那覇空港から車で20分弱の高台にある海軍壕公園。公園の頂上にあるビジターセンター内の資料館、そして当時から残る旧海軍司令部壕を見学してきました。
壕内に入ってすぐの通路、作戦室、幕僚室に残る事実を目の当たりにして、何とも言い表せない気持ちが続いていました。
幕僚室から先の部屋へ進む
こちらは幕僚室の先にある暗号室。壕内で見学できる内の最も広い部屋にあたります。暗号機を用いて、文章を暗号化して無線送信するという方法。送受信によって各部隊と連携をとっていました。壁は他の重要な部屋と比較して、コンクリートや漆喰の加工はされていません。
海軍暗号書D(かいぐんあんごうしょでい)は、日本海軍が用いた暗号書の一つ。
日本海軍が1939(昭和14)年6月以降使用を開始した5桁乱数字暗号。発信用(組立)と受信用(翻訳)の二冊で構成され、収録言語2万5000語に、それぞれ異なる5桁の数字が割り振られている。この「暗号書」に「乱数表」が付随していて、「暗号書」で得た5桁数字に「乱数表」の5桁数字を非算術的加算(桁を繰り上げない足し算)し、その数字をモールス符号で無線送信する。
ここが医療の目的で作られたかどうかは定かでないものの、生存者の証言によれば、絵で表現されているように、この部屋では多くの負傷者の治療が行われていたようです。
ただ、部屋の広さから想像して、横になれるのはせいぜい大人3人ほどではないかという印象。衛生的に良い環境とは言えない状況かつ、医療用の薬品も十分に確保されていませんでした。(ビジターセンターに展示されている資料に説明があったように、途中からは本土からの供給が途絶えました)
通路を進むと外につながる道と分岐するのですが、こちらは兵士の出撃口。絵のように手製の槍を手にして出撃していきましたが、大半はここには戻ってこなかったのだそうです。
さらに奥に進んでいくと、通路沿いに2つの部屋が設けられているのですが、ここは当時収容していた兵士が休息場として使用していた下士官室。絵で描かれているように多くの兵士は立ったままの状態で眠るという過酷な状況でした。
順路としては最後の部屋にあたるのが司令官室。この部屋に入ることはできませんが、外から見学することができます。アメリカ軍の侵攻に耐えることは困難となり、昭和20年6月13日の未明、大田實司令官はこの部屋で最期を遂げました。
大君の御はたのもとに死してこそ 人と生まれし甲斐ぞありけり
旧海軍司令部壕 司令官室
現在の言葉に訳すと、「天皇陛下のために戦い死ぬことこそ、人として生まれてきた甲斐がある(表現は複数あり、それぞれ少しずつ異なります)」とする、辞世の句が奥の壁面に残されています。
出口へと続く通路。
「ありがとうございました」
これまで体感したことのないような感覚のままでしたが、出口にて心の中で自然と出てきたのがこの言葉でした。
地下壕から外に出ると、戦争の事実からいつもの日常にぐっと引き戻されたような感覚。
大きな遊具があった公園に戻ります。
戦時中、家族など大切な人たちと離れ、連絡も取ることも出来ず、様々なものを犠牲にしながら厳しい生活を送り、戦っていた同じ場所で、今の自分は家族と公園で遊ぶことができます。公園で遊ぶなんて当たり前のことなのですが、当たり前と思うこと自体ありがたいことなのだなと感じます。
見学を終えて
本当の多くの方々が犠牲になった沖縄戦。いくつもの事実が歴史の中に埋め込まれていきますが、自分は「一人一人の命」を遠ざけて、戦争をこれまで捉えてきていたのかもしれません。
ここはたくさんの命が絶たれた場所。戦争を学ぶ場でありながら、歴史の中にある一人一人の命に向き合う場でもあると思います。
戦争を起こしてはいけない。
これからも伝え続けていく必要がありますし、絶対的に正しいものでなければならないと思います。
ただ、戦争に関わった人たちを否定することはできません。兵士として戦っていた人たちは、当時どのようなことを感じたり、考えたりしながら、ここにいたのだろうか…。
死と常に隣り合わせの戦地へ行くこと。自らの死を覚悟して行動すること。
この選択をとることは今の生活からはなかなか想像しづらいですが、本当に大きな覚悟があってこそなのだろうと思います。一方で命を大事に思うこと、家族など大切な人を思うことは当時も今も共通した考えなんじゃないかというのは、今回の見学を通じて感じたことです。
戦争は人が人ではなくなってしまう。でも、それを起こすのは人自身なんだと思うと、戦争の恐ろしさがこみ上げてきます。
これでも自分が見えているのはほんの一部なのかもしれませんが、今回見たこと、触れたこと、感じたことは貴重なものとなりました。子どもが大きくなった際にまた訪れたいと思います。
この場所をどう捉えるか、何を感じるかは様々だと思いますが、これからも多くの人が訪れられる場所であり続けていくことを願います。
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