東京都青ヶ島村「無番地」
こう書かれたポスターが印象的だった。それもそのはず、2012年5月現在人口は175人。日本で最も人口の少ない自治体が、青ヶ島の属する東京都青ヶ島村だ。住所は全員同じ、あとは名前で届いてしまう。青ヶ島よりさらに南、最果ての小笠原諸島(父島、母島)も名前で届くそうだが、両島合わせて人口は2000人近く、さすがに無番地ではない。
島を空から見下ろすと、丸々した火山島からドーナツがごっそり抜き取られたような、円形のくぼみを帯びた形となっている。なんとも、その姿だけでも秘境感を感じることが出来る。青ヶ島へは、隣に浮かぶ八丈島から、船またはヘリコプターでしか行くことが出来ない。さらに、その八丈島へは都内(羽田空港、竹芝桟橋)からしか行くことが出来ない。つまり内地からであれば、東京、八丈島を経由しなくてはならないのである。島民も少なく、アクセスも決して便利とは言えない。島には民宿が5軒とキャンプ場しかない(2012年4月時点)ことを思えば、大多数の観光客で賑わうこともないと想像出来る。※さらに定期船「還住丸」の就航率はおよそ50%、ヘリコプター「東京愛らんどシャトル」は定員9名要予約である。
早急に予定を組まなければ青ヶ島を訪れることは叶わない。
あれも・・・、これも・・・青ヶ島!?
そんな事情があるからこそ、だろうか。「島じまん2012」では、青ヶ島村民175人が秘境島を支えているその力強さを随所で感じた。まず特筆すべきは、お土産の多さである。ラスクに、クッキーに、ドロップ、唐辛子調味料に、たれ、塩に焼酎、石鹸にシャツ・・・。実に青ヶ島のブースだけで20種以上ものお土産を確認した。175人の島民のうち、誰がどういう仕事をして・・・若い世代がお年寄りが・・・と考えていると、これだけのお土産品を揃えられただけでも驚いた。 お伺いしたところ子供(小中学校の生徒)の数はそこそこの20人。離島においては生徒数が10人を切るような島も珍しくないので、にぎやかな類だろう。「ある意味当然なんだけど、小中学校は自校給食なんですよ。」そう語ったのは島のお兄さん。時にマグロ、大根、カブ、ほうれん草など、青ヶ島で獲れたばかりの魚や野菜がそのまま給食になることもあるという。これぞ、日本一小規模な自治体で脈々と巡る地産地消システム!・・・う~ん、なんという贅沢・・・。説明して下さったお兄さん自らも青ヶ島メニューのボードを掲げ、呼び込みをしていた。
(左・青ヶ島レイ作り体験コーナーを案内)
(右・青ヶ島名産「ひんぎゃの塩」せっけん、ドロップ、ラスクなどなど・・・。)
※クジラヨ・・・テンジクイサキというスズキ目の魚のこと。クジラヨは青ヶ島の地方名。
力いっぱい、手づくり
「なんでも自分たちで作らないと。昔はそうしなきゃ何もなかったのよ。」なんて島の奥さんも胸を張る。先に紹介した「たれ」は各家庭でお刺身を食べる際に使用するものだそうだ。「島だれ おふみさん風味」「島だれ おソメさん風味」など、各家庭の味がそのままブランドになっているからウケてしまう(笑)。同じようなベースの味だが、確かに違った。どうも、醤油やみその配合の割合やにんにくの有無など微妙に違うらしい。家庭で細々しがちな手づくり調味料まで、島の名産に変えてしまうのが青ヶ島イズムだ。
(各家庭の味「島だれ」。刺身や肉のつけだれに・・・。左には「鬼辛」2種類)
「この島だれに横の調味料を足してごらん」 そう言って提案されたのが、島だれに「鬼辛」という名の唐辛子ペースト調味料。
「・・・・・・・・・・・・!!!」なるほど「鬼辛」・・・ひぁ~~~~~~~~~。
感覚を失っていく舌に青ヶ島の力強さを感じつつ、隣の御蔵島ブースで売っている湧き水を買いに走った。
※随時、各島を話題に記事を更新していきます。
◇参考ページ◇「東京愛らんど応援隊」(公式HP)
「青ヶ島村役場」(公式HP)「青ヶ島小中学校 今日の給食」(青ヶ島小中学校内)
※毎日の給食を見ることが出来ます。
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