慰霊碑の裏からは、自費でビルを維持管理されている震災遺構「米沢商会」さんの建物が見えます。ビル所有者の米沢祐一さんは、ビルの屋上へ避難し難を逃れました。津波は14mに達し、米沢さんの足元わずか10cm下まで迫ったそうです。
米沢商会の少し西側には、今年ロッテにドラフト1位で入団が決まった岩手県立大船渡高のエース、佐々木朗希(ろうき)投手の自宅がありました。佐々木投手は震災で父親、祖父母を亡くしています。
津波で自宅を失った佐々木投手一家は大船渡市に移り住み、野球を続け、高校は他県の強豪校からもスカウトされましたがこれを断り、被災した仲間たちのいる大船渡高へ進学しました。
語り部さんが地元出身の佐々木投手を、「朗希くんが」とまるで自分の子供のように語っていたのが印象的です。佐々木投手の今後の活躍に期待したいです。
災害公営住宅
陸前高田市には、大規模な災害公営住宅がいくつかあります。これら災害公営住宅は建設当時の入居見込みを大幅に下回り、どこも空室が目立っているのが現状だそうです。
さらに、これまで被災者としての家賃で住むことができたのが、これから通常の公営住宅の家賃になるようです。すでに沿岸部の方では住み続けられず出て行く人も出てきているのに、被災者の生活を支えるべき市が何の回答もしていないのが実情のようです。
この場所は沿岸部からは相当な距離がありますが、震災時に防潮堤到達地点で14.5mだった津波が、山側にある奥地に到達する頃には17m以上にもなりました。
災害公営住宅のすぐ裏には高田小学校がありますが、校舎1階まで津波が浸水しました。今年まで使用されていたこの学校も、新校舎が安全な高台に移転されたため、旧校舎は取り壊され、跡地はかさ上げされ市役所が建設されることが決まっているそうです。
高台には小学校、幼稚園、病院や住宅の整備が進められていますが、お年寄りなどそれまで平坦なところで生活していた人たちにとっては、坂道が多く、買い物も高台から下りて行かなければならず、不便そうに感じました。
JR大船渡線
ここはもともとJR大船渡線の無人駅があった場所です。津波により跡形もなく流失してしまい、廃線となってしまいました。その後、BRT(バス高速輸送システム)が代わりに運行されています。
語り部さんに案内され、ここが駅舎があった場所、ここがホームがあった場所、ここが線路・・・と教えてもらわないと、何がもともとあったか分からないくらい何も残っていません。
ホームのあった場所に立って、あらためて津波の威力を思い知らされました。
防潮堤
陸前高田市にはもともと、5.5メートルの防潮堤ががありましたが、震災で14.5mの大津波が押し寄せ全壊しました。現在再建が続いている防潮堤は、高さ12.5m、幅が約2kmの巨大な建造物です。
しかし東日本大震災クラスの津波が押し寄せた場合、この防潮堤の高さでは完全に津波を防ぐことはできません。語り部さんによると、防潮堤はあくまで防災ではなく減災のためのものである、とのこと。津波の勢いをできるだけ弱めて、かさ上げした高台の手前で食い止めるのが目的なんだそうです。
防潮堤があるから安心ということはなく、地震が来たらとにかく高台に逃げるというのを忘れてはいけません。
東日本大震災津波伝承館
語り部さんと最後に訪れたのは、今秋オープンしたばかりの、岩手沿岸部の津波被害の7~8割の情報を展示しているという東日本大震災津波伝承館です。
時間の都合上、残念ながら駆け足になってしまい、内容をほとんど見ることができませんでした。ただ、その中で自分が一番印象に残っているのは、「生きるための避難」というコーナーでした。
・津波は第2波以降が高くなる
・第1波が3メートルと低かったため、貴重品を取りに戻って津波に流された
・津波に飲まれた理由に多いのが、「ここまでは来ないと思った」という思い込み
地震だけでなく、災害などの緊急時には常識に捉われないということが、とても大切であると感じました。
次に訪れる際には、ゆっくり時間をかけて館内を回りたいと思います。
道の駅 高田松原
半日かけて陸前高田を回り、最後にオープンしたての「道の駅 高田松原」にて昼食。お昼の時間帯という事もあり、多くの観光客で賑わっていました。たった8年前に悲惨な出来事があったとは思えない賑わいに、陸前高田の復興の勢いをあらためて感じました。
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