県大会優勝したのに、「全国」に行けない?!
福島県の県民紙「福島民友新聞」ウェブ版に驚きのニュース。第92回全国高校サッカー選手権大会の県大会決勝で強豪尚志を2-1で下し、5年ぶり2回目の全国切符を手にした富岡高校の「全国」が危うくなっているという。理由は出場するための資金集め。
協賛金集め、めど立たず 全国切符の富岡高サッカー部
全国高校サッカー選手権大会出場を決めた富岡高サッカー部に全国大会への新たな壁が立ちはだかっている。ユニホーム購入費や事前合宿費用などの大会活動費に12日現在、めどが立っていない。協賛を求める卒業生や双葉郡の企業が、東京電力福島第1原発事故に伴う避難で全国各地に散り散りになっていることが要因だ。協賛金集めに奔走する大和田修校長らは「協力を求めようにも現在の所在地が分からず、お願いできない」と頭を抱えている。
スポーツで未来をリードする人材を育てる高校
富岡高校は県立高校だが、ふつうの公立高校とは一味もふた味も異なる高校だ。
日本サッカー協会(JFA)から福島県に対して、人材育成プログラムの提案が行われたのは2004年のこと。その内容は「公立学校と連携して、Jヴィレッジ を拠点に、サッカーのみならず、人間的な教育、論理的思考、コミュニケーションスキル、IT、外国語等総合的な教育を行い、日本サッカーのレベルアップと社会をリードしていく人材の育成を図る」ことを目的とするというものだった。
この提案を「双葉地区教育構想検討協議会」で検討した結果、2006年に新たに生まれ変わったのが富岡高校。それまでの普通科2クラス編成を改組し、1学年3クラスの「国際・スポーツ科」として再スタートを切った。のみならず、地元の公立中学と連携した中高一貫教育も同時に始まる。JFAアカデミーの生徒受け入れも始まった。
新生・富岡高校サッカー部は、創部3年目にして第87回全国高校サッカー選手権大会出場を果たす。福島のサッカーを全国レベルへ。日本のスポーツをリードする人材を育成する――。そんな目指す未来へ着実に歩みを進めているかに見えた。
ばらばらになった高校生活の中で勝ち取った「全国」
しかしいま、生徒たちが置かれた状況は苦しい。理由は言うまでもなく2011年に発生した東日本大震災と原発事故だ。生徒たちは県内3カ所(福島北高等学校、猪苗代高等学校、いわき明星大学)、県外1カ所(静岡県立三島長陵高等学校)の4つのサテライト校舎に分かれての高校生活を余儀なくされている。
富岡高校サッカー部員たちは、福島北高校の仮設校舎で学び、練習は十六沼公園の人工芝グラウンドで、そして宿舎は近くの飯坂温泉の旅館を借りて、という毎日を送っている。現在の3年生たちは、震災当時、富岡高校への入学を目の前に控えた中学3年生だった。とはいえ実質的な中高一貫校だから高校のグラウンドでも練習してきた。残念なことに、当時の中3サッカー部員の中には、津波で行方不明になった同級生もいる。
そして、富岡高校は悲願の全国切符を勝ち取った。
そんな全国。
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少しでも力になりたい。
福島民友新聞によると、前回の出場時には協賛金など1100万円が集まったところ、現在はまだ200万円ほどしか目途が立っていないという。
富岡高校では、協賛金などの支援をお願いするページを、高校ホームページ上に準備中だという。来週月曜日(11月18日)までにはアップしたいとのことだ。
出場協賛金募集ページ、オープン!
11月14日、富岡高校ホームページに「サッカー部全国大会出場への支援について」がアップされました。
サッカー部全国大会出場への支援について
11 月 13 日付け福島民友新聞あるいはラジオの報道により、男子サッカー部の全国大会出場に関する困難な状況をお知りになった皆様から、たくさんのご支援のお申し出をいただいております。皆様のお気持ちは本当にありがたく、生徒、教職員をはじめ関係者一同心から感謝申し上げます。
富岡高校のホームページはこちら
ご協力のおかげで応援バスも出ることになりました
皆様のご協力のおかげで、目標額を達成することができたとのことです。全国から、そして海外からも多くの支援が寄せられたそうです。
いよいよ全国!
初戦は12月31日、愛媛の松山商業との対戦(ゼットエーオリプリスタジアム・千葉県市原市)です。
応援バスも福島から出ることになりました。がんばれ富岡高校!
「国立」を、そして頂点を目指せ!!
●TEXT:井上良太
最終更新: