静岡で初開催、12球団合同トライアウトを観に行く

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ところ変わって室内練習場。室内練習場へは、「静岡市」と書かれた公用車が、選手たちをピストン輸送していた。室内練習場は関係者以外立ち入り禁止だったが、入り口付近では多くのファンが、選手たちに声をかけている。プロ野球ファンにはおなじみのユニフォームを着た選手たちが、一般車に相乗りして運ばれている姿には、なんだか不思議な気持ちにさせられた。

時々、見慣れない派手目なユニフォームを着ているのは、元NPBであり、現在は独立リーグ所属の選手たち。

オレンジ色のユニフォームを着ていた西川雅人(元オリックス)は、現在愛媛マンダリンパイレーツ所属だ。2008年、愛媛マンダリンパイレーツからオリックスへ入団し、4年間プレーしたものの、昨年2012年にオリックスを戦力外。今年はふたたび愛媛に“復帰”してしまった。しかし今シーズン、その愛媛では中継ぎとして39試合に登板し、防御率は0.64と結果を残している。今度はNPBに復帰できるのだろうか。気になる室内練習場の様子だが、外からはわからない。

同じく、見慣れないユニフォームに身を包んでいた“見慣れた顔”木田優夫も、静岡市の公用車に乗ってやってきた。今年で45歳。普通のプロ野球選手ならとっくに引退している年齢だが、今年は独立・BCリーグの石川ミリオンスターズに所属し、リーグ最多の52試合に登板。独立リーグ日本一に貢献している。

衰え知らずの48歳・山本昌(中日)の陰に隠れがちだが、木田もまた高卒からプロ入りし、今年でプロ27年目。マスコミとファンに囲まれた右腕は、しばらくその場から動けない様子だった。

一時代を築いた男、人気球団の若手、渡り歩く苦労人

かたまりになっていたマスコミとファンは、そのまま木田と入れ違いで室内練習場から出てきた小林宏之(元阪神)に群がった。

小林宏之と言えば、ロッテ時代は日本一も経験し、2006年には第1回WBCの日本代表にも選ばれていたことを思い出す。2008年には開幕投手を務めるなど、華々しい球歴を歩んでいた。しかし、成績はその2008年頃から下降線をたどり始め、防御率は目に見えて悪化。2011年のFA宣言では、なぜか阪神が2年5億という破格の待遇で契約を結んだが、やはりその期待に見合った結果を残すことができず、わずか2年で阪神を去っている。

2013年は渡米してマイナー契約を結んだかと思えば、結局解雇されてBCリーグ群馬ダイヤモンドペガサスへ入団。その群馬でも自由契約となってしまい、慌ただしい一年を送っていたようだ。

この日は、あまり良いイメージの無い阪神時代のユニフォームを着ていたが、それでも人前に立てば、約183cmの体格は非常に大きく見えた。来年は、一年落ち着いて野球ができるようになるのだろうか。

この小林しかり、人気球団の阪神勢、巨人勢には、たとえ戦力外であっても多くのマスコミ、ファンが集まった。小林のあとに出てきた黒田祐輔、清原大貴(阪神)にコメントを取りに行った記者の首にかかっていたのは、阪神の機関紙である「デイリースポーツ」の文字。その後、静岡市の公用車に乗りやってきた岸敬祐とリン・イーハウ(巨人)には、巨人の機関紙である「スポーツ報知」の記者が真っ先にと声をかけていた。

その後も選手の出入りにこそ注目は集まるものの、中の様子は一切わからない。遠目にぼんやりと見える、ピッチャーが投げている様子と、Yahoo!に掲載される速報だけが頼りだ。

報道陣がざっと動き始めると、野次馬もそれに合わせて動く。そんな時間が続いていた。

コアなプロ野球ファンにとっては印象深い選手の様子にも注目が集まった。

主に中継ぎ投手としてヤクルト、日本ハム、横浜、西武と、全てトレードで4球団を渡り歩いた・坂元弥太郎(西武)は、落ち着いた表情が印象的だった。便利屋のような選手だが、だからこそ、まだやれる気がしなくもない。

桐生第一高校時代には夏の甲子園を制覇した経験を持つ正田樹(ヤクルト)は、2008年にも戦力外通告を受けてトライアウトを経験。その後は、台湾や独立リーグを経てヤクルトに拾われた苦労人だ。

球団を転々としているものの、坂元も正田もまだ31歳。復活に期待したい。

トライアウトを終えて

正式にどのタイミングで終了したのかはわからないが、いつの間にかトライアウトは終了。最後は横浜を戦力外になった安斉が4者連続三振に仕留めたらしい。あれほど降っていた雨はいつの間にか止み、室内練習場の入り口に集っていたマスコミ、ファンもまばらになっていた。

室内練習場から出てくる選手たちの中には、スタッフや別の選手と談笑している選手もいた。これは予想外だったのだが、全体的に悲壮感を感じさせる選手は少なく、むしろ全体的に清々しさ感じずにはいられなかった。その胸中は本人にしかわからないものの、結果はともかくとして、「やりきった」という気持ちの表れなのだろうか。

今回のトライアウトの結果、おそらく半分以上の選手たちは野球を辞め、一般人として第二の人生を歩むことになるだろう。例外なく、子供のころから野球漬けの毎日だったはずだ。新たな目標を見つけ、食っていくのは容易ではないだろうと思う。

華々しいプロ野球の世界も、クビになってしまえば、その後は就職先を見つけるのも大変だと聞く。2日目のトライアウトは22日、ナゴヤ球場で行われる。その日が最後の舞台となる選手も多いはずだ。

ふと空を見ると、あまりに都合よく薄い虹を見つけた。この虹が選手たちの未来を暗示していると良いな……なんて思うのはベタだろうか。

 65人参加 12球団合同トライアウト/詳細 - プロ野球ニュース : nikkansports.com
www.nikkansports.com  

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