえる。
特定秘密保護法案に関しては、海外からも懸念の声が上がっている模様だ。
国連、秘密保護法案に「重大な懸念」 人権高等弁務官事務所
2013/11/23 0:56
【ジュネーブ=原克彦】国連人権高等弁務官事務所は22日、言論の自由と健康の権利を担当する2人の特別報告者が日本の特定秘密保護法案に「重大な懸念」を表明したと発表した。特別報告者は日本政府に法案についての詳しい情報を提供するよう求めたという。
言論の自由を担当するラルー特別報告者は「法案は秘密の対象をとても幅広くて曖昧なものにするだけでなく、告発者や秘密について報道するジャーナリストへの脅威も含んでいる」と指摘。特に情報漏洩への罰則に関しては、政府など公的機関の不正や不法行為の告発は法的措置の対象外にすべきだと主張している。
軍事に関するものまで含めて、秘密がダダ漏れの状態では敵対的な勢力を利するだけ。国際的な協調のためにスパイ行為や機密情報の漏えいを防止する法律は当然必要だ。しかし、秘密の範囲が不明確でとめどなく拡大解釈していくことで、憲法を変えることなく戦争を起こすことすら不可能ではない法律など望む人はまずいない。何が秘密かも明かされないまま拘束され、裁判でも秘密の内容について開示されることなく審理されるような不道徳なことが許されるべきではない。
それでも、Illiberalな法案は成立に向けて進んでいく。どうする?
●TEXT:井上良太
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