島が有人島として存続することの意義(2)

tanoshimasan

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もしも、過疎化・無人島化が進むと

 島が有人島として存続することの意義(1)では、離島が有人島として果たしうる役割について述べた。今度は先ほどの逆、有人離島が過疎化・無人島化していくとどうなるかについて考えたいと思う。 おさらいになるが、「離島の役割」とは

国家的役割・・・日本の排他的経済水域や領域の保全。

国民的役割・・・食料の確保、癒しの空間、伝統的な祭り、独特の景観を守る。

である。そしてこれらの役割は、「離島に人が住んでいる状態=有人島」となって、はじめて機能するのだ。

 では、逆に考えてみてほしい。もしも島の過疎化・無人島化が進むとどうなるか。

防衛力の低下

  まず、国家的役割について。日本の排他的経済水域や領域を考えたとき、特に日本の端を担う島(利尻・礼文、南鳥島、沖ノ鳥島、与那国島)に人が存在する意味は計り知れない。何故なら、昨今取り沙汰される領土問題に代表されるように、海外諸国と接触しうる存在だからだ。現に、領有権問題に揺れる竹島や尖閣諸島などの島々。これらは 「日本の領土」としているも実質は無人島である。しかし、領有権を主張する中・韓に押され、特に竹島では韓国の侵入を許してしまっているのが実情だ。こう いった島々がもし、古くより日本人が住む有人島であれば、現在の領土問題もまた違った様相を示していたかもしれない。

 ところが、国土交通省が発表した『国土の長期展望~中間とりまとめ』において、以下のような展望が記されている。

(2050年までに居住地域の2割が無居住化)
居住・無居住の別でみると、2050年までに、現在、人が居住している地域のうち約2割の地域が無居住化する。無居住地域も含めた国土全体でみると、現在国土の約5割に人が居住しているが、それが4割にまで減少する。また、離島においては、離島振興法上の有人離島258島(現在)のうち約1割の離島で無人になる可能性がある。
(引用:『国土の長期展望~中間とりまとめ』 国土審議会政策部会長期展望委員会)

とある。つまり、過疎の進む有人島から人口が減り続け、2050年には無人島になってしまうと見込まれる島、そんな島が、約26島もあると推測されているのだ。 産経新聞『一筆多論』においては以下のような指摘もある。

(離島には)多くの人が住んで、日本の主権が及んでいることが明確になっていたほうがよい。領土的野心を持つ国が押し寄せても簡単には手が出せない。離島の人口が減ることは、防衛力が弱まることにつながる。
(中略)
日本人の目の届きにくい土地が広がることになれば、合法的に日本国内に「外国の領土」を許すようなものだ。
(引用:『[一筆多論] 河合雅司 人口激減で弱まる防衛力』 2012年9月3日付 産経新聞)

 ちょっと極端な意見だが、「うかうかしていると日本の島が海外諸国に乗っ取られますよ」ということだ。有事の場合、離島が戦線を分けるのは歴史的にも明らかである。無人島を含めると、日本には6,852の島があるだけに、デリケートな問題かもしれない。

ふるさとの喪失

 島が無人島化することは、ふるさとの喪失にもつながる。特に「かつて有人島だったが無人島化してしまった島」は多く、昭和以降だけで数えても70近くの島が無人島化した。生活の不便さなど事情は様々だが、一度人が離れた島はなかなかもとの姿には戻らない。

 こうした中で起こるのが、“ふるさとの喪失”だ。島が有人島として存続することの意義(1)でも述べたが、島は「食料の確保、癒しの空間、伝統的な祭り、独特の景観を守る役割」も担っている。島には独自に形成された文化が多数あり、島から人が離れていくことで、これらが損なわれる懸念もあるのだ。 たとえば、舳倉島(石川県)では伝統的に海女漁がさかんである。しかし、住むには不便な小島では過疎化が進み、定住者はほとんどいなくなってしまった。海女漁は季節漁のため、夏場のさかんな時期こそ島も活気づくが、冬場の人が少ない時期は10人程度まで島民が減ると新聞も報じている(2012年8月16日付  読売新聞)。海女の高齢化も進み、技術の伝承もままならない。このままではどうなるか、察することができるだろう。

 また、こんな例もある。例えば、硫黄島(東京都)などは、戦時下において強制疎開となり、一時は250人近くに上った住民はみな島を離れた。激戦区となった硫黄島、終戦後は一般人の立ち入り禁止措置が取られ、現在は実質無人島である(自衛隊員らが常駐)。かつての島民やその子孫らの帰島は未だかなう気配もない。 自衛隊員らが常駐するおかげで、「防衛力」と言う点では特に問題無いのかも知れないが、島民らはふるさとを喪失することになる。それはかつて栄えていた文化や産業も喪失することに繋がると言っても良いだろう。 多くの島々で人口の減少は顕著である。2050年には増えていると見込まれる無人島。過疎化が進行する島々は、今まさに正念場と言っても良いだろう。

◆◆◆ 島が有人島として存続すること、その意味は恐らく大きい。

 日刊楽島コラム
potaru.com

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